第93話

「あんたを本気で好きになるから」



本気になれと言ったのは私。

矢島君の綺麗な瞳にみつめられ、私は目が離なかった。



「さっきまで名前も知らなかったのに?」



私は呆れたように笑った。



「神奈だろ、もう知ってる」


「呼び捨てって⋯」


「あんたならいい、24時間、いつでも、守ってやる」



年下の男に、生徒に、守ってやるって言われる私って⋯、どうなの。



「大事な生徒よ」



私は、矢島君の顔を見れなくて顔をふせた。



「それ以下も、それ以上もない。他の生徒と変わらない。他の生徒が矢島君みたいな問題を抱えていたら、私は今回みたいに助ける。矢島君だけが特別なわけじゃない」


「それでもいいって言ったら?」


「無理よ⋯」


「なんで?」


「私をそんなふうに思ってくれるあなたに、こんなあやふやなままの気持ちで答えられるわけないじゃない」



先生と生徒。


先生である私が、生徒である矢島君に、恋愛感情なんて抱けるわけがない。

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