第15話 エピローグ
何度死のうと思ったか分からない。でも僕は生きている。
あのとき伊藤さんに抱きしめてもらわなかったら、あの時点できっと僕は死んでいたと思う。彼女には感謝してる。でも……生きるのが辛いよ、亜季。
僕は君に酷いことをした。それを一生かけて償っていくと誓った。そのために生きる。でも、最近はそれだけでもないんだ。
この離島の診療所に赴任して、島のみんなを見ていると、なぜかふっと自分は生きているってことを実感することがある。海の青さが美しいと感じることがある。そんなとき、まだ僕の心は死んでいないって気づくんだ。
僕はこの島で生かされている。こんな僕を生かしてくれるこの島のみんなに僕のできる限りのことで恩返しをしたい。
君の叔父さん、叔母さんにあたる人から君の遺品を分けてもらったんだ。
初めてのデートで君が髪に付けていた菊の模様のバレッタ。
僕はこの島の一番きれいな、海が見える場所にそのバレッタを埋めて、僕だけの君のお墓を作った。
今日はここへ来る途中できれいな野菊を見つけた。今日はそれを供えるよ。
いつか僕もこのお墓に入る日まで、どうか待っていて欲しい。
神の国で、「僕のお嫁さんになって下さい」って君にプロポーズするから。
※
これは僕から彼女への贖罪の記録だ。
彼女が生きた証を書き記すことで、少しでも贖罪になればと願っている。
ー終ー
ある愛のうた ~僕から彼女への贖罪としての記録~ @nakamayu7 @nakamayu7
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