デート(ヘリクルージング)
水族館を出た後は近くのショッピングセンターに寄り、何店舗か覗き映画も見た。途中でカフェに入り休憩も挟んだ。
「結局、この後どこに行くんですか」
あんみつを食べながら尋ねる。翔はわらび餅を頼んでいた。
「内緒。驚かせたいから。でもそろそろ行こっか」
行き先も分からないまま連れて行かれる。18時少し前に目的地に着き、空はだいぶ暗くなっていた。そして目にしたのは。
「え、ヘリコプター」
驚く私をよそに翔はスタッフと何か話していた。
「唯、先に乗って」
「はい」
ヘリクルージングなんて初めてで言い表せない高揚感が胸を満たす。
高度がグングン上がっていって東京の街並みがオモチャみたいに小さく見える。
空からでも目立つ東京タワー。ライトが宝石みたいに光輝く沢山ビル。
絶景。そんな言葉が思い浮かぶ。
しばらく夜の街並みを楽しんでいると下の方から光の線が上がってきた。それはある程度の高さまで行くとパッと花開いた。
「花火」
かつてない程の近距離で眺める。あまりの光景に目を奪われる。
「いいでしょ。上から見る花火も」
「はい。翔は今日、花火大会があること知ってたんですね」
「うん。小規模なものみたいだけどね」
私の席のからだと花火はよく見える。翔がなぜ、私に先に乗らせたのか分かった。さり気ない優しさに嬉しくなる。
「何度か乗った経験があるんですか」
「うん。家族の誕生日とかちょっとした記念日にね」
「今日は記念日でもないのに」
「唯との初デートは特別なものにしたくて」
ヘリコプターを手配してくれなくとも翔と一緒なら特別な思い出になっただろう。
けれどこれほどまでに印象深い体験をさせてくれたことには感謝しかない。
「今日のこと絶対忘れないです」
「そんなに重く受け止めなくてもまた来ようよ」
お金持ちだな。一体いくらかかるのか聞くのも怖い。けれど翔と何処かに出かける約束ができることが嬉しくて私は頷いた。
御曹司は頑固な部下を甘やかしたい しづ @sidu_ten
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。御曹司は頑固な部下を甘やかしたいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます