やっぱ、その新人賞は辞退しますっ!

乙輔

第1部

第1章: 戸増の失踪

授賞式と戸増の欠席


華やかな照明に包まれたホテルのバンケットホール。ヤング沢村賞の授賞式会場は、文学界の重鎮たちや新進気鋭の作家たち、そして出版社の関係者たちで賑わっていた。シャンパングラスを手に、洗練された会話が飛び交う中、吉田は落ち着かない様子で会場の入り口に目を向けていた。


吉田は中堅出版社の編集者で、今回のヤング沢村賞受賞者である戸増の担当だった。戸増は斬新な文体と独特の世界観で注目を集める新人作家で、今回の受賞作「因果律の保護」は、デビュー作にして大きな話題を呼んでいた。


しかし、授賞式開始の時間が刻一刻と近づいているにもかかわらず、主役であるはずの戸増の姿はどこにも見当たらなかった。


「おかしいな…」吉田は、ポケットから携帯電話を取り出した。戸増からの連絡はない。数時間前に何度か電話をかけたが、いずれも留守番電話に切り替わるだけだった。


会場の雰囲気が少しずつ変わっていくのを感じながら、吉田は戸増の作品「因果律の保護」のことを思い出していた。それは、現実と虚構が複雑に絡み合い、読者を混乱させるような奇妙な物語だった。主人公が自分の書いた小説の中に迷い込み、現実と創作の境界が曖昧になっていく様子が描かれていた。


吉田はその作品を読んだとき、戸増の精神状態を垣間見たような気がしていた。天才的な才能と狂気の境界を彷徨うような、そんな印象を受けたのだ。


「まさか…」吉田は不吉な予感に襲われた。戸増が現実でも自分の小説のような行動を取り始めたのではないか、そんな考えが頭をよぎった。


授賞式の開始時間が迫る中、司会者が壇上に立った。


「大変申し上げにくいのですが、本日の受賞者である戸増様がまだお見えになっておりません」


司会者の言葉に、会場にざわめきが広がった。


「現在、戸増様のご到着を待っているところですが、少々お時間をいただくことになりそうです。皆様にはご不便をおかけいたしますが、しばらくお待ちいただけますでしょうか」


吉田は周囲の反応を窺いながら、冷や汗を流していた。出版社の代表として、彼は何か対応をしなければならないのかもしれない。しかし、戸増の行方がわからない以上、どうすることもできなかった。


会場の雰囲気は徐々に変化していった。当初の華やかさは影を潜め、戸増の不在を巡る様々な憶測が飛び交い始めた。


「聞いたか?あの戸増が来ないらしいぞ」

「まさか、ドタキャン?」

「いや、もしかしたら事故か何かじゃないのか」

「いや、あの作家らしいパフォーマンスかもしれないぞ。話題作りってやつさ」


様々な声が耳に入ってくる。吉田は頭を抱えたくなった。戸増の奇行は以前から噂になっていたが、まさか授賞式を欠席するとは思ってもみなかった。


そして、吉田の脳裏に「因果律の保護」の一節が浮かんだ。


「現実と虚構の境界は、私たちが思っているよりもずっと曖昧なものかもしれない。そして、その境界を越えてしまったとき、私たちはどこにいるのだろうか」


吉田は戸増がその境界を越えてしまったのではないかという不安に駆られた。彼は会場を見回し、何か手がかりはないかと必死に探した。しかし、そこにあるのは混乱と困惑の表情を浮かべた人々の姿だけだった。


授賞式は予定通りに進行することができず、主催者側は困惑の色を隠せなかった。吉田は出版社の上司から厳しい視線を向けられているのを感じたが、今は戸増の身を案じることで精一杯だった。


