第5話

ボーとする意識の中、誰かの話し声が聴こえた。そして、明るい光が眼に届き、私は重いまぶたを少しずつ開けた。すると、知らない天井が見え、さっき耳にした声が、自分の右隣から聞こえ、声のする方へ目を向けた。そこには、一人の女性が涙を流し、それを慰めるように、彼女を抱きしめる男性の二人がいた。

『?』鈴の頭はまだ目覚めていない様子。誰だっけこの人達…。ここどこだっけ?なんで私、知らないベッドで寝てるの?

ベッドで横たわりながら、いろいろと考え始める鈴。だが、やっぱりまだ頭が覚めない。そして、そばにいる二人へ状況を尋ねようとベッドから体を起こすと、私に気づいたのか、女性がはっとした様子で「鈴さん!目を覚まされたんですね!良かった…。」

私を見るなり、ホッとしたのか彼女はまた涙した。

涙を流す彼女の隣にいた男性が、続いて私に声をかける。

「鈴!僕をまた、助けてくれてありがとう。おかげで呪いから解放されたよ。」

彼の発する言葉、状況を見て、やっと現状を理解した鈴。

「あなたトキさん!?目が覚めたんだね!良かった!」

そう言って安堵しつつ、自分の現状を再確認する鈴。あれ?なんで私、ベッドで寝てるんだ?確か…、トキさんから指輪を外して…、

「もしかして、私!トキさんから指輪を外してぶっ倒れてた!?」

鈴の突拍子もない言動を耳にした二人は、拍子抜けな表情を浮かべ、トキが話しを切り出す。

「さん付けしなくていいよ鈴。そうだよ。君は僕からリングを外した時、魔神に魔力を一気に吸収されて、しばらく眠っていたんだ。君をベッドへ横にして、目を覚ますまで、リンからコレまでの話を聞いていたところなんだ。」

「そうだったんだ…。倒れた後、介抱してくれてありがとう。」

ぶっ倒れた後、ベットへ横にしてくれた感謝を伝え終えると、改めて「それで…、その呪いの指輪は、あれからどうなったの?」辺りを伺うも指輪らしき物は見当たらず、気を失ってからの事が気になる鈴。

「リングは今、我ら主様の元にあるから、安心してくれ。今後、そのリングの管理もしてくださるそうだ。」

「そう。何とかなってるなら大丈夫だね!教えてくれてありがとう。トキも無事に目覚めた事だし、私に出来ることはもう無さそうだね。

リンさん!コレで任務完了?」

涙が収まりつつあるリンへ、続けて声をかける。

「そうですね。鈴さん!本当にありがとうございました!どうお礼をしたものか…。」

「いいよ、お礼なんて!こっちもぶっ倒れた後、助けてもらった身だし。でも、ちゃんと帰るまでは付き合ってよね!」

「ええ!しっかりと人間界へ送り届けます!」

そう言って、私はヘッドから起き上がり、リンは私のそばへやって来ると、魔法で、来る時に通った白い扉を準備してくれた。私は扉の前へ立ち、

「じゃ、帰ります!また会えるかは分からないけど、二人とも元気でね!」

そう言って、立ち去ろうとした。すると、

「鈴!僕からお礼を1つ。人間界へ帰ったら開けてくれ。」

そう言って、小さな可愛い小箱を私へ渡してきた。

「コレ可愛い箱だね。私好みだよ!ありがとう!」

お礼を言うと、トキはニカッと笑う。そして、目元を腫らしながらも、幸せそうな表情を浮かべるリンは、トキの側へ寄り添い、

「お気をつけて!」そう言って、二人は私へ手を降ってくれた。笑顔を返し、私も二人へ手を振りながら、「またね!」そう言葉を残し、扉をくぐり抜けた。


扉をくぐり抜けると、天界へ向かう前に居た場所へ戻ってきた。後ろを振り返ると、扉は光の粒となって消えていく。それを目にし、コレまでの出来事が、あっけないような感じに思えたが、

「そうだ!」機転がはやい鈴は、手にした小箱へ目を向け、トキから貰った小箱を開けてみる事にした。

『パカッ』っと蓋を開けると、箱の中には透明なガラス玉が1つ入っていた。そのガラス玉の中心に、何やら模様が見えた。それをよく見る為、ガラス玉を摘み、空に昇る月明かりへかざしてみた。

そして鈴は、ガラス玉の模様を目にすると、

「わー!!キレー!!」自然と、そう口にしていた。

目をキラキラさせ、それを眺める鈴は、月明かりに照らさせたガラス玉を、指先でコロコロと転がし、ガラス玉に入っている、1つの羽根を、まじまじと眺める。そしてその羽根は、月明かりを通して見ていると、羽が透明に透け、ガラス玉の中で光が弾けて、キラキラと輝いているように見えたのだ。

「わー!天使からの贈り物だ!素敵!」

そう言って。ここへ訪れた時のように、携帯を取り出し、月を背景にガラス玉を掲げ、カメラモードへ切り替え、『カシャ!』

シャッター音の後、撮れた写真をすぐさま見てみる鈴は、また目をキラキラとさせ、

「今季!一番いい写真が撮れたました!」

誰も居ない、夜の丘の公園中に、鈴の声が響き渡るも、その声を聴いた物は地上には居らず。また、両手を上げ、万歳し、目をキラキラさせて喜ぶ鈴を、目撃した者も地上にはいなかった。

しかし、その光景を違う世界から、魔道具を通して、無事帰還した鈴を見守る二人の天使だけは居たのだ。

そして鈴は、上げた手を下ろし、

「よし、帰るか!帰って温かい湯船に浸かって、眠くなるまでテレビを観て!明日の昼までいっぱい寝るぞ!!」

笑顔が、まだ残る表情を浮かべ、鈴は乗ってきたマイカーへ乗り込み、公園を後にした。

こうして、仕事終わりから、日を跨ぐまでの短い時間。鈴は、天使に出会い、天界へ行き、天使から贈り物を貰う。

そんな、鈴の1日が、こうして終わった。

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