第2話 再会
「あのね、会長 一体どういうつもりであっちの生徒と接触したの?」
俺は今ギャルに怒られている。ベンチに座ってキョトンとした俺を仁王立ちで怒るギャル。側から見ればカツアゲと言わんばかりに周囲の子供を連れた親子連れに見られている。恥ずかしい・・
「あの、まずはごめん。そしてさっきは助けてくれてありがとう」
まずは無難な会話から入る作戦だ。いきなり記憶がないって言ったら多分殴られる。その種類のギャルだ
「ふざけてる?」
あ、これダメなやつだ。めっちゃキレられてる。顔を見ると・・・怒ってるが可愛いな。そして若干着崩した制服から見える胸元に一瞬無意識に目線が行く。これは男の本能だ。一瞬意識がそれかけたが現状を整理しよう。俺はキレられてる。割と
「実は記憶を無くして草むらで目覚めて、そこから誰か知ってる人は居ないか2時間近く歩いて・・・さっきの高校生に話しかけたんだ」
「ふざけてる?」
正直に話す作戦に移行したが、逆に怒らせてしまった。ゴミを見る目でこちらを見ている。
とりあえず俺はここに至る経緯を一生懸命信じてもらえるように詳細に話した。
「確かに喋り方ってか雰囲気もいつもと違うし、嘘ついてるようには見えない。第一あんたがそんな面白くない嘘つき続けるわけないしメリットないもんね。スマホも財布も持ってないのは不思議だけど」
一生懸命話した甲斐あってやっと信じてもらえたようだ。安堵しているとギャルはちょっと待っててと言い放ち、近くの自動販売機で炭酸飲料を2本買ってきてそのうちの1本を俺に渡してきた。
自分でもあまり意識していなかったがどうやら相当喉が乾いてたらしく気が付けば500mlのペットボトルは空だった。
「それで、色々聞きたいこととか知りたい事とかあるだろうけど、何から話せばいい?」
気付いたら隣に座ってたギャルがさっきまでとは違う笑顔で話しかけてきた。
「まずは、君の名前を聞いていいかな?」
脳内でギャルと呼称するのは流石に失礼だと思い問いかける。
「私は奈月ナズナ。記憶の無くなる前のあんたからは下の名前で呼ばれてたから、ナズナって呼んでほしい」
金髪のギャル改めナズナはそう言い放ちこっちを見て微笑んだ。
「ちなみにあんたの名前は柊木勇。ウチと同じ山間高校生徒会であんたはそこの生徒会長。私は副会長をしてる」
「ちなみにさっきジュースを投げつけてきた奴らは?」
ここまでの一番の疑問を彼女にぶつけた。
「明日学校に来れば分かると思うけど、ウチの高校の隣には明美台高校ってのがあって、向こうの方は伝統あるここ明美台、いや鳥取で一番賢いの。そして色々あって後から隣に出来たウチは元来向こうとは仲が悪いの。そしてそのトップであるあんたが急に話しかけるもんだから向こうの生徒は怯えてたって訳」
要は規模の大きいご近所トラブルらしい。いや、トラブルってか戦争では?
「で、明日は向こうの生徒会長の誕生日らしくて、伝統的にウチの生徒会が向こうに乗り込んで誕生日会の妨害をするんだけど、仕返ししない?」
ナズナは悪魔のような顔で笑いながら問いかけてきた。伝統的に誕生日会の妨害って・・・逆に仲良いのでは?そして記憶が無くなってそれどころでは無いのに他校に乗り込むとか・・
「行く!」
あれ、気が付いたら俺は二つ返事で明日の仕返しに参加する事にしていた。今日の件が腹立ったと言うか、他校に乗り込むというワードにどうやら引かれたらしい。男の子だもん
「了解!じゃあ明日は朝40分ぐらい早く来てね。乗り込むのは放課後だけど学校の事とか生徒会の事とか教え込むから」
つい一時間前までは頼れる人すら居なかったのに、過去の俺を知っている彼女の存在は有り難すぎる。
ふと夕方を知らせる音楽が俺たちの会話を遮る。
「あーもうこんな時間か 因みにアンタ自分の家分かるの?」
「いや、分かりません!」
「まあでしょうね。送って行くから」
そう言って俺たちは公園を後にした。
ナズナは俺の家を知っているという事は記憶喪失前はそれなりに仲が良かったのだろうか。
「なあ、俺とナズナって、記憶喪失前はどんな関係だったんだ?」
帰り道のナズナの道沿いの美味しい店紹介の他愛の無い話の中で俺はふと呟いた。
「そのうち分かるよ」
それまで楽しそうに喋ってたナズナは急にワントーン落とした口調でそう言った。
そのうち分かる。別に今話してくれても良いのにと考えている中で俺の中で一つの説明が浮かんだ。
付き合ってた説
記憶喪失前、俺とナズナは付き合ってたが急に記憶喪失になり俺は以前の俺じゃなくなりナズナはまた一から俺を好きになろうとしているのではないか
これなら辻褄が合う。確かに側は一緒でも中身が変わってしまったら付き合ってるとは言い難いからな。うん。
そんな馬鹿げたことを考えているうちに俺の家に着いたらしい。ごく普通の一軒家だ。ガレージには車も止まっている。
「ありがとうナズナ。正直色々あって混乱しているけど何とかなりそうだしめっちゃ頼りにしてる」
「私もまだ状況が飲み込めてないけど、私が最大限サポートする!明日は朝7時10分に迎えに来るから寝坊厳禁ね」
「あとなんかあったらLI・・メッセージ送ってね!」
そう言い放ち彼女は帰って行った。因みに記憶は無くなったがLINEと言うメッセージアプリがある事は覚えていた。本当で記憶だけが無くなったみたいだ。
初めて帰る自分の家。もし間違ってたら、他人扱いされたと言う不安を胸に俺は扉を開けた。
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