毒の矢

 矢が迫り来る…俺は前にいる窪田と三月に向かって走り出して押し倒す。

 グサっ背中に鋭い痛みが襲う。

「どうしたの中瀬くん急に?」

 二人は急な出来事に驚くが俺の背中に刺さる矢を見て焦り出す。

「透くん血がっ」

「大丈夫だ三月これくらい」

 心配する三月を安心させるために大丈夫と言うがこれは痩せ我慢…ズキズキしていてかなり痛い…

 アルベルトは、そんな俺たちの様子に気づきこちらを振り返る。矢が刺さっている俺を見てすぐに剣を抜き周りを警戒する。


 辺りを見渡し矢が来た方向を警戒しながらアルベルトは敵の襲撃を伝えるために笛を吹こうとする…

 ガサっそれを狙っていたかのように木の上からフードで顔を隠した人間がアルベルトに剣を振り下ろす。

 キンッと剣と剣がぶつかる鋭い剣の連撃をアルベルトは軽く受け流す。


 俺たちはその攻防を眺める。


「俺は王国の騎士だぞ…その程度の奇襲で殺せると思うなよ!!」

 フードの人間に剣を向け威嚇する

 後ろから迫る黒い影に気づかず…

「アルベルトさん!!後ろッ!!」

 アルベルトは俺の言葉に急いで後ろを向くが時はすでに遅く黒い影はすぐ側に来ておりグサっと背中を突き刺す。

 剣を引き抜かれるとアルベルトはその場でよろめく。

 フードの人間は、すぐさまアルベルトに接近して首を切り飛ばした…

 俺たちはその光景を呆然見ていた。目の前で人が殺せるところを見た俺たちは恐怖に心を支配された。

 目の前にいる明確な死がこっちを向き近づいてくるのが分かる…ズキッ矢が刺さった背中の痛み。その痛みで俺の中から少しだけ恐怖が消える…

「逃げるぞ二人とも!!」

 二人の背中を叩きそう言う。

 その言葉に二人も恐怖から抜け出す。


 フードの奴らが向かってきている俺たちからは6mぐらい離れていてる。

「風切」

 三月が魔法を唱えると風は奴らの足元に当たり土埃が舞う。

 それと同時に俺たちは走り出す。

 一瞬だが足が止まり俺たちは距離を離すことができた。

 だがそれでも一瞬だけ離れていた距離も徐々に詰めらていくのが分かる。

 このままだと追いつかれる…俺は先頭を走る二人を見る。二人は俺が追いつけないぐらい足が速いが今は俺に合わせて走っている。

 俺は足手纏い…どんどん息が辛くなるのを感じるきっと俺を刺した矢は毒がついてたんだろう。

 俺は動きを止める。

「どうしたの中瀬くん急がないと追いつかれるよ」

「二手に別れよう…俺は毒のせいでどんどん足が遅くなっている俺は二人の足手纏いだ…」

「足手纏いなんかじゃないよ」

「すまないけどコレは事実だ…でも別に俺は死のうとしてるわけじゃない…二人の足ならテントまで全力で走って5分ぐらいで着くはず」

「つまり君は僕達が助けを求めて騎士が来るまで耐えるつもりってこと?」

「そうだ…」

「無茶だ!!」

「無茶でもやるしかない…時間がない奴らが迫って来てる…大丈夫心配するな俺は鬼ごっこは得意だからな」


「わかった二手に別れよう…でも絶対に死なないでね」

「ああ…絶対死なない…」

 窪田と約束をする。

 三月は抱きつき心配そうに顔を覗かせる。

 そんな三月の頭を撫で離れる。

 そして俺は二人と別方向に走り出して二人から離れた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブレイブロード バリバリさん @baribarisann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