彼は静かに決意を固めた。この場を離れ、戸増の行方を追うことにしたのだ。



シーン2: 戸増の行方を追う吉田


授賞式の混乱から逃れるように会場を後にした吉田は、足早に戸増のマンションへと向かった。


吉田が到着したとき、すでに日は傾きかけていた。薄暗い階段を上り、戸増の部屋の前に立つ。ドアをノックする音が、妙に空々しく響く。


「戸増さん、いますか? 吉田です」


返事はない。もう一度ノックをしたが、やはり応答はなかった。


吉田は深呼吸をして、おそるおそるドアノブに手をかけた。鍵はかかっていなかった。


「失礼します」


部屋に足を踏み入れた瞬間、吉田は息を呑んだ。そこには、まるで台風が通り過ぎたかのような光景が広がっていた。


書きかけの原稿が床一面に散らばり、本棚から引っ張り出された本が山積みになっている。壁には意味不明な言葉や図形が走り書きされ、あちこちに手紙や封筒が投げ出されていた。


「なんてことだ…」


吉田は茫然と立ち尽くした。この惨状は、戸増の精神状態を如実に物語っているようだった。


慎重に足を踏み入れながら、吉田は部屋を観察した。机の上には、「因果律の保護」の続編らしき原稿が置かれていた。しかし、それは支離滅裂な文章の羅列で、意味を成していないように見えた。


そして、その原稿の下から、一通の封筒が覗いていた。吉田はそれを手に取った。


封筒には宛名も切手も貼られていない。ただ、表には「未送信」と赤字で書かれていた。


吉田は躊躇したが、状況を把握するためには中身を確認する必要があると判断し、封を切った。


中から出てきた手紙を読み進めるうちに、吉田の顔色が変わっていった。


「現実と虚構の境界は、もはや意味をなさない。私はその先へ行く。この手紙は決して送られることはない。なぜなら、それは現実を固定してしまうから」


文面は、現実の出来事と「因果律の保護」の物語が混ざり合ったような内容だった。日付や場所の記述は具体的なものもあれば、明らかにフィクションと思われるものもある。そして、それらが不思議なほど自然に繋がっていた。


吉田は戸増の狂気を感じ取った。彼は自身の創作世界に溺れ、現実との境界を失ってしまったのではないか。そう考えると、背筋が寒くなった。


部屋を更に調べていると、窓の外に奇妙な光景が目に入った。路地の突き当たりに、一つの郵便ポストが佇んでいる。しかし、そのポストは明らかに周囲の景観と不釣り合いだった。


吉田は急いで部屋を出て、そのポストに近づいた。


ポストは古びており、表面には無数の傷や錆びが刻まれていた。しかし、よく見ると、それらの傷は何かの文字や記号のようにも見える。まるで、誰かがメッセージを刻もうとしたかのようだ。


