転載記念SS

第44話

転載記念SS



仕様の変わる前の魔法のiらんどさまで、キリリクいただいて書いたものです。


まさかそんなことになっていたとは!と、リクをいただいたかたから感想いただきました。




◆◇◆◇◆


「――ご迷惑をおかけしました」


 末端が瑠璃色のプラチナブロンドの男が言う。

 そのマカライトの瞳は――冷めている。


「……お前……それは本心から言っているか?」


 ややたじろいだ声で問うたのは、雪よりも白い髪に銀の双眸の、体格のいい男。


「本心ですが? 何か?」


「………………

 ……いや、ならいい」


「では、私(わたくし)はこれで」


 言い、姿を消すプラチナブロンドの男。


「……根は深そうだな……」

 夜空から星と月を除いたような空間に一人残った、白い髪の男が呟いた。



◆◇◆◇◆



「あー!!来た!!」


 嘗て、氷王神殿と呼ばれていた場所。

 彼が力を取り戻した今となっては、そこは氷宮に戻り、人間の世界からは隔絶されていた。


 そこに、甲高い声が響く。


「どこ行ってたのよ!?ムィアイーグ!」


「ク、クライグ……」


 真っ青な髪をツインテールにし、白から淡い黄のグラデーションの薄い衣服に身を包んでいる。

 一見してまず、活発なという言葉が出てきそうな彼女は、白い空間で戻ってきたばかりのムィアイーグの胸倉を掴むと、


「白状しなさい!どこ行ってたの?」


「シ、シスラクトのところに……」


「順番が違うぅぅぅうううっつ!!」


 クライグと呼ばれた彼女は、ムィアイーグの胸倉を掴んだままがくがくと揺さぶりながら、

「最初にあたしのところに来るのが道理でしょ!?あんたが封眠したせいであたしも封眠してたのよ!?対立属性の意味分かってる!?あんたが力なくした分あたしも力おさえてたんだからぁっ!!限界よ限界!そんな我慢したあたしに挨拶もまだのうちにシスラクトに会いに行ったぁ!?まずあたしのところに来て苦労かけてすみませんでしたって言うのが礼儀でしょ!!」


「……ご、ごめんなさい、クライグ……」


 揺さぶられながらムィアイーグがやっと言うと、クライグは手を離す。


「少し……挨拶をしておきたかったんです」


「だから順番が違う!」


 びしっとムィアイーグに指を突きつけたかと思うと、急に肩を竦め、


「ま、ティラムに聞いたわ。許してあげる」


「あ、ありが……返して下さい!」

 クライグは、ムィアイーグが懐に入れていた、氷で封じられた耳飾を手にしていた。


「これがそのコ? ……ふーん……」

「クライグ! 返して下さい!」


「あんたさぁ、後生大事に持つぐらいなら復元したら?」


 取り戻そうと伸びてくるムィアイーグの手を躱しながら、クライグは言う。


「人格はティラムに頼んで魂から転写してもらって、オーリスかフィーヌに頼めばいいじゃない」


 その言葉に、ムィアイーグは追撃をやめ、

「それは……それでも、それは彼女ではありません」

 落ち込んだ声で言った。


「うわ、相変わらず些細なことに……」

 呆れたようにクライグは呟き、急に笑顔を浮かべると、

「これ、借りるわ」

 言うなり消える。


「クライグ! 待って下さい!」

 慌ててクライグを――いや、耳飾を追って炎宮に転移するが、そこにクライグの気配はない。


 方々を探し回り、疲れたムィアイーグが一旦氷宮に戻ると、

「ハイ、返すわ」

 笑顔のクライグが、耳飾を放ってきた。


 慌てて受け止めると、変化が起こる。

 耳飾を封じていた氷は消え失せ、セピアの光が発せられる。


 光が止んだ頃には、ムィアイーグの両腕の中で、栗色の髪の、セピアの耳飾をつけた娘が眠っていた。


「戻したかったら戻したら? 目を覚ます前に」


「クライグ……今までの復讐ですか?」


「やーね、ちょっと気を利かせただけじゃないの。

 じゃあ、お邪魔はしないからごゆっくり、ね」


 言って消えるクライグ。


 ムィアイーグは、暫く彼女を見つめていたが、


「……起きて下さい。……スクーヴァル」


 そっと、意識のない彼女を軽く揺すった。




◇◆◇ The End ◇◆◇




キリリクは、「十五神王」でした。三人しか出ませんでしたが。

今も親交のあるかたからいただいたリクでした。



では、ありがとうございます!!

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Vildesia’s Memento ―― Winter Comes around Again ――  戦と死の神の忘れ形見(旧) 副島桜姫 @OukiSoejima

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