第8話 フォール海岸
「ありがとうお兄ちゃん。それにお姉ちゃんたちも!」
娘が俺たちに手を振ってきたので振り返す。親子は途中にあった小さな街に降りて行った。あの後に4人も参加してきて、カーラが魔法を披露したり、ステラが自分の尻尾を触らせたらしていた。
まぁ、これでやることもなくなったし、あとは寝てたらつくだろ。そう思っているとリズが声をかけてきた。
「優しいんだね」
「いや、別にあれくらいは普通だろ。親の方も困ってたしな」
てか、なんで普通に話しかけてくるのだろうか? ギルドにいたこいつらは話しかけてくんなみたいなオーラが出てたし、実際話しかけた男たちを冷たくあしらっていた。
やっぱり昨日の人物が俺だと疑っているのだろうか? まぁ、証拠がないから断定はできないだろうけどな。
(それに、もし仮にバレてあそこでの生活がしんどくなったらまたどっかの国か、街で暮らせば良いか)
今までの知り合いとか離れるのは流石に嫌だから、あんまりこういう手は使いたくないけどなぁ。まぁ、どうするかはまたその時に考えれば良いか。
そんなことを考えている間に目的地に到着した。
「お、着いたな」
そんなことをしてる間にフォール海岸についた。まだ少し距離はあるがそれでも磯の匂いが鼻を突き抜けて来る。
「よし、なら早速クエストに取り掛かるか」
俺は海に近づく。依頼の内容は海のモンスターの間引きだ。本来なら海の中に頑丈な網を入れてあるので一定の場所からはモンスターは入れないが、一部が破けていたせいでモンスターが入って来たらしい。
要はそいつらを討伐してくれってことだ。俺は海に向かって手を向ける。
『ボルガ』
海の中を光が走る。しばらくすると大小様々な魚が浮かんでくる。これでモンスターたちも一網打尽だ。まぁ、普通の魚たちも結構浮かんでいるけど、モンスターを討伐してくれたらなんでも良いって書いてたし、まぁいっか。
「よし、クエスト終了!」
俺はクエストの報告をする為に村に向かおうとする。すると後ろから声をかけられた。
「グレンさん、でしたよね? あなたも魔法が使えるんですか?」
「一応な。あんたも魔法が使えるのか?」
「えぇ、それなりには」
どうやらこいつも魔法が使えるらしい。まぁ、杖とか持ってるし当然と言えば当然か。
「えっと、カーラ、で合ってるよな? あんたもクエストあるんだろ? 行かなくて良いのか?」
「私たちのクエストはステラとアリスが行ってくれています。今回のクエストはあの2人が適していますから」
「なるほどなぁ。しっかり役割分担してるのか」
パーティを組んでるからこそだな。そういうことはパーティを組んでいないとできないから羨ましいな。
「頑張れよ。俺は報告したらもう帰るから」
「……はい。お気をつけて」
俺は最後にカーラに手を振って村に向かった。
「もうこれで安全に漁ができます。安心して大丈夫ですよ」
「おぉ、ありがとうございます」
「いえいえ。では、俺はこれで」
俺は報告を終えたので村長の家を出た。よし、金も貰ったし、後は帰るだけだな。と、言っても帰りの馬車はなさそうだし、歩きだな。
俺は街を目指して歩いて行こうとすると、リズが海岸の岩場に座ってる。そしてなぜか村の若そうな男たちに言い寄られていた。
普通の女性ならば助けるが生憎あいつはそこらへんの男に負けるほど弱くはない。なので心配はいらない。むしろ、男達の心配をした方が良いのかもしれないな。
(あ、目が合った)
一応、会釈をしておくか。まぁ、俺が心配する必要もないし、俺は早く帰るか。
「ちょっと待って」
「………」
もはや、こいつの口癖なのかと思うくらいこの言葉を聞いた。気がつくとリズは俺の近くにいた。
「どうしたんだ? 俺は今から帰るところなんだけど」
「いや、気になったから呼び止めただけ」
「用事はないのかよ。まぁ、別に良いけどさ」
けれど、こいつらのことは若干苦手だ。他の男の人たちと同じような対応されたら俺は泣く。
「ま、お前らもクエスト頑張れよ。じゃあ、俺は帰ろぐっ!」
俺は背中を向けて立ち去ろうとすると服を引っ張られた。リズの身長は小柄なので服を引っ張られるとより首がしまってしまい、変な声が出てしまった。
「い、いきなり何するんだ?」
「あ、ごめん。でも、時間あるなら私と話さない?」
「……はい?」
俺はいきなりの提案に頭がフリーズした。
普通に暮らす俺は正体がバレたくない クククランダ @kukukuranda
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