第76話

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朝日の柔らかさを感じる。








暖かい。





ただそう思う。








ぼんやりとする頭のまま微睡まどろみながら、ゆっくりと目を開いた。







柔らかい朝日が差し込む見知らぬ部屋に、ゆっくりと瞬きをする。








そうだった。



 





ここは、日向国の飯野城。








私が嫁いだ場所。







これから暮らす…場所。









昨日の夜に薩摩の皇徳寺から20里離れた飯野城へ着いたから、明るい部屋の中を見るのは初めてで。







ゆっくりと起き上がろうとしたら、そっと抱き寄せられてしとねへと戻された。



  






「…ひさやす…さま…?」


    






「…ん…」







  


…起きていらっしゃるのかしら。


 






そう思って名を呼んだけど、返事とも言えぬ言葉を漏らした久保様は目を閉じたまま寝息を立てる。









今までは、祝言の夜から毎日寝所は一緒でも、父上のいる内城だったり、お坊様がたくさんいる皇徳寺だったりと人目の気になる所ばかりだった。









でも、ここは…久保様が城主の居城。








誰にも、邪魔はされない。







時間もたくさんある。








そう思って、まじまじとその寝顔を見てみることにした。










くっきり二重の瞼に、女の私より長いかもしれない睫毛。







綺麗に鼻筋も通っていて。







肌すら、綺麗だと思う。







このひと、本当に綺麗な所しかない。








髪を解いているから、いつも上げている前髪が乱れて顔にかかっていて。







それすら色っぽいと思ってしまう。









…私より二つ歳下なんて、信じられない。








歳上、と言っても罷り通ると思う。







顔にかかる前髪を、そっと指先でよける。













————————なんて、美しい殿方ひと

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