君だけを
土曜日はいつも昼ごろまで寝てしまうが命がかかっていると流石に起きた。
今日は昨日みたいに隣にゆいがいるなんてことはなく、リビングに向かうと母親は先に起きてご飯を作ってくれたらしい。
食べ始めて連絡だけしておこうと思い、出かけてくるとだけ言っておいた。
今日は昨日のうちに約束をした友達と買い物に行くことになっている。
こういうときにすぐ乗ってきてくれる友達がいることに感謝した。
少しおしゃれをして待ち合わせ場所に向かう。
先に待っていた友達に声をかけて友達の買うものを探しに行く。
服とかアクセサリーを見てると時間が溶けていく。
友達がお腹へったというので学生の財布に優しいファミレスに行くことになった。
空いていたためすぐに入って食べ始める。
すると一人の高校生が入店した。
友達のほうが入ってきた高校生が誰か気づき声を掛ける。
「あ、りんねもいたんだ。一緒に食べてもいい?」
会いたくなかった人の声が聞こえてきた。
『いいよ。今日は何してたの?』
「映画見に行ってきたんだ〜。」
友達がその映画を見ていたらしく二人で話し始める。
今うまく笑えてるだろうか。
たまに話に入ったり相槌をして、ご飯を食べ終わった。
友達とはそこで解散して、二人で帰る。
ゆいは眠いらしくてあんまり話さない。
流石に一人で返すのは気が引けて、ゆいの家まで送っていった。
帰ろうとすると腕を掴まれて
「…明日予定ある?無いなら付き合って。」
前のゆいに言われた優しくしてと言う言葉を思い出したけど
『明日は家族と予定があって』
断ってしまった。
「わかった。また学校で。」
…ゆいの気が変わったと思っていた。
私の学校では週に一回職員会議があって部活は自由参加になる。
ゆいは基本的に出ている。
ただ今日は一緒に帰りたいというのでもう何日も殺されていなくて安心していた私は帰ることにした。帰り道の途中で
「私の部屋でゲームしない?」
少しは戸惑ったけどずっと勝てていないゲームがあって乗ることにした。
『いいよ。ゆいにあのゲームで勝ちたいんだよね。』
「まだ負けないかな。」
ゆいの家について中に入ると静かだった。まだ親が帰ってきていないんだろう。
ゆいがゲームの準備をしてくれて、やり始めた。
…時間を忘れてやっていて気づけば外は赤く染まっていた。
『もうこんな時間なんだね。ってあれ?この時間もうゆいの親帰ってきてるよね。』
「今日は遅いらしくて、もうちょっとやっていかない?」
まだ一回も勝てていないのが悔しくて、母親にゆいの家で遊んでると送ってゲームに集中した。
しばらくやっていると眠くなってきて、目が開かなくなってきた。
「眠くなってきた?おやすみ。」
目が覚めるとベットに寝ていた。正確に言うとゆいのベットだったが。
時間を確認しようとポケットのスマホに手を伸ばそうとすると動かない。
手を確認すると壁から伸びている鎖に手首がつながっていた。
『ゆいどこにいるの?』
部屋にはいなくて助けを求めることしか出来ない私はゆいを呼んでみる。
ガチャッと音を立ててドアが開いた。
「おはよ、よく寝てたね。もう何も考えなくていいよ、全部私がやってあげるから。」
『なんでこんなことしたの』
「りんねが悪いんだよ。私がりんねを好きなことも知らずに他の人と話したり、遊んだりしててさ。私だけのものにしたかったんだ。」
うん、もうダメなんだな…。
『ゆい、私の事好きなんだよね?』
「好きだよ。大好き。だから早く私を望んで?」
なら安心かな。
私はそのまましばらくゆいと暮らした。
警察が来ることも無く母親から連絡が来ることもなかった。
私が逃げ出さないとわかったゆいは鎖を外してくれて家の中なら自由に動けるようになった。
キッチンには近寄らせてくれないけど。
『ゆい〜!そろそろシャンプー切れそうだよ。』
「わかった。ありがと、今度買ってくるね。」
…そろそろこの生活も終わりにしないとな。
『ゆい。こんなこともうやめない?』
「なんで?りんねは幸せでしょ?りんねのために私はやってるのに。」
『ううん。ゆいが自分のためにやってるんだよ。だからもう終わりにしよう。』
普段なら近寄らせてくれないキッチンに入る。
いつもゆいが料理してるのを見ているからすばやく包丁を取り出す。
流石に自分でやるのは怖いな…。
『ゆい、またね。次はこんなことになる前に止めてみせるから。』
あぁ、視界が遠のいていく。
「…やっと私のものになってくれるんだ。嬉しいなぁ。」
また戻ってきた。とりあえず学校の支度をして、外に出る。
前と変わらないゆいが飛びついてきて、安心した。
『今日なんか予定ある?』
「何もないよーなんなら誘おうと思ってたし。」
あ、そういえば覚悟は決まったけどどこでいうか決めてなかったな。
私の家でいいか。
『今日私の家で遊ばない?』
「そうそう!りんねの家で遊びたかったんだよね。やった~。」
学校が終わり、私の家に向かう。
「ん〜疲れたぁ。りんね〜甘やかして。」
『仕方ないなぁ、ほらおいで。』
って甘やかしてる場合じゃなかったな。
「あっ、りんね!言いたいことあるんだった。えーとあのね好きなの付き合ってくれないかな?」
『私も言おうと思ってた。私で良ければお願いします。』
「えっほんと!やった~これでずっとりんねといられる!」
こんな話も随分前の話だ。今のゆいはもう狂っている。
いやもうずっと前から付き合ったときから狂っているんだ。
「おはよ。今日もお散歩行く?…そっかいかないのね。じゃあ今日も二人だけで過ごそうね?ずっと二人だけ。」
あなたを 緋月 羚 @Akatuki_rei
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