投函口は不自然に開いており、中を覗き込むと、暗闇の中に何かがうごめいているような錯覚を覚えた。


吉田は恐る恐る手を伸ばし、ポストの中に手を入れた。すると、何通もの封筒が触れた。全て宛名のない、未送信の手紙だった。


一通を取り出してみると、それは先ほど部屋で見つけた手紙と同じような内容だった。現実と創作が混ざり合い、どこからどこまでが本当の出来事なのか判別できない。


吉田は戸増の存在を強く感じた。


ポストから手を離そうとした瞬間、吉田は奇妙な感覚に襲われた。まるで、ポストが彼を引き留めようとしているかのような…。


慌てて手を引っ込め、吉田は後ずさりした。冷や汗が背中を伝う。


戸増の行方は依然として不明だが、このポストと未送信の手紙が、何か重要な意味を持っていることは間違いない。吉田はそう確信した。


しかし、この異常な状況をどう扱えばいいのか。吉田は途方に暮れた。


そのとき、背後から声がした。


「やっぱりここにいたか、吉田」


振り向くと、そこには同僚の宮村の姿があった。




シーン3: 未送信の手紙と戸増の痕跡


「宮村さん…」吉田は驚きを隠せない様子で同僚を見つめた。宮村は冷静な表情で周囲を見回している。


「随分と変わったポストだな」宮村が言った。「これが戸増の失踪に関係しているとでも?」


吉田は躊躇いがちに頷いた。「ええ、そう思います。中に未送信の手紙がたくさん…」


「未送信の手紙?」宮村は眉をひそめた。「見せてもらおうか」


吉田はポストから取り出した手紙を宮村に渡した。宮村はそれを受け取り、慎重に開封した。


手紙を読み進める宮村の表情が、徐々に変化していく。最初は懐疑的だった顔が、次第に困惑の色を帯びていった。


「なんだこれは…」宮村が呟いた。


手紙の内容は、現実の出来事と「因果律の保護」の物語が不可解に絡み合っていた。日付や場所の記述は具体的なものもあれば、明らかにフィクションと思われるものもある。そして何より奇妙なのは、それらが違和感なく繋がっていることだった。


「7月15日、東京駅前。雨が降り始めた。人々は傘を差し、足早に歩いていく。私はその中に、小説の登場人物たちを見た。彼らは現実の人々に紛れ、私に何かを伝えようとしているようだった」


「8月3日、存在しない街。建物が溶け、道路が歪む。時計の針が逆回転を始める。因果律が乱れ、過去と未来が交錯する。この街で、私は自分自身と出会った」


「9月21日、ヤング沢村賞授賞式。私は姿を消す。それが物語を進めるための選択だった。現実に留まることは、創造性を殺すことに等しい」


宮村は顔を上げ、吉田を見た。「これは…戸増の手によるものなのか?」


吉田は頷いた。「間違いありません。筆跡も内容も、戸増さんそのものです」


「だが、これは狂気の沙汰だぞ」宮村が言った。「現実と創作の区別がついていない。まるで…」


「まるで戸増さんが自分の創作世界に飲み込まれてしまったかのようです」吉田が言葉を継いだ。


宮村は再び手紙に目を落とした。「これは送られない手紙」という文字が、赤く書かれていた。


「なぜ彼はこんな手紙を書いたんだ?」宮村が問いかけた。「そして、なぜそれを送らずにここに置いていった?」


吉田は深く息を吐いた。「戸増さんにとって、これは創作の一部なんだと思います。現実を固定せず、可能性を開いたままにしておくための…」


「馬鹿げている」宮村が遮った。「それじゃあまるで…」


「まるで現実そのものを創作しようとしているかのようですね」吉田が言葉を継いだ。


二人は沈黙した。ポストの存在が、急に重々しく感じられた。


「吉田」宮村が静かに言った。「君は戸増のことをよく知っているんだろう?彼の精神状態は普段からこんな風だったのか?」


吉田は首を振った。「いいえ、こんなことは…。確かに、戸増さんは少し変わった人でした。現実と創作の境界があいまいな人だとは思っていましたが、まさかここまでとは…」


「因果律の保護」の一節が、吉田の脳裏に浮かんだ。


「現実と虚構の境界を越えたとき、我々は新たな世界を創造する。それは恐ろしいほど自由な世界であり、同時に、途方もない孤独に満ちた世界でもある」


吉田は戸増がその世界に踏み込んでしまったのではないかという不安に駆られた。そして同時に、自分もその世界に引き寄せられているような奇妙な感覚を覚えた。


「宮村さん」吉田が言った。「私たち、このまま戸増さんを追いかけるべきでしょうか?それとも…」


宮村は厳しい表情で吉田を見た。「冷静になれ、吉田。我々はあくまで編集者だ。作家の面倒を見るのは仕事だが、こんな狂気には付き合えない」


「でも、このままでは戸増さんが…」


「戸増は自分で選んだんだ」宮村が言い切った。「現実から逃避することを。我々にできるのは、せいぜい警察に届け出ることくらいだ」


吉田は反論しようとしたが、言葉が出てこなかった。宮村の言うことももっともだ。しかし、このまま戸増を見捨てていいのだろうか?


