第55話
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すごく気分が悪い。
頭はガンガンするし、めちゃくちゃ吐き気がする。
おまけに身体は死にそうなほど怠い。
重たい瞼を開くと、目の前にハンドルがあってどうやら突っ伏して寝てたらしい。
脳出血じゃなさそうで安心した、と思うがはっきりしてきた意識の中、目に飛び込んで来たものにぎょっとした。
「…えっ…?!」
フロントガラスから見えるのは、…生い茂る木々。
いやまて、皇徳寺台は住宅地だぞ。
皇徳寺跡は田んぼがあるところだったけど。
「…ちょっと…!…うそだろ…?!」
ドアを開けようとするけど、普通に木が生えてて開かない。
助手席側を見ると、開けた道のようなものが見える。
ドアの横に木もないから、開くはずだ。
そう思って勢いよく押し開ける。
「…よっしゃ…」
木々を踏み分けながら、その開けた
どうなってんだ、と思った瞬間。
視界に飛び込んできたものに、息が止まりそうになった。
「……………え……」
京都の知恩院かと思う程の、巨大な楼門。
いや、少し遠くのここから見ても巨大さは尋常ではない。
——————これ、寺、か?
そう思った瞬間、無意識に勢いよく周りを見渡す。
ない、と思った。
電柱が。
家が。
車が。
道路が。
広がるのは、真っ青な空。
馬鹿でかい楼門。
そして、空間を捻じ曲げたように、雑木林の中に無理やり嵌め込まれたかのような俺の車。
これは。
これって。
胃の中の物が込み上げてきそうな感覚に、口を押さえる。
思わずしゃがみ込むと、心臓がバクバクと拍動している。
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