第14話

「なずなさん、元気?」

料亭(樹砲亭)で絣がうな重を

食べながら誠也にたずねた。

「ああ、しかしうまそうに喰うな」

「だってこんな高級なもの誠也さんの奢りでしか

食べられないもの」

絣がそう話してウナギに舌鼓を打った。

「これは俺の奢りなのか?」

「当たり前でしょう。先輩なんだから」

かすりはもうすっかりその気だった。

「一つ五千六百円か。ふーっ、請求書がこわいな」

「ねっ、なずなさんどうしてるの?」

「えっ、相変わらずだよ」

「康太君は?」

「あいかわらず」

「なんだ、それじゃあ答えになっていません」

「じゃあ、なんて答えればいいんだよ」

誠也が返答を求めた。

「もっと誠意のある答えを返して」

「誠意のある答えって?

「なずなさんと結婚して後悔してる。わたしと

結婚すればよかったとか」

「ないない、なんでオマエみたいな気の強い

女と」

「たてまえだけでもそういってほしかったの。ねえ

いってみて」

「いえん、絶対にいえん」

「もう」


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