東雲舞、鮮やかに暗号を解く 三題噺/鍵/卍/白日夢

雨宮 徹

東雲舞、鮮やかに暗号を解く 三題噺/鍵/卍/白日夢

 ある日のことだった。友人の佐竹から謎の紙を渡されたのは。彼曰く「宝物の隠し場所を示している」とのことだった。



 僕はその紙を眺めるが、ちっとも謎が解けない。紙はまるで寺の地図記号である卍のような模様で、所々に音符が書かれている。音楽に関係あるのは間違いない。こりゃあ、クラス一のミステリーオタク、東雲しののめに頼るしかないだろう。いつも頼ってばかりだから、「たまには自分で考えなさい!」なんて言われそうだが。



 噂をすればなんとやら。東雲が図書室から戻ってきた。江戸川乱歩の『白昼夢』を持って。そういえば、白日夢との違いはなんだろうか。また今度調べるとするか。



「なあ、東雲。お願いがあるんだけど……」



「なにかしら」



 僕が簡潔に説明すると、東雲は紙と睨めっこして「うーん」と唸っている。もしかして、東雲が解けないなんてことがあるのか?



「真の言う通り、音楽に関係があるのは間違いないわ。あとはこの模様がヒントね。この模様は紗綾形さやがたって言うのよ」



「サヤガタ?」



「そう。卍が変形して、連続して繋がっているでしょう? だから、『不断長久』つまり、家の繁栄なんかを祈るのよ」



「なるほど。でも、それがどう関係するんだ?」



「紗綾形は英語で『key flet』と言うの」と東雲。



「鍵とフレット? フレットが鍵という意味なのは分かるけど……」



「真、ここで音楽記号が重要になってくるわ」



「どうやってさ」



「音楽でフレットと言えば、弦楽器の一部分の名前よ」



「つまり……」



「そう、音楽室の弦楽器を見てみることね」



「よし、早速音楽室に行ってくるよ!」



 そんな僕の背に向かって、東雲がこう叫んだ。「ギターなんかの弦楽器を探すのよ」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

東雲舞、鮮やかに暗号を解く 三題噺/鍵/卍/白日夢 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画