第76話

「じゃあ、遠慮なく」


私はタオルを受け取ると、ポンポンと足をふいた。タオルに血が滲んでいく。


どちらかというと右膝の方が酷くて、私は血が垂れないようにタオルで抑えた。ジンジンと膝が痛む。



「⋯手当てするから、こっち来いよ」


「え?」


「話あるんだろ?」


「⋯そうだけど」


「逃げねぇから、こっち来い」


「⋯⋯」




中へと入っていく矢島君。


もう逃げないと言ってくれた矢島君は、私が部屋中へと入ると、「そこ座れ」と3人がけのソファに誘導してきて。




座った私の足元に座り込んだ矢島君は、消毒液や、絆創膏、ガーゼ、包帯などを持ってきていて。



手当てって、まさか矢島君がしてくれるの?


私を避けていた矢島君が?



「いいよっ、自分でする!」


「うるせぇ」


「ちょ、うるさいってなに?痛っ―――!」



急に消毒液を押し付けられ、私は痛みで顔を歪ませた。

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