第4話
明る日、わたしは王城に呼ばれた。理由は考えずともわかっている。
「アナベル・ヴォルテール男爵夫人のことだが」
やはりな。
「きみが殺したのではないかと嫌疑がかかっておる」
「な! あれは人間の仕業では!」
「わかっている」
大臣はゆっくり目を開けていう。
「吸血鬼の仕業だろう」
「それなら!」
「犯人を見つけたら不問にする」
「そんな……」
「彼に捜査協力の依頼をしている」
大臣の指す先にはブラッド伯爵がいた。
「よろしく。ヴォルテール男爵」
「よろしくお願いします。ブラッド伯爵」
「捕まえられなかった場合はそれなりの刑に処されることになるから覚えておくように」
こうして私たちは協力して犯人を逮捕しなければいけないことになった。
わたしは一旦屋敷に帰ることにした。連日いろんなことが起こりすぎて少しも気が休まらない。ブラッド伯爵に別れを告げ、馬車を駆った。
自室にて。メイドの入れてくれた紅茶を飲みながらも気は休まらなかった。先ほどふってかかってきた問題のためだ。
妻とメイドを殺した犯人、しかもおそらく吸血鬼!を人間であるわたしがどうこうできるものなのか?きっとこの話を出したのは公爵家に違いない。娘を殺された恨みをわたしの死を持って晴らそうという魂胆だろう。
そんなものに乗ってやる必要がどこにある。わたしはいつも通り執務をしていればいいのだ。いや、刑に処されるのはごめんだ。なんだってこんな目に……
コンコン
思考が堂々巡りを始めた頃窓から音がした。
振り返ると窓枠の外にブラッド伯爵が乗っている。
「うわあ!」
「はは、失礼。お招きいただいても?」
「次は玄関から来るように! どうぞ」
「ありがとう」
数秒の沈黙が訪れる。わたしは兼ねてからの疑問をぶつけることにした。
「どうしてわたしに構うんだ?」
吸血鬼は驚いたような顔をして
「死んで欲しくないからだ」
と答えた。
「そうか」
シンプルな答えだったが窮地に立たされているわたしにはなんとも心強い言葉だった。この男とならできるかもしれない。
「吸血鬼とはどのような種族なんだ」
「聞いてくれるか!」
男は楽しそうに自らのこと、そして同朋のことを語った。吸血鬼は今は吸血せずとも生きていけること。吸血鬼は愛する人に吸血衝動が湧くこと。吸血によって人を殺すことはないこと。人間と共存していきたいと考えていること。
「わたしは吸血鬼と人間との橋渡しになりたいんだ」
伯爵の目は輝いていた。
「だからこそ今回の事件は解決したい。協力してくれるか」
本来ならわたしがいうべきセリフを取られてしまった。ここまで言われてはいそうですかと引き下がれはしない。
「もちろん」
わたしたちは犯人逮捕に動くことにした。
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