KILL&RUN

最悪な贈り物

第1話 KILL&RUN プロローグ

バァァァン!!!!!

夜の中に銃声が響いた。

月の欠けた夜。

午前1時32分。


その男は、白いスーツを身に纏い、頭には帽子を被る。


死神やら、天使やら、はたまた神の使いやら悪魔の使いやら。


様々な呼び名で言われていた男は、殺し屋だった。


その名は…


「待てぇ!!!!このガキが!!!!!」


 (くそ!!!なんで、俺がこんな目に!!!!)


 男は逃げる。

何から逃げているのか。


それは、悪名高い組織、傀儡教と言われる宗教の集団。


ここ起眞市には、ありとあらゆる犯罪者や殺戮者、能力者が蔓延る。


男はただの一般人だ。

だが、しかし傀儡教の連中に追われる。


男の名前はカントウ。


本業は殺し屋だ。


「くっそ!!!!俺は依頼されただけだってのに!!!!」


殺し屋とはとても難しい仕事なもんで、少し前に依頼人として見ていた奴を、今度はターゲットとして見ないといけないということもしょっちゅうある。


この日もそうだった。


この日のターゲットは傀儡教の教祖、山路秀英ヤマジシュウエイと言う男。

そいつは少し前の依頼人でもあった男だった。


今回の依頼人はTという男。

なぜかインターネットの時代というのに、この男は蝋のスタンプを使って手紙を送りつけてきたのだ。


手紙の中には電脳特殊隊という組織がどうのこうのと言っていたが、そんなのはどうでもよかった。


傀儡教の場所は覚えていた。

その手紙をもらった夜。


早速、暗殺へと向かった。


それは、少し前の依頼の時、秀英が教会の中でパーティーというものをすると聞いたからだった。


今日しかないと思っていた。


しかし、なぜだか、カントウが予定していた、秀英暗殺計画…

それは既に教会に情報が漏れていた。


つまり、仕組まれていた可能性が高い。


(はぁ…はぁ…くそ!!!)

入り組んだ商店街の裏路地のゴミ箱の影にカントウは倒れ込む。

出血して血が滴る腕。


腕の中にはぶち込まれた弾丸。


カントウの体に痛みが響く。

(いってぇ……!!!!ハメやがって!!!!)


「おい!!!どこに行きやがった!!!!」


「探せ!!!!絶対に見つけるんだ!!!!」


路地に隠れていたカントウを通り過ぎて行く傀儡教のメンバー。


カントウの胸ポケットには、ハイポットC9。

この一丁だけだ。


雇用の殺し屋の給料なんてそれほど高いものではない。

なぜなら信頼されていないからだ。


もし敵に寝返っても大丈夫な用、武器代を削ぐ。

それが普通のやり方だ。


(はぁ…はぁ…)