ポストが、まるで吉田の心の迷いを映すかのように、不気味に佇んでいた。


そのとき、風にあおられて、ポストの中から一枚の紙片が舞い落ちた。


吉田が拾い上げると、そこには意味深な言葉が記されていた。


「現実は、選ぶ者にのみ姿を現す」


吉田と宮村は顔を見合わせた。これは戸増からのメッセージなのか、それとも単なる偶然なのか。


答えは、風と共に消えていった。



シーン4: 宮村の視点と対立


宮村は、目の前で繰り広げられる奇妙な状況に辟易としていた。彼は長年、出版業界で働いてきたベテラン編集者だ。数多くの作家と仕事をしてきたが、戸増ほど厄介な作家は初めてだった。


「吉田、もういい加減にしろ」宮村は厳しい口調で言った。「戸増の失踪劇に付き合っている場合じゃない。我々には仕事がある」


吉田は困惑した表情で宮村を見た。「でも、宮村さん。このポストと手紙が、戸増さんの行方を示唆しているんです。このまま放っておくわけにはいきません」


宮村は深いため息をついた。「お前は戸増の作品に深入りしすぎだ。現実と創作の区別がつかなくなっているのは、もしかしたらお前の方かもしれんぞ」


その言葉に、吉田は顔を赤らめた。「そんなことはありません。私はただ、戸増さんの安否を確認したいだけです」


「安否だと?」宮村は冷笑した。「あいつは自分の意思で失踪したんだ。これは単なるパフォーマンスさ。話題作りのための自作自演だろう」


吉田は必死に反論した。「違います!このポストと手紙には、何か重要な意味があるはずです。戸増さんは私たちに何かを伝えようとしているんです」


宮村は呆れたように首を振った。「吉田、冷静になれ。これは全て戸増の創作の一部なんだ。我々編集者は、そういった作家の気まぐれに振り回されてはいけない」


「でも、このポストは…」


「ただの古いポストだ」宮村は吉田の言葉を遮った。「戸増が何かの理由でここに置いただけさ。それ以上の意味なんてない」


吉田は言葉につまった。確かに、宮村の言うことは論理的だ。しかし、彼の心の奥底では、これが単なる偶然や作家のパフォーマンス以上の何かだと感じていた。


宮村は続けた。「我々がすべきことは、警察に届け出ることだ。そして、出版社に状況を報告し、今後の対応を考えることだ」


「でも、それじゃあ戸増さんの真意が…」


「真意?」宮村は苦笑した。「作家の真意なんて、作品の中にしかないんだよ。現実の行動に真意を求めるのは間違いだ」


吉田は黙り込んだ。宮村の言葉には一理あった。しかし、彼にはどうしても納得できない何かがあった。


宮村は吉田の肩に手を置いた。「聞け、吉田。お前はまだ若い。才能のある作家を見出し、その作品に惚れ込むのはいいことだ。だが、それと現実は別物だ。戸増の小説世界に入り込みすぎるな」


吉田は俯いたまま答えた。「わかりました…」


しかし、その声には迷いが感じられた。


宮村はそれ以上何も言わず、その場を立ち去ろうとした。しかし、数歩歩いたところで立ち止まり、振り返った。


「吉田、最後に一つ忠告しておく」


吉田が顔を上げると、宮村は真剣な表情で言った。


「作家の狂気に付き合いすぎると、自分を見失うぞ。戸増の世界に引きずり込まれないよう気をつけろ」


そう言い残すと、宮村は闇の中へと消えていった。


吉田は一人、奇妙なポストの前に立ち尽くした。宮村の言葉が頭の中で反響する。しかし同時に、ポストから漂う不思議な存在感が、彼の心を捉えて離さない。


風が吹き、ポストが軋むような音を立てた。まるで、吉田に何かを訴えかけているかのように。


吉田は決意を固めた。たとえ宮村に反対されようと、戸増の意図を探り、彼の行方を追うことを。それが正しい選択なのか、それとも狂気への一歩なのか、もはやわからない。


しかし、この謎を解き明かさなければ、吉田の中で何かが永遠に解決しないような気がしたのだ。


彼は再びポストに手を伸ばした。そこには、まだ読んでいない手紙が幾つも残されているはずだった。




シーン5: 戸増の作品とのリンク


吉田は、宮村が去った後も長い間ポストの前に立ち尽くしていた。夜の闇が深まり、街灯の光が微かにポストを照らしている。彼は深呼吸をし、再び手を伸ばしてポストから手紙を取り出した。


