第71話

長い話になった。


ママが蘭丸となって現れた朝から、話した。


私がエロエロになった部分は避けたが、

感情の高ぶりで、蘭丸の髪が濡れることは話した。


「あれは、ママがおぼれたことと関係あるかもしれない。

雨のにおいがしたもの。」


「美々子を守ろうとしたときは、いつも髪が濡れてたね。

ソフトボール大会の時も。」


「蘭丸は、うまく、ごまかしていたけどね。」

私は、ちょっとしみじみとなった。


「ぼくといるときも、時々濡れていたよ。」

「は?なにその競争心。」


そして、ママの時間が少なくなり、

蘭丸の意識が大きくなるにつれ、

彼が苦しんでいたことも、話した。


私達は話の途中で、ペットボトルのお茶を飲み、

トイレにも行った。


「ね、散歩に行こうか?涼しくなってきたし。」

と元春は言って、ふたりは、家の外に出た。


 

晩夏も過ぎ、秋の気配が漂う夕暮れの道を歩いた。

 

どこを歩いても、蘭丸の亡霊がいるようだ。

元春と私は、蘭丸を感じながら、ゆっくり歩いた。



「それで、彼は、今はインドにいるの?」

「わからない。

なんか、王族に見染められて、宮殿建ててもらうんだって。」


「ああ、蘭丸なら建ててもらえそうだ。」

「ギリシャにも行くかも、って。」

 

元春は立ち止った。

私を見る。


「あのね、蘭丸が転校して来た日、

古文の先生が雑談をしたろう。」

「あ、影武者の森蘭丸?」


「いや、その前。ギリシャの戦士の話。」

私は思い出してうなずいた。

 

元春は、ちょっと言葉を切ってから、ゆっくりと話し出した。


「ぼくはね・・・、蘭丸とふたりで戦士になって、戦場に行って、

一緒に戦い、一緒に眠り、一緒に死にたかったんだよ。」

と言い、下を向いて、右腕で目を押さえて、静かに泣いた。



「元春。蘭丸は、きっと帰ってくるよ。」

「帰ってくるかな。」


「うん。どこかで、折り合いをつけて、

神のごとき美少年にパワーアップして、帰ってくるよ。」


「変わってないかな。」


「変わってないよ、性悪美少年のままだよ。」


「そうか。そしたら、また3人でダラダラしよう。」


「うん。」



私たちは、空を見上げた。


もう、夏の名残も消え、すっかり秋の空だった。 


 ― 完 ―













読んでくださってありがとうございます。

第2弾は 「超絶美少年守護神」です。

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超絶美少年母 (シリーズ1) ぴぁっちゃいん @pyattyainn

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