第3話
うちの構内には他の大学からも羨ましがられるぐらい大きな図書館が併設されている。
空いた時にきては、好きな本やまだ読んだことのない本を探して、誰にも邪魔されることなく読み
古い書物の匂いや他の誰かが静かに
騒音のない
だって彼女そのものが
図書館の片隅で新書の整理をしているその姿がまるで絵画のよう。
今朝、彼女を初めて見た時と同じように鼓動が少しだけ早く鳴り出した……。
彼女、
静かで、だけど優しい微笑みの彼女にはある一定数ファンがいるようだ。
短大を卒業したばかり(つまりは僕と同い年)で、司書補として将来は司書になるべく勉強中であること。
月曜日から金曜日までの9時から17時までが彼女の勤務時間で、時々それ以降の時間もここにいて、その時間は好きな本を読んでいるらしい、と。
大学近くのカフェで夕飯らしきご飯を食べて珈琲を飲みながら借りて来た本を読んでる姿を見かけたこともある、とか。
そう、それ等は全部彼女のファンと名乗る連中からの聞きかじりだ。
しかも聞き耳を立てまくって集めた勇気のない僕のせめてもの情報収集。
だって一ヶ月経った今も目を合わせて挨拶を交わすだけで僕はまだ彼女と一言も話ができていないのだから。
僕が知っている唯一の自分情報は、彼女は物静かで穏やかで誰に対しても微笑みを絶やさずに丁寧に仕事をしていること。
中学、高校と男子校で本の虫でしかなかった僕にとっては女の子と話すことのハードルの高さと言ったら。
東京スカイツリーをクライミングするぐらいに厳しいものなんだよ。
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