第10話 新たなスタート
直樹が高校を離れた次の日、朝の静けさの中、彼は早くも新しい一歩を踏み出していた。医者になる夢を現実にするため、彼はこれから予備校に通うことを決めていた。日常が一変した朝、制服ではなく、私服を身にまとった彼は、少しだけ違和感を覚えた。
「今日から本当にスタートだ…。」
一人、自分に言い聞かせながら、直樹は歩き出した。予備校の門をくぐると、そこには同じ夢を持つ多くの学生が集まっていた。彼はその熱気に圧倒されつつも、強い意志を胸に抱いた。
新しい環境は、予想以上に刺激的だった。授業のスピードは高校とは全く違い、より専門的な知識が次々と叩き込まれる。直樹はその波に飲み込まれそうになりながらも、必死に食らいついていった。
「これが、医者を目指す道か…。」
授業が終わると、彼は自習室へと向かった。時間を無駄にせず、少しでも多くの知識を吸収しようとする姿勢は、他の予備校生たちと同じだった。直樹はいつしか、その緊張感に馴染んでいった。
数週間が経ち、直樹は自分なりのリズムを見つけ始めた。朝から夜遅くまで勉強に励む日々は決して楽ではなかったが、彼は決して歩みを止めることはなかった。
しかし、ある日、予備校での授業が終わり、ふと校舎の外に出ると、夕焼けに染まった空を見上げた瞬間、彼は高校生活での思い出が頭をよぎった。陽菜や拓海、そしてクラスメイトたちとの日々が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇った。
「みんな、どうしてるかな…。」
そう思うと、突然の寂しさが胸を締め付けた。高校生活を捨てる覚悟で選んだ道ではあるが、彼にとって、あの日常は大切なものだったことに気づいた。
その夜、直樹は久しぶりに陽菜と拓海にメッセージを送った。
「最近、どうしてる?」
すぐに陽菜から返信が来た。
「直樹!元気?私たちも頑張ってるよ!でも、直樹はもっと大変なんじゃない?」
直樹は少し笑って返事を打った。
「まあな。でも、みんなに会いたくなる時もあるよ。」
その後、拓海からも返信があり、三人のやりとりは自然と弾んだ。短い時間ではあったが、彼はそのやり取りで心が少しだけ軽くなった。
次の日、予備校での講義に臨んだ直樹は、再び自分の目標を再確認する。医者になるためには、今の勉強が不可欠だ。そして、陽菜や拓海、クラスメイトたちの応援が彼の背中を押してくれていることを実感した。
その日の授業が終わり、帰り道を歩いていると、予備校で知り合った一人の男子生徒、佐藤が声をかけてきた。
「直樹、最近調子いいみたいだな。よかったら、少し勉強のこと相談に乗ってくれないか?」
佐藤は、直樹と同じく医者を目指す学生で、最近一緒に話す機会が増えていた。直樹は頷いて、彼の質問に丁寧に答え始めた。
「もちろん、いいよ。俺もまだまだだけど、助け合って頑張ろう。」
その後も佐藤との会話が続き、直樹は自分だけではなく、他の人と一緒に頑張ることの大切さを再確認した。
夜、自分の部屋で一人、勉強に集中していると、ふと医者になって誰かを救う未来の姿が頭に浮かんだ。彼はその光景を強く心に刻み込んだ。
「俺は絶対、医者になるんだ。」
直樹は強く拳を握りしめ、再び勉強に戻った。彼の新たな旅はまだ始まったばかりだったが、その道の先には確かに彼の望む未来が待っている。
【外科医だった俺、過労死したら高校生になった編】 しまざき @ShimaShyn
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