第二忍務:忍びたる者、裏の裏を読むべし。

 炎慈は女子中学生の姿で火災となったアジトを警察に通報し、ホワイトナイツを名乗るテロリスト達は警察病院に放り込まれた。

 炎慈も"そのテロリストに捕まり、アジトの火災で逃げていた女子中学生"を装い、その実、そのテロリストたちから他の潜伏先やグループの内情などの情報を聞き出す為、同じ警察病院に入院していた。

「ふっ、ふっ、ふっ、敢えて重症を装って正解だったぜ…わ! 他の病院に送られる暇はなかったと思わせるのも造作も無いわよ。さてさて、奴らの場所は?」

「あら、萌葱もえぎ火菜ひなさん。どうしましたか、そんな所に居て?」

「げっ…あっ、ああ、看護師さん…」

 偽名の名を呼ばれて振り返ると、そこには看護師が居た。

「すっ、すみません、病室にじっとするのが退屈で。」

「いけませんよ、火菜さん。不用意に動いては…」

 看護師はナース服の懐から苦無を取り出し、炎慈が扮した女子高生の首筋に迫る。

 彼もとい彼女は眼前擦れ擦れに躱し、病人服の懐から苦無を取り出し、看護師と対峙し、構える。

「不用意に動いては狙われる確率が上がる。忍びたる者、平時でも油断するな。そう教えたはずだ、。」

「俺の名前!? ったく、親父かよ、脅かせやがって…」

 炎慈は看護師の正体を知り、苦無を下げ、臨戦の構えを解いた直後、看護師は油断した彼もとい彼女を一瞬で間合いを詰め、脚を蹴り崩し、倒れた所で、喉元に苦無を突き付ける。

っつぅ!? 何すんだよ!? 二十代目服部半蔵正輝まさき親父殿!?」

「馬鹿者が、相手の変装を解く前に臨戦を解いてどうする! もし、私ではなかったら、死に直結するぞ!」

「そっか、畜生! 親父に恥をみせてしまったか…ところで、なんで、親父が俺の所に?」

「貴様のことだ。忍びの手柄の為に誘い込んで一網打尽にしたテロリスト達から情報を得る為に病院に忍び込むことも造作もないからな。」

 看護師は悔し顔を上げる炎慈を立ち上がらせ、テロリスト達のいる病室へと案内した。

「たくっ、親父に見破られるなんて…いつ、心を読んだんだよ。」

「心ではない。を読んだんだ。人の心を読むことは心眼の術以外不可能だが、相手の行動理念を読めば、大体から全てまで理解できる。起きた事柄・事象に対し、何の狙いを定め、何故起こしたのかを考えろ。主観の客観を会得しろ。」

「つまり、どういう意味だ?」

「こういう意味だ。」

 看護師は病室を開けると、その中を覗いた炎慈は驚く。

「たっ、助けてくれぇ!? 俺は誰だ!? 誰なんだ!?」

「ここ何処だよ!? 俺は会社に行って…どの会社だ? 俺は無職…だっけ?」

「ぎゃはははは、両親の顔がぐるぐる変わるよぉ、兄弟が姉妹になったよぉ、あひゃ、あひゃひゃひゃひゃ!」

 病床に眠っていたはずのテロリスト達は泣き喚き、笑い叫び、目の焦点や言動がぐちゃぐちゃになり、支離滅裂な行動を取っていた。

 髪の毛をぐしゃぐしゃと乱し、蹲りながら怯え、ジタバタと手足を暴れさせた。

「なっ、何なんだよこれ? こいつら、こんなに馬鹿だったっけ?」

「薬物中毒、幻覚を見せる麻薬で一般人をテロリストに扮させたのだ。」

「はぁ、じゃ、俺はまさか…!?」

「お前がテロリストを格好良く撃退し、情報を抜き出すという物語を黒幕が与えたにすぎん。」

「騙されたのか、俺が!? 一体何で!?」

「それはお前が一番知ってるんじゃないのか?」

 慌てふためく炎慈は無理に落ち着かせ、頭を真っ白にしてから考え込んだ。

 そして、出た答えが。

「公忍試験…」

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異界史忍び大戦 @kandoukei

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