「くっそ…任務失敗かよ…!!!!」


「やあ…お困り…みたいですね?」


暗い路地に響く声。

少し低いような高いような声。


「誰だ!!!!」


カントウは暗闇に向かってハイポットC9を突きつける。

左腕を動かすと、とても痛むが、それでも命には変えられない。


ハイポットC9も、命中制度は悪く、投げた方がマシなんて揶揄されるが、どれだけ命中制度が悪くても、10mほどの距離なら確実に当てられる。


だから突きつけるのだ。


「おお、銃火器ですか。まあ、この街にとっては至極ありふれたものですね。」


「誰だと聞いている!!!傀儡教の者か!?」


男は、暗闇からスナックの看板の光によって照らされる位まで、迫る。

黒色に近い緑色のスーツに手には白い手袋。

ニヤリと笑い、少しだけ若々しく見えるその男はニヤリと笑みを浮かべていた。


「私の名前はアシン。この街の管理者をしています。今日は君に折り入って話がしたくて存じ上げました。」


「は、話!?今の状況を分かってもいねーヤツの話なんて聞けるかよ!!!!」


「いや?今の状況なんていくらでも知っていますよ。」


すると、アシンと名乗る男は、胸ポケットから一冊の小さな本を取り出す。


本チェーンを通して胸ポケットに繋がっており、決して離れないようになっている。


「ふざけてるのか!!?良いのか?撃つぞ!!!!」


「君は撃てないでしょうね。」


「んな!?ふ、ふざけてんのか!?」


「カントウ。本名は無く、親に道端に捨てられ、そしてハマミという当時10歳ほどの女に育てられる。ハマミはお前が16の時に事故で死亡。その事故を起こした人間を暗殺したことにより、殺し屋の職業に就いた。好きな物はチョコレート。特にハマミの作るチョコレートが大好きだった。異世界パラレルワールドではRIのメンバー…ですか…なるほどなるほど…嫌いな物は薄汚い人間と、そんな人間に侵食されている自分。それで、今は傀儡教によって殺されかけている、瀕死の状態。」


「お、お前…その情報をどこから…!!」


「見えるんです。私には、見えるんですよ。」


「見えるだと…!?ふざけた事を言うな!!!」


「では、信じられなくても良いです。それよりも、私に一度、助けられてみませんか?」


「は、は!?ど、どういうことだ!!!」


「そのままの意味。深い意味なんてありませんよ。」


アシンほその右手を差し出す。


「この手を取れば貴方のその腕の傷。そしてこの状況。全てを一転させて差し上げましょう。」


「な、なんだと!?そ、そんなこと…お前に出来るわけ無いだろう!!!」


「果たして…そうでしょうか?」


アシンがそう言うと、アシンの後ろから傀儡教の奴らが迫ってくる。


「おい!!!居たぞ!!!!」


「おや?見つかってしまったようですよ?仕方ないですね。」


アシンが静かに呟くと、パチン!と指を鳴らした。

そして、その音が広がるとともに、傀儡教の者が心臓を抑え、その場に倒れ込む。


「ぐあっ!!!」


傀儡教の男が倒れると、アシンは胸ポケットの手帳のような本を開く。


「ふむ。柴田圭介…ここで死ぬ運命の脇役モブか…特に物語ストーリーに狂いは無い…」


「お、お前、今どうやって!!!」


「ん?ああ。私はこの町の管理者ハンドラーだから。脇役モブの命を奪う事など動作も無いのです。それで?この手を握りますか?握ってくれたら、この危機的状況を必ずや、奪回してあげましょう。」


(くっそ!!!こんな命を簡単に奪い去るような奴なんて…!!抗えるわけないじゃないか!!!)


カントウは唇を噛みしめると、

「くっそ!!!仕方ねぇ!!!!!」

と言いながら、その出された手を右手で握った。


すると、カントウの意識が遠のいていく。

「ぐあぁ…くっそ…だ、ましたのか…?」


「騙したも何も。は完了しました。さて、また一つ、物語が始まったようですね。」


「居たぞ!!!って!!!!柴田!!!!!!ああ!!!くそ!!!!」


男は、再び流れ込んでくる傀儡教の集団の向ける拳銃に怯みもせず、に呟く。

「さてと…ここからはどんな物語が展開されていくのか…」


「な、何を言っているんだ!!!!!撃てぇ!!!!!!」

一方向から放たれる銃弾の雨。


それをアシンは、パチンという指一つの音で、弾丸の雨


「な、何!?」


アシンは、本を開く。

「うーん…浜崎、尾形、紫影、諸橋、八実…全員に主役の未来は無い…か…」


「ご、ごちゃごちゃと!!!!!撃______」

次の言葉が出るよりも、アシンの指の音の方が早かった。


「残念です…今日は一人だけ…まあ、良いでしょう。」

アシンは本を閉じて、胸ポケットに入れる。


「ここからどんな物語ストーリーが生まれてくるか…」


眠ったままのカントウの死体のようなものは、やがて、砂のように崩れて行った…


「これで主役の数は、19人目。この主役はどんな物語を歩むのか…楽しみだとは思いませんか?読者諸君よ。」


管理人ハンドラーはそういうと、暗闇の中に消えて行った。

この世界起眞市の管理人《ハンドラー》のアシンはどこかに消えていった…


















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