第34話
久保様は終始バツが悪そうにしていたが、皆が笑っているのを見て、漸く笑い出した。
「…面白い側近の方々ですね?義父上様も」
「…お恥ずかしい限りです。…あとから締め上げておきます」
「…どうかお手柔らかに」
ふふ、と笑って私が手元にあった
それに、お酒を注ぐ。
結構飲んでいる筈なのに、彼は顔色を一つ変えずに飲み干した。
お酒、強いのかしら。
さらに注ぎ足そうとしたら、ふと、久保様の前にまだ幼いとも取れる年頃の少年が屠蘇器を持って片膝をついて座った。
「此度はおめでとうございます。兄上。…義姉上」
兄上…と、いうことは。
「ありがとう。
ふわりと笑った久保様に、少年は満足そうに笑う。
「忠恒…殿」
「下の弟です。忠恒も、子供の頃以来かと」
兄弟、と言っても全く似ていない、と思う。
久保様は誰もが口を揃えて眉目秀麗と言うけど、対して忠恒殿は精悍な顔立ちをしている。
確か久保様と3つ違いだから、14歳。
どちらも、義父上には似ていない。
忠恒殿は私にも屠蘇器を持ち上げて見せる。
お酒は殆ど飲めないのだけど、慌てて杯を取る。
それに注いでくれ、小さく会釈をした。
「…あまりお強くはないのでしょう?無理なされぬよう」
久保様が助け舟を出してくれて、私のことをよく見ていると思う。
「そうなのですか?それは…申し訳ありませぬ」
忠恒殿が申し訳なさそうにしてしまって、こちらも申し訳なくなってくる。
「いえ。ありがとうございます。いただきます」
少しだけ口をつけると、口に広がる苦さにを飲み込む。
やはり、得意にはなれそうにない。
「…お前も飲んでみるか?」
そっと杯を下ろすと、久保様が私から視線を外して忠恒殿に杯を渡す。
「…良いのですか?」
「あぁ。祝いの席だからな。少しだけ」
久保様がそっと杯にお酒を注ぐ。
忠恒殿はそれを暫く見ていたが、勢いよく飲み干した。
「…どうだ?」
久保様が尋ねると、忠恒殿は暫く口をもごもごしていたが、呟いた。
「…不味い…」
その言い方が幼くて、久保様が吹き出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます