第28話


太陽みたいな笑顔。



屈託なく。少女らしい可憐な笑顔。



確かにあのとき鬼頭は



笑ったんだ。



初めて見せる、心からの笑顔だった……ように思える。



「ごめん。傘、人に貸してるんだった。僕、まこを送っていくよ」



まこは『誰に?』と聞いてこなかった。それが助かる。



「マジで?助かる」



まこが拝む仕草をして笑う。白い歯を見せて。



鬼頭の笑顔はこちらがはっとするような、こぼれるような笑顔だ。大輪の薔薇のような。



まこの笑顔は心が温かくなる、ほんわかする笑顔だ。鬼頭を薔薇と例えたのなら、まこはすみれのような。





雨に感謝だな―――





今日の僕は二人の笑顔で少し元気が出たよ。



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TENDRE POISON ~優しい毒~ 魅洛 @miracle78

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