あなたを

緋月 羚

幼馴染

私の名前は三石みいしりんねと言う。つい最近高校生になったばかりだ。

生まれたときからの幼馴染がいて、高校も同じところに通っている

学校に行く準備をして家の前で待つ。

「りんね〜おはよっ」走って抱きついてきたこの子が幼馴染のゆいだ。

勢いよく抱きつかれた私は少しよろめく。

『もー危ないからもうちょっとゆっくりきなってば』

軽く怒るとしょぼくれた顔をしたがすぐ笑って

「遅刻しちゃうぞ〜」

と走り出していってしまった。

私は文化部でゆいは運動部だ。追いつくのも諦めて余裕ができる程度に

歩いて学校に行く。

学校につくとゆいがむすくれた顔で待っていた

「むぅ…遅いよぉ。一人で待ってるの寂しいんだよ。」

うん、今日も私の幼馴染はかわいい。少し機嫌の悪いゆいの頭を撫でてやると

すぐに笑顔になる。

撫でるのをやめると少ししょぼくれた顔をしたが大人しくゆいのクラスまで着いてきてくれ、その頃には機嫌も直っていた。

ゆいは四組で私は一組。来た道を戻っていく。…「全然気づいてくれないし、好きにもなってくれない。私はこんなに好きなのに…」

姿も見えなくなっていたりんねには聞こえていなかった。


四時間の授業を終え、友達と話していると

「りんね〜お昼食べよっ!」

と呼ばれたので友達にごめんとだけ言い、弁当を持って軽く走っていく。

『おまたせ。行こっか。』

二人で食べるときはお気に入りの場所へ行く。裏庭に出て少し入り組んだ道を歩いていくとぽつんと一つだけベンチが置いてある。

二人で座り、弁当を食べ始める。お互いに食べさせたりしているとすぐに食べ終わって喋り始めた。

「今日さ、部活休みだからりんねの家で久しぶりに遊びたいなって。いい?」

『いいよっ!』

最近は部活が忙しそうで誘いにくかったから嬉しくなって少し声が大きくなってしまった。

「珍しくすっごい元気じゃん」

ちょっと恥ずかしくなってそっぽを向いたまま話して昼が終わるのを待っていた。


全部の授業が終わり帰ろうとすると

「りんね、帰ろ〜」

少し急いでゆいの場所まで走っていき、歩き始める。

外に出るとすっと手を繋がれ、家までそのまま帰った。


家につくと私の部屋でゴロゴロし始める。お茶を飲んでいると急に

「りんねって好きな人いないの?」

と聞かれ、お茶を吹き出しそうになった。

『っ…急にそんなこと聞かないでよ。』

「それでいないの?」

答えにくくて少し黙ってしまう

『…んーいないって言っとく。』

ゆいが少し悲しいような顔をした。

「そっか…。」

ゆいの手が背中に回り、手に取ったものが光ったような気がした。

『ゆい…?』

ゆいがつぶやくように話し始める

「私はずっと好きなのに…全然気づいてくれないし、ずっと待ってるのに。」

するとゆいが近づいてきて

「もういいよ。死んで。」



『はぁっ…なんでこんな夢見てるんだろう…』

答えは見つからずに家を出る時間になる。

会うのが怖くなっていたが学校にいかないなんて事はできなかった。

外に出ると夢と同じようにゆいが突っ込んでくる。

「りんね〜ってあれ避けられた。」

『夢で突っ込んできたから来るのかなぁって』

このまま夢の通り行くなら私は…嫌な想像を振り払い、次の出来事を思い出す。

「遅刻しちゃうぞ〜」

と言って走っていった。

夢と同じで怖くなり、ゆいと二人になったり会ったりしないように気をつけた。

部活が休みだと言われたが予定があると断ってしまった。

帰りも他の人と帰って、家につくと無理やり予定を作った。

友達の誕生日プレゼントを買いに近くのショピングセンターに買いに行く。

色々見て回っていると

「あれっ?りんねじゃん。なにしてるの?」

笑顔が怖くてそれでも返事をしようとする。

『えっと友達の誕プレを買いに来たんだよ。時間かかるから付き合わせるのも悪いと思って』

「ふーん、時間かかってもいいからさ着いてっていい?」

夢を理由には断りにくくていいと答えた。

なかなかいいものが見つからず買って外に出ると暗くなっていた。


私の家につくと母親が出迎えてくれて、ゆいも夕飯を食べるになった。

食べながら話していると

「あ、私明日も部活休みだし土曜日だから泊まってってもいいですか?」

母親が許可を出してゆいが泊まる事になってしまった。


夢とは少し違っているがゆいとふたりきりだ。

動機が激しくて自分が何を話しているかもわからなくなっていた。

「…ね、りんね!あ、やっと気づいた。呼んでも返事ないし。大丈夫?」

ゆいが肩を触ってきてつい弾いてしまう。

『あえっ、ごめんびっくりしちゃって…。』

少しの間沈黙が続きゆいが口を開いた。

「今日、私のこと避けてるよね。私なにかしちゃったかな。」

悲しい顔をしたゆいのことをもう悲しませたくなくて夢のことを話す。

「それで避けてたんだ。久しぶりにりんねとゆっくりできると思ったのに…。

それでさ、好きな人ってなんて答えたの?」

また殺されたらとも考えたが答えた。

『いないって答えたよ。』

するとゆいが笑い始めた。

「っは、ねぇりんねそれ夢じゃないよ。私は知らないけどね。今日聞いて私じゃないかいないって答えたら殺そうと思ってたから。」

ゆいがスクールバックの中を探してナイフを出す。

『もういやだ…やめてよ。ゆい…』

「りんねが悪いんだよ。次もまたあるんでしょ?優しくしてあげてよ?寂しかったんだからさ。」


目が覚めるとベットにいて腹部を刺された感覚が残っている。

日付も変わっていない。

会いたくなくて、殺されたくなくて学校を休むことにした。

やることがなくなって暇になると眠くなった。

目を瞑ると意識は暗闇に落ちていった。


少し涼しくなってきた夕方に目を覚ました。

…ゆいが隣に寝ている。

『え、なんでゆいがいるの…?』

動けなくなっていると

「…んぇ、あぁ起きたの。おはよう。」

無意識に距離を作っていてゆいがそれを縮めてくる。

「なんで休んだの?」

会いたくなかったからなんて言えない。

『行きたくなかっただけ。』

嘘が下手にもほどがある。

「しかたないなぁ。聞かないでおくし、元気そうだから帰るね。」

本当に帰った。殺されずに済んだ。でもいずれ殺されそうだ。

ラッキーなことに今日は金曜日。明日はどこか出かけて会わないようにしないと。

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あなたを 緋月 羚 @Akatuki_rei

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