第9話
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6月中旬の今日は昨日と打って変わって梅雨らしく雨が降っている。
昨日は本当に何事もなく部屋に戻ることができた。
助けてくれたあの人にもらった桜は、なんだか捨てられなくて部屋に1本差にして飾っている。
…どなた、だったのでしょうか。
考えるけど分からないからため息を付く。
そういえば
久保殿は父上の弟である島津義弘の嫡男。
共に秀吉に謁見することになっている、と聞いている。
従兄弟になるが、会ったのは小さい子供の頃だから顔なんてまるで覚えていない。
だけど同じ状況にいる者同士仲良くやれる人であればいいなと。
それだけ願う。
そんなことを考えていると、部屋の外から小姓の声が聞こえた。
「亀寿殿、刻限にございます。謁見の間に参られませ」
いよいよだわ、と思って立ち上がり打掛を翻す。
「すぐに参ります」
昨日は揺らいでしまったけど、今日は強く在らねば。
島津宗家の娘として。
そう強く心に誓って部屋を後にした。
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