Filled with Eternity(ETERNITYに満たされて)

第8話

―————―あれから二年の月日が流れた





二人とも、すっかり大人になって私は25歳、碧は27歳

同棲も始め、1年が過ぎていた






最近、口数の少ない碧が心配だった

仕事の帰りも遅く、何か考えこんでいるようにも見えた




ある晴れた休みの日、

「久しぶりにドライブ行こうか」

早く起きて来た碧が言った






・・・・・・・・・・



「急にドライブなんてどうしたの?」


「ここんとこ忙しくて二人で外出てなかったからさ、何か予定あった?」


「ううん、私も忙しかったから遠出したいなって思ってた」


「やっぱり、外出た方が気分転換にいいなと思ってさ」


「そうだね、どこ向かってる?」


「俺の原点」


「何それ(笑)」




・・・・・・・




行き先は海、一番最初にクリスマスを二人で迎えた場所だった




「確かにここは(笑)」


「そう、俺たちの場所。」


「私の原点でもあるけどね(笑)」





外に出ると、水面がキラキラしていて、あの時見た海とはまた違った顔を見せていた





「気持ちいいね!」


「そうだね!やっぱ海いいな」


「最近、元気なかったもんね、碧。どうした?」


「ん.....、その話をしようと思って」




ちょっと嫌な感じがした




「え、何?」





「.........」



言いづらそうにしている




「何??そのタメ。ちゃんと言って」





「........会社でさ、海外プロジェクトがあって声かけられたんだ」


「.......行かないかって、コト?」


「そう。」


「すごいじゃん!行って来なよ!」


「.......あのさ、そんな簡単にいうか?」


「え?だって、大抜擢だよ?すごい事じゃん!」


「期間、どれくらいだと思ってるの?」


「どれくらい?」


「.......いったん二年。で、その後状況によるって。」


「.....二年か。簡単じゃなかったね、ゴメン。」




碧は海外のプロジェクトの責任者の打診があり、それで悩んでいたようだった。

一度行けば最低は二年で、会社の意向で期間が伸びる可能性があるとの事。





「それで?碧はどうしたいの?」


「......俺は行きたい。」


「じゃあ、行けばいいじゃん、答えがでているじゃない」


「......伊織は?だって、二年だよ?遠距離になる。」


「そうだね....そっか...」




碧がふさぎ込んでいた理由はこれだった。



「私は、行った方がいいと思う。自分のやりたい事を諦めたら後悔するよ。こんなチャンス、ない。」





呆れた顔で碧は言う。




「普通さ、彼女って離れる事を進めないよね。」




最初に振った時、友達で。と言ったやつの言葉とは思えない。





背後から、碧の香りが私を包んで抱きしめた。




「お前と出会って、最初に好きを口にしたのは伊織だけど、ハマったのは俺の方。俺、お前と離れたくない。今、すごく幸せなんだ。」


「私も幸せだよ、だけど私が居るせいで、碧が何かを諦めるのは嫌な....。」





話し終わる前に、唇がふさがれる。




「ん....今はこのまま何も言わないで。しばらくこのまま」


「ん....碧...」




答えを探すように、碧は唇を重ねたままだった。

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