第24話 クラウス先生の白魔法講座 後半
さらに話は続く。
「そして、白の女神には対になる神がおられます。黒魔法を司る黒の
この神の像はアラストル帝国に安置されています」
「白があるなら黒もあるわけですか」
ヒシマルが顎に手をあててうなずいている。
「はい。白魔法と黒魔法は魔法の性質としては正反対のものですが、その成り立ちや使用条件などはほぼ同じ、と考えてよいでしょう」
「アラストル帝国……、ここから東の大草原を超えたところにある巨大な国だな。砂漠に囲まれていてなかなか攻めにくい国と聞いている」
サカキはローシェに来てからは各国の簡単な知識だけは学んでいた。
「よくご存じですね。アラストル帝国は我が国と歴史的にも因縁の深い国です。過去に何度か戦争も起こっていますが、一方では交易も盛んです。
こちらの黒の
「なにからなにまで対なのだな」
サカキは感心する。国によって扱う魔法が対称的というのはなかなか興味深い。
「ええ。そして、黒の男神にも喪中がまったく同じ条件で存在しています。
ちなみに白魔導士は
生徒全員がルゥを見る。
「「なるほど」」
「えええ、ひょっとしてボクが男の娘だってみなさん知ってたの?いつから?」
「「最初から」」
「うええええええええん、驚かせたかったのにぃいいい」
忍者は女装も忍務でよくやるので人が化けているのを見抜くのが上手いのである。
「せっかく、『ルゥルゥさんって男なのにすごくかわいいですね、びっくりしましたー!』とか『男でもこんなにかわいいならボク惚れてしまいそう』って言わせようと思ってたのにいぃいいい!忍者って!忍者って!」
ルゥがぴょんぴょんしているのを横目にヒカゲが、
「質問……」
おずおずと手を上げた。
「どうぞ」
「白魔法で人は殺せますか?」
「ちょっと怖いけど良い質問ですね。白魔法では人は殺せません。もともと人を救うのが目的ですので、できても昏倒させるくらいです。
逆に、黒魔法は攻撃に特化した恐ろしいものです。高位の黒魔導士が20人いればひとつの国を亡ぼせる、と言われるほどです」
「黒魔導士は女性だけ……かあ」
ヒカゲが残念そうに言う。彼は殺しの専門家であり、黒魔法も自分が使えれば、と思ったのだろう。
「黒魔法は恐ろしいものですが、白魔法には防御魔法があり、さすがに一方的にやられる、ということはありません。
アラストルの現皇帝ヨシュアルハン陛下は聡明なお方で、若き頃はご自身が我が国へ留学にいらしたりで和平を保っていました。ですが――」
クラウスの顔が曇る。
「陛下はもうご高齢で病気がちと聞いています。現在の政治を取り仕切っている第1皇子が野心家で、我が国を狙っている、という噂もございます」
「あとでその、アラストル帝国の皇帝と皇子、その関係者の重鎮の写し絵があったら見せてもらえないか?」
サカキは女皇の警護任務もあるので、危険因子は早めに把握しておきたかった。
「後ほどお部屋に届けさせましょう。では皆様もお忙しいことですし、ここまでにいたしましょうか。お疲れ様でございました」
「「ありがとうございました!」」
「この書面を配りますのでお名前を書いて提出してから出てくださいね。講義を受けました、という証明書になりますので」
ルゥが、書類を机にトントンと揃えながら言った。
「「はーい」」
生徒たちはさらさらとサインをする。
サカキが自分の目の前で人差し指を立てて、
「散!」
と掛け声をかけると同時に全員が別方向へ消えた。
クラウスは目を丸くした。
「すごい、全員一瞬で……」
「あー、なにこれ、だれも何も書いてないですう、先生ー!」
残された書面を集めてルゥがわめく。
ヒカゲが会議室の窓の外の上からからひょこっと逆さまの顔を出して
「それ、炙り出し……」
そう言ってスッっと消えた。
部屋に残されたクラウスとルゥは目が丸くなる。
「……長いこと生きてきました私ですが、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんありますねえ」
と、クラウスは呆れながらもどこか楽しそうに言った。
ちなみに、炙り出しの署名は無効なのであとで全員書き直しさせられた。
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