第8話

「ココロって呼んでいい?」


「いいよ」




繋いだ手。触れた肩。自然と近くなった距離。


蜂谷はきっと私の心に爪痕を残したいんだろう。



赤く、熱く、燃えるように。


簡単には捨てられないように。




その証拠に蜂谷は電車が減速すると私を見下ろして不敵に笑った。


野良犬に首輪でも付けるようにガッチリと私の手首を掴んで「降りるよ」と一言。



支配されている人間が他人を支配することを覚えた瞬間。



行き着く先は天国か地獄か。



どちらかわからないが、今の私には差し伸べられた蜂谷の手が輝いて見える。



地獄にいた私に降り注いだ一筋の光。


この光が救いに感じ続けられますように……と願いながら、私は綺麗に揃えて貰った髪を撫で、繋いだ蜂谷の手を強く握り返したのだった。




君と僕のふざけた逃避行【完】

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君と僕のふざけた逃避行【完】 柚木ミナ @yuzuki-mina

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