第79話

「矢島君の事、見てれば分かるよ。女の子に見せる笑顔が本物じゃないことぐらい」


「⋯」


「どう見ても、橋本達と喋っている時の方が、楽しそうだし。ねぇ、そうでしょ?」




しばらくの間、沈黙が続き。




「そうだよ⋯、抱きたくねぇよ⋯」



ポツリと呟いた矢島君⋯。



私の膝を見つめている矢島君の顔は、私からは見えなくて。


けど、矢島君の声が本当に苦しそうで。

まるで泣いているかのような声で。




「⋯抱いた後⋯、すげぇむなしくなる」


「うん⋯」


「けど、抱いてたら1人じゃねぇって思える⋯」


「うん」


「先生、前言ったよな。寂しいって言えば来てくれる友達がなんとかって⋯」


「うん、言った」


「いるよ、いるけどな⋯。あいつらは別格なんだよ⋯」


「別格?」


「今までの女みてぇに、同じ扱いをしたくない⋯。女はマジでどうでもいいって思ってるから、甘い言葉も吐けるし、1晩の関係でもいいと思ってる⋯何人もいるしな⋯」


「うん⋯」


「けど、あいつら違う⋯。毎晩寂しいから会ってくれって⋯、俺の勝手な都合で、振り回したくねぇんだよ⋯。」


「⋯矢島君⋯」

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