第32話
酒が振る舞われ、無礼講だと皆が笑っている。
多くの人が入り乱れ、祝いの踊りやお囃子が城内を包む。
ちらりと横を見ると、久保様はいつになく酔った家臣たちを温かい目で見て柔らかく笑っている。
こういうときでさえ、落ち着いていて大人だと思う。
私よりも2つ歳下の17歳のはずだけど。
「若ぁ!!真に!おめでとうございます!」
すると突然号泣している人が久保様の前に転がるように平伏してきて、ぎょっとする。
「久規…」
久保様がその名を呼んで、側近の方なのだと思うけど誰かわからない。
するとそんな私に気がついたのか、その人はふらふらしながら私に平伏した。
「某、若の側近の
勢いよく言って平伏したかと思うと、また号泣しだしてまたぎょっとする。
そんな私を見て、久保様が困ったように久規殿を小突いた。
「久規…お前、まさか飲んだのか?」
「申し訳ありませぬ!水と思って飲ませたら本物の酒でございました!」
さらに転がるようにとんでもない速さでやってきたのは、平山忠続殿だった。
「…嘘だろ?間違うか?」
それに、皆が笑う。
「…こやつ、底なしの下戸なのです。飲ませると非常に面倒。相すみませぬ、御方様。間違えた私が責任を持ってすぐに放りだします故」
御免、と忠続殿は笑みひとつ見せずに久規殿の襟元を掴んで引きずっていく。
それをぽかんと見ていると、久保様がバツが悪そうに言った。
「…すみません。騒がしい家臣共で」
「いえ。とんでもない…!」
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