第73話

え?と思った時には、矢島君の手によって、玄関の扉の鍵が開けられて。


私の手をとったまま、扉を開けた矢島君は、私を中へ入れようとしているらしく。


今の状況が全く分からない私は、「矢島君!」と声を出していた。



矢島君は冷たい目で私を見下ろす。




「や、矢島君に話があって来たの、お願いだから逃げないで」


ぽたぽたと、血が流れていく感覚がする。



「少し話したら、帰るから⋯」


「⋯それで帰んのかよ?」


「え?」


それで?



「手当ぐらいしろ」


私はその時、初めて自分の膝を見た。

スカートから出ている膝の皮膚がめくれがり、そこから流れ出す血は足を赤く染め、破れたストッキングまでも浸透していて。


そのグロさに、私は一瞬言葉を失った。

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