第40話

「その矢島っていうの、やめてくれない?」


「え?」



矢島?やめる?

え、なんのこと?



「それ前の父親の名前だから」


「え⋯?」



前の父親?



「俺んちね、母親しかいねぇの」



母親しかいない?



「血筋なんだよ」



矢島君は廊下の壁に、もたれながら喋り。



「⋯血筋?」


「浮気性の男が、母親を捨てた。その母親は男を忘れられなくて未だに名字を変えねぇ。だからずっと矢島のままなんだよ」



呆れたように話す矢島君に、言葉が出ず。

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