遭難

ぜんざる

遭難

ロシアの北、北極付近にシャーベリンスク島という無人島がある。そこに、ロシア海軍兵士の3人が嵐で流れ着いた。

セルゲイ一等兵、アンドレイ一等兵、アレクセイ伍長の3人である。

「ったく、めんどくせえ事になったなーなあアンドレイ?」

荒っぽいアレクセイは石を海にぶん投げて聞いた。

「まぁ、そうですね。伍長どの」

アンドレイはダルそうに答えた。

セルゲイは、現実を受け入れきれてないのかボケーとしている。

船は氷河へ流れていき、泳いでたどり着けそうにもない。

食料に関しても心許ない状態だ。

「まぁ想定しての装備品はあるから、しばらくは大丈夫そうだが・・」

アレクセイは、ポケットからカンパンを取り出して口に放り込んだ。

「無線は生きてますか?」

セルゲイが話し始めた。

「俺のは死んでる」

アレクセイが答えた。

「ですよね。僕のもずぶ濡れで使えそうにないです」

セルゲイは、少しがっかりしている。

「あ、俺の動きました!」

アンドレイがいきなり叫んだ。

「マジか!良かった」

セルゲイも驚いている。

「じゃあ連絡する」

アレクセイは、無線を受け取ると、話し始めた。

「こちら、北方艦隊旗艦オルラーンの乗組員、アレクセイ班。救助を要請する。食料が尽きそうで、非常に危険な状態である」

「了解。72時間後に救助隊が到着する。そこから移動するな」

少し、失望しているように見えた。

「72時間か。食料は持ちそうか?」

アンドレイは、首を横に振った。

「そうだよな」

「もっと早くこないものか・・・」

アレクセイは、考え込んだ。

「私が、もっと早く来れないか聞いてみます」

無線機を受け取ると、話し始める。

「私は、統一ロシアに忠誠を誓った忠愛なる党員です。どうか早く来ていただけないでしょうか?」

「了解だ。48時間後に到着する。待っていてくれ」

アンドレイは、がっかりした顔で、2人をみた。

「クソ、統一ロシアに忠誠を誓ってるんだぞ!」

「アンドレイ、僕に考えがあるんだ」

そう言って、セルゲイは、針葉樹林のなかへ入って行った。

1時間ほどでヘリが到着し、陸軍らしき軍服を着た男達がゾロゾロと出てきた。

「ロシア陸軍大佐ドルトビー・ゴルバチョフだ。諸君を救助に来た」

セルゲイは、ニっと笑い、2人に顔を向けた。

「それは良かった。では、さっそく、基地の方へ。僕は、アルハンゲリスクの・・」

ドルトビーは、手を横に振ると、ピストルを取り出した。

「その前に、聞かせてもらおう。クレムリンに爆弾を仕掛けたと言ったのは誰だ?」

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遭難 ぜんざる @zanzeru

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