チャーハンつくるよ!

秋犬

チャーハンつくるよ!

 さっきチャーハンを作った。


 具材を切るのがめんどうなので、卵と「炒飯の素」だけで作るチャーハンを作った。最近はいろんなメーカーの「炒飯の素」が売っているので、いろいろ食べ比べが出来ていい。


 普段はちゃんと野菜とか肉を入れたチャーハンを作るけど、本当にさっきは面倒だったので卵だけチャーハンになってしまった。


 卵を割って溶いて、油を敷いたフライパンでジャーっとやる。チャーハンは作っている時、音がいい。ご飯も入れてジャーっとやって、素を入れて完成。「炒飯の素」で作るチャーハンはこのインスタント感もなかなかいい。


 そして、久しぶりに「炒飯の素」だけのチャーハンを作って何かを思い出す。


 なんだ、これは?

 何か大切なことを忘れているような……?


 思い出した。


 初めてこの「卵と炒飯の素だけチャーハン」を食べた時のことだ。そんなの覚えているのかと言えば、はっきり覚えてるんですよ。この「卵だけチャーハン」は大事な食べ物なんでさあ。


 思い返せば随分と昔、親元離れて一人暮らしを始めた時のこと。自炊と言っても何をすればいいのかわからず、最初はラーメンとかスーパーの惣菜とか買ってた。実家で覚えた料理のレシピは役に立たなかった。自炊は知識ではない。自分の機嫌を自分でとる、自分自身との対話なのだ。


 さて、実家でチャーハンと言えば母の作る「チャーハン」だった。玉ねぎとハムを塩コショウでサッと炒め、卵とご飯で仕上げる家庭ながらの味。そこに「炒飯の素」はなかった。CMで「炒飯の素♪」と眺めてはいたが、我が家には「炒飯の素」はなかった。特にこだわりがあったわけではないが、ただ使っていなかっただけだった。今では実家でもガーリックライスの素とか普通に使ってる。


 そしてスーパーで、自炊スキルゼロが「炒飯の素」を手に取った。


「……これ、今なら作れるんじゃね?」


 自炊スキルゼロは家に帰って、「炒飯の素」でチャーハンを作ることにした。ご飯と油、そして卵があればいいと言う。作り方の通りに溶き卵をフライパンに入れ、ご飯を入れる。ジャーっとやって、素を入れる。


 え、こんなに簡単にできるの!?


 自炊スキルゼロは「炒飯の素」も使ったことがなかったので驚いた。目の前に出てきたのは確かにCMでよく見るチャーハンのように見えた。


「いただきます」


 100均で買った皿に盛り付けたチャーハンは、うまかった。香ばしくて、パラパラしていた。


 なんだこれ、うめえ。


 自炊スキルゼロは驚いた。世の中にはこんなにうめえもんがあったんだと、しみじみ驚いた。そして自分の世界の狭さを思い知り、この世界を愛していこうと思った。「炒飯の素」のチャーハン食っただけなのに。


 その後小麦粉に虫を繁殖させるなどの失敗を経て、自炊スキルゼロは料理を学んでいった。今では味噌ラーメンの上に炒めたひき肉と野菜を乗せるようになったけれど、世の中初めてというのは何でも感動するらしい。たかが「炒飯の素」のチャーハンを食べたというだけの話なのに。


 チャーハンは、人の数だけある。


 だからラーメン屋にいくと、どうしてもチャーハンも食べたくなる。ラーメン屋のチャーハンうまいじゃん。いや、中華料理屋のチャーハンがいいんだ。あのチャーハンについてくるスープ、うまくない? ︎︎店によっては杏仁豆腐とかついてくるのいいよね、タピオカついてきたお店のチャーハン、おいしかったなあ……。


 特にオチはないのですが、各自チャーハンについて思いを巡らせてもらうと幸いです。ここからチャーハン作って応援しています。ビバチャーハン。またね。

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