第40話

「ったく。お前それでもヤクザかよ。」


「はは。権堂さんも似たような事言ってたなぁ。

こんな商売だから、腹括ってるってだけですよ。」


苦笑してみせるとあからさまに溜め息を吐かれた。

つまんねぇ野郎だ。そんな呟きは無視しておく。


頃合いだろう。

塀に置いてある週刊誌を手に取り、パラパラめくる。



「アイドル熱愛発覚。深夜の車中キス、ねぇ。やーらし。」


そこに挟まれているのは、捜査資料のコピーだ。

その一枚、写真には特徴の無い男の顔が写っている。



待て。…こいつ、何処かで。


……なんて思ったが、大方気のせいだろう。



「にしても。ハンザイシャがこの街に住んでたなんてなぁ。こえーなぁ。」


週刊誌を小脇に挟んだ俺の言葉にニタリと笑えばヤニで黄ばんだ歯が覗く。



「なぁに真人間ぶってんだよクズが。今からでもパクってやろうか。」


三井サンに俺はまぁまぁなんて宥めながら言った。



「書類仕事増やさないで、お孫さんと飯でも食いに行けばどうです?」


ホールドアップした左手に拳を撃ち込まれて

指に挟んでいた万券2枚が抜き取られた。



『御咎町警察署 捜査第4課 三井紀明巡査部長』



三井サンは欲とヤニに汚れきってるマル暴のお巡りだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

dirty5 バニラ味(サイト転載であたふたしてる) @vanilla_flavor

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