第83話

「初めてだった⋯」


「え?」



初めて?

何が?



「自分を大事にしろって、親にも言われたことねぇよ。アレ、正直結構嬉しかった⋯」



思い出すのは、いい加減な態度の母親⋯。




「⋯俺の女になってくれよ」


「それって、私も他の人と同じ扱いになれって言ってるの?」


「俺は女なんか作ったことない」



作ったことないって⋯。

そう言えば、今まで見た子は、彼女じゃないって言っていた。体だけの関係。


それってつまり、私が1番目ってことじゃ⋯。



だめだめだめ!何考えてるの私!



「⋯私のこと好きじゃないでしょう?今までずっと嫌ってたのに」


「⋯」


「ダメだよ、ヤケになっちゃ」


「⋯」


「私は先生として、貴方を心配しているだけ」



先生と生徒の、大きな壁。



「じゃあ、そろそろ帰るね。明日は学校来るのよ?。もうすぐ期末テストだから」


「行かなかったら、またここに来てくれんの?」




ここに⋯。

矢島君の家。

小さい頃、ずっと1人で過ごしてきた場所。

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