手元には「因果律の保護」の原稿のコピーがあった。吉田は手紙と原稿を見比べながら、そこに隠された意味を探ろうとした。


まず目に留まったのは、手紙に記された日付だった。


「9月15日、時計が13時を指す」


「因果律の保護」の中にも、同じような記述があったはずだ。原稿をめくると、そこには確かにこう書かれていた。


「9月15日、主人公は13時という存在しない時間に迷い込む。そこでは、過去と未来が交錯し、現実の法則が通用しない」


吉田は息を呑んだ。単なる偶然だろうか。それとも、戸増は意図的に現実と創作をリンクさせているのだろうか。


さらに手紙を読み進めると、そこには意味深な一節があった。


「エントロピーは増大し、世界は混沌へと向かう。しかし、その中にこそ新たな秩序の芽生えがある」


この言葉は、「因果律の保護」の中心的なテーマと酷似していた。吉田は原稿を繰り、該当箇所を探し当てた。


「エントロピーの増大は、既存の秩序を崩壊させる。しかし、それは同時に新たな可能性を生み出す。我々は混沌の中から、新しい現実を紡ぎ出すことができるのだ」


吉田の頭の中で、様々な考えが渦を巻いた。戸増は自身の小説の世界を現実に持ち込もうとしているのではないか。そして、この未送信の手紙や奇妙なポストは、その試みの一部なのではないか。


彼は急いで他の手紙も確認した。そこには「因果律の保護」の登場人物の名前や、小説内の出来事が散りばめられていた。しかし、それらは現実の出来事と絶妙に絡み合い、どこからが創作で、どこまでが現実なのか、判別がつかなくなっていた。


吉田は戸増の意図を理解しようと必死だった。彼は現実と創作の境界を曖昧にすることで、何を伝えようとしているのか。そして、なぜ失踪という行動を選んだのか。


ふと、吉田は手紙の中に繰り返し現れる言葉に気がついた。


「境界を越える」


これは「因果律の保護」の中でも重要なキーワードだった。主人公が現実と創作の境界を越え、新たな世界を見出すという物語の核心部分を表す言葉だ。


吉田は、戸増が自らの創作を現実化しようとしているのではないかという考えに至った。彼は失踪することで、現実の束縛から逃れ、自身の創造した世界に入り込もうとしているのかもしれない。


そして、このポストはその境界を象徴しているのではないか。現実と創作の狭間に存在する、異界への入り口。


吉田はポストに手を触れた。その冷たい感触が、現実と非現実の境界を表しているかのようだった。


彼は決意を固めた。戸増の意図を完全に理解するためには、自分もまたこの境界を越える必要があるのではないか。それは危険な賭けかもしれない。しかし、それ以外に戸増の真意を知る方法はないように思えた。


吉田は最後にもう一度、手紙と原稿を見比べた。そこには確かに、現実と創作が交錯する新たな世界が広がっていた。


彼は深く息を吐き、ポストに向かって呟いた。


「戸増さん、あなたの世界に、私も足を踏み入れます」


その瞬間、風が吹き、ポストが軋むような音を立てた。まるで、吉田の決意を受け入れたかのように。


彼は覚悟を決めて、ポストに手を伸ばした。そこには、まだ読んでいない手紙が残されているはずだった。その手紙が、戸増の世界への扉を開くのかもしれない。


吉田の指先が封筒に触れた瞬間、世界が歪むような感覚に襲われた。


彼は、未知の領域に足を踏み入れようとしていた。

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