第78話

矢島君の綺麗な指先で、大きな絆創膏を私の左膝にあてる。



「どうすれば本気になれるって、矢島君、私に聞いたよね」


「⋯」


「私はそれに答えることが出来なかった」


「⋯」


「だって私も、恋愛も勉強も、本気になった事が無かったから」



ガーゼをとった矢島君は、それを右膝にあて。テープのようなものでガーゼを固定し。



「ずっと後悔ばっかりしてきた」


「⋯」


「だから、矢島君は私みたいに後悔ばっかりの人生を歩んで欲しくない」



クルクルと、ガーゼの上に包帯が巻かれていく。



「⋯本気になれとは言わない。でも、お願いだから、自分を大切にして。これ以上、自分を傷つけないで」


「⋯」


「矢島君、本当は女の子を抱きたくないでしょう?」




クルクルと巻いていた矢島君の指先が、ピタリと止まり。

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