第2話 マイナーゲームの世界

 僕は二人に話をする。


「えっと、何から言えばいいのか分からないけど、とりあえずこの世界について話をするね。この世界は僕が家でやっていたゲームの世界に酷似しているんだ。そして、そのゲームの始まりは集団転移から始まる。今回のようにね」


「エータ、それって夜中までエータがやってたパソコンのゲームのこと?」


 ミキからそう聞かれた僕は素直に頷く。そのやり取りをみたキョーカさんが何故か顔を赤くしてブツブツと何かを言っている。


「よ、夜中…… 血の繋がらない兄妹きょうだいだけど禁断のイケナイ関係を親にもバレずに行う時間……」


 とりあえずブツブツ何かを呟いているキョーカさんを気にせずに僕は話を続けることにした。


「うんそうだよ、ミキ。あのゲームはオンラインゲームだったけどいつも参加者は僕一人だったから、恐らくだけど僕しかやってなかったんじゃないかな、多分だけど。それで、そのゲームの設定とこの世界が酷似していると思った理由なんだけど、さっきも言ったけど始まりが集団転移から始まるというのが一つ。それからあの王女様が出てくるというのも一つ。セバスチャンが実は味方だというのも一つ。さっきまでいた王国の名前がイビルドだというのも一致しているし、今いる隣国であるこの国の名がエーヴァンだというのも一致しているというのが理由としてあげられるんだ。そしてこの世界で使用されている言語が日本語だっていうのも大きな理由の一つだね」


 そこでキョーカさんが大声を出した!


「ちょっ! ちょっと待ってっ!! 二人とも呼び捨てで呼び合ってるのっ!?」


 その言葉に僕とミキはポカーンとしてしまった。


「う、うん。そうだけど、兄妹きょうだいだから普通だよね…… 実際には僕が早く産まれて兄という立場だけど学年は同じなんだし」


 そう説明をしたんだけど、キョーカさんは何やら自分の世界に入ってしまったようだ……


「ブツブツ(血の繋がらない兄妹は深夜に互いの親の目を盗んで呼び捨てで呼び合い、愛を確かめ合ってたのね……)」


 そしておもむろに僕たち二人にこう宣言した。


「それじゃ、ここは異世界でもあるんだし私も含めてみんなお互いを呼び捨てで呼び合いましょう!! 決定ねっ!!」


 その宣言の勢いに釣られて僕もミキも頷いてしまった。


「分かった、キョーカさ、いやキョーカ。これからは呼び捨てで呼び合おう」


 とまあこんな横やりが入ったけど、そのまま本題に戻って話を続けたんだ。


「酷似してるとは言ったけど全てが同じかどうかは分からないんだ。ゲームではスキルが一文字の方が強かったからね。この世界のように外れとはなってなかったし。でも、それを信じて僕たちはスキルを育てていく必要があると思う。それでこの国、エーヴァンの辺境を目指しながら進もうと思ってるんだ」


「エータ、辺境を目指すのはどうして?」


「この国の辺境地は暮らしやすいから。海を挟んだ島国は日本と良く似た文明が発達していて、そこの輸入品を購入したり出来るんだ。まあ、ゲームの話なんだけどね。似てるから可能性は高いと僕は思ってる。問題はここからどうやって辺境地に向かうかなんだけど…… ゲームだと移動なんかは一瞬だったけど、実際にはここまで馬車で来たように何日もかけての移動になる。召喚されたイビルドからこのエーヴァンまでは近かったけどエーヴァンの辺境地はゲーム内の地図では遠かったんだよね。だから先ずは行き方やどうすれば行けるかを調べるつもりだよ」


 僕の言葉に二人は頷いた。


 そして一拍おいてキョーカが質問してきた。


「エータ、具体的にはどうするの?」


「うん、先ずはセバスチャンが用意してくれた身分証明書があるからそれを利用して【あきないギルド】に登録をしようと思ってる。行商人として活動していくつもりだよ。僕たちのスキルは戦闘でも力を発揮してくれるけれども序盤は弱いんだ。実際に僕の【毒】スキルでいま出来る事は毒鑑定だけだからね。ミキの【影】スキルもいまは薄影ぼえいっていう自分の存在感を薄くするだけだろうし、キョーカの【武】もいまは基礎数値の補正しかついてないでしょ?」


 僕の言葉に自分たちの能力値を確認しだす二人。実際に僕の言葉通りだったみたいで頷いていた。


「エータの言った通り、私の場合は基礎数値にプラス100の補正がついてるわ。これは本当にエータが言ってるゲームの世界なのかもね…… でも、私たちは何でそのゲームの世界に召喚されたのかしら」


「それは僕にも分からないけど、イビルド王国の目的はゲームと同じなら世界征服だね。あの王女様が魔族って言ってたけど、ゲームの中ではだけどこの世界には亜人種は居ても魔族なんて居なかったからね。魔獣、悪魔は人種の敵としてでてきてたけどね」


「ん? それってゴブリンとかオークとかも人種として成り立ってたって事なの?」


 ミキが聞いてきたから僕は頷いて答えた。


「うん、実際に他のゲームでは魔物と呼ばれていた種族も人種として平和に暮らしていたよ。ゲームの中では。それも調べてみないとダメだね」


「そうね、それも調べましょう」


 キョーカも賛同してくれた。とりあえず明日はここの商いギルドに行く事にして交代で身体を拭いて休む事にした。女子二人が拭く時は僕は廊下に出ていたよ、もちろん。


 僕が拭く時には何故か二人とも出ていってくれなかったけど……


 僕は身長が中学三年生でいきなり伸びて175センチある。今も多分だけど伸びていってると思う。ミキは155センチでキョーカは162センチだって言ってた。二人とも中学二年から伸びてないって言ってた。


「ね、ミキ。エータって着痩せするんだね。意外と筋肉がしっかりとついてる」


「うん、エータはお義父さんと一緒に身体を鍛えてたから、筋肉はしっかりついてる。私もお母さんと一緒に鍛えてたから女子にしては筋肉質だけど…… 私は筋肉をつけすぎて身長が伸びなかったのかも……」


「そうなんだ、さっき聞いたけど、エータの家が伊予光明流いよこうみょうりゅうで、ミキの家が土佐影明流とさえいみょうりゅうだったっけ? うちの宇摩逸刀流うまいっとうりゅうよりも強そうだよね。うちは一地方だけだから……」


「お母さんが言ってたけど、剣術で宇摩逸刀流とは勝負するなって教えられたよ。うちの流派は何でもありだからそこらの剣術には負けないって教えられたけど、宇摩逸刀流だけは剣術だけでの勝負は避けろって言われてたんだ。それはエータの家でも一緒だったよ。お義父さんにもそう言われたから」


 武術談義をしてる二人だけど、僕は眠たくなったからそのまま会話には加わらずに寝てしまった。


 そして翌朝、商いギルドへと向かった僕たち。無事にギルド員になれてギルド証ももらえたよ。


 そして初心者に色々と教えてくれる講習にも参加したんだ。

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僕しか知らないマイナーゲーム世界に転移しました しょうわな人 @Chou03

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