第4章 実戦
♢
「では、1人ずつやっていきますわ。最初は———
名前を呼ばれると、
ついに始まった、俺たち
この〈
一つは通常の一般科目、そしてもう一つは
とはいっても、すぐに実戦開始———というわけにはいかない。先程の先生の話にもあったように、俺たちの力は非常に危険なものだ。何も考えずに、おいそれと使っていいものではない。
だからこそ、俺たちはこの一ヶ月間ひたすら座学で学んできた。今日はその集大成———自身の
「———それでは、
「はい!」
またもや元気の良い返事をした
では、そもそもデバイスとはなんなのかについてを話そう。
デバイスとは———俺たち
主な機能としては、確認されている〈異世界よりの来訪者〉の
そして他にも2つ、このデバイスを語るには欠かせない機能が存在する。
「......よし!先生、準備OKだぜ!!!」
「ええ。それでは———始めてくださいまし」
「おう!!」
と、そんな掛け声とともに、
「いくぜ—————リンク•アライズ!!!」
「出番だ———
〈ネオ•ワイヴァーン〉!!!!!!!」
次の瞬間———
「———ッ!!やった———のか?」
そこにいたのは本当に小型の、〈ハイ•ワイヴァーン〉を数倍小さくしたような翼竜が
〈ネオ•ワイヴァーン〉———
「〜〜〜〜〜〜いっっよっっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!やった!!!俺にもできたぜ!!!!!」
自身の成功を
———そう。これこそがデバイスの最重要機能の一つ、サーバント召喚の補助だ。
俺たちは
だからこその補助機能。俺たちは、一人前になるまでデバイスの力を常に借りなくてはいけない。故に、この機能は最重要機能になってくるのだ。
「よくできましたわ、
「ありがとうございます、先生!!———よかったな〜〈ネオ•ワイヴァーン〉〜〜」
こうして見ると他の動物たちと変わらない、まるで本当の生き物であるかのような仕草だ。
というのも実はこの〈ネオ•ワイヴァーン〉、人の手によって造られた人造サーバントなのである。
元々は、実験のためにワイヴァーン種の
入学時に
では、彼らは普段どこにいるのか?
———そう。デバイスの中である。
『〜〜〜〜〜♪♪♪』
彼らは普段デバイスの中で待機状態となっており、それを
当然だ。〈ネオ•ワイヴァーン〉のような小型のサーバントはともかく、人間の数倍のサイズのサーバントを
———これこそが、もう一つのデバイス最重要機能、サーバントの
「......とまぁ、こんな感じに、これから皆様にはサーバントの召喚をやって頂きますわ。多少コントロールが荒くなっても構いません。まずは召喚することを目標としてもらいますわ♪」
俺たちにとっては初めて、また
まさに、これからの道を左右する重要な局面に、俺たち見習い
♢
「はい。これにて、第1回実戦形式授業を終了致しますわ。皆様、お疲れ様でした♪」
そんな、イリーナ先生の締めの挨拶とともに、俺たちの間に
人生初の実戦形式授業。緊張の連続ではあったが、その後は特に何事もなく、なんとか無事に終了することができた。
......まぁ、俺は名前すら呼ばれず見学だったわけだから、緊張も何もなかったのだが。
「ふふっ、皆様、非常に良い出来でしたわ。無事全員成功できて何よりです。
......まぁ、もしこんな初歩的なこともできないなんてことことがあったとしたら、退学も視野に入れてもらうところでしたが———そうならならくて良かったですわ♪」
「「「「............」」」」
サラッととんでもないことを言ってのけるイリーナ先生。上品な笑顔で冗談っぽく言ってはいるが、内容が全くシャレになっていない。
普段優しくて好評のあるイリーナ先生だが、たまにこういうブラックな発言が飛び出したりすることもあったりする。......まぁ、そんなところも男子からの人気を集める要因なのだろうが。
「せんせー、ひなぴがまだやってませーん。名前呼ばれなくて、泣いちゃってまーす」
「ちょっ......!?
そんな中声を挙げたのは
じゃらじゃらと、腕につけたアクセサリーを鳴らしながら(ちなみに校則違反である)、
「確かにひなぴにとってはとっくにできることかもだけど、だからってやらせないのは違うっしょ。それにお手本見た方が、他のみんなも参考になるんじゃない?」
「いや......私、そんな
「ふむ........確かに、それもそうですわね。彼女はやるまでもないと思ってましたが———分かりましたわ。
「えっ!?」
ザワザワと、教室内に再びざわめきが起きる。
かたや、
俺に対しては当たり強いけど。
「うぅ............皆見てる。やっぱり緊張するよぉ........」
対する
果たして、こんな状態で召喚なんてできるのだろうか。なんだか心配になってくる。
「ひなぴ〜ふぁいと〜。大丈夫、大丈夫。いつも通りやればどうにかなるから〜」
じゃらじゃらとアクセサリーを鳴らしながら、気の抜けたようなエールを送る
「———大丈夫ですわ、
「......!」
イリーナ先生の言葉を受けた
さすがは〈
「そうだ......私は、〈サウンド•フォックス〉に会いたい。いつも通り、集中すれば大丈夫......」
「———リンク•アライズ。お願い、来て。
〈サウンド•フォックス〉!!」
彼女が大きく声を上げると、その場に1つの綺麗な魔法陣が現れる。
そして魔法陣は
「ガウッ!!」
〈サウンド•フォックス〉
「急に呼び出してごめんね、〈サウンド•フォックス〉。今朝の疲れも残っているのに」
「ガウ」
問題ない、と言わんばかりに、尻尾を振りながら綺麗におすわりのポーズを取る〈サウンド•フォックス〉。
あの様子を見る限り、ケガの方は大丈夫そうだ。おそらく、
「はえ〜、やっぱすげぇな
「ああ」
感心する
中等部組とは。その名の通り、
と言っても、この〈
無論、今朝の戦いや先程の実戦を見れば分かるように、俺たちより長く学んでいる分、実力に関しては
ただ、全校生徒の人数の割合を考えると、その数は非常に少ない。というのも、中等部に所属したとしても、素質がなければ切り捨てられ、逆に才能がある場合は直接本部の養成機関へとスカウトされるからだ。1番多いのは圧倒的に前者だが、スカウトも受けず、そのまま卒業していく生徒というのも一定数存在している。
まさに、
「あーあ。俺も
ちなみに、彼女の〈サウンド•フォックス〉も、実は人造サーバントらしい。中等部で支給されたサーバントらしく、噂によると、中等部を卒業する際に、正式な契約を
しかし、その性能は量産型の〈ネオ•ワイヴァーン〉とは比べ物にならない。扱いは難しいが、その分頼りになる相棒とのことだ。
「お見事です。さすがですわ、
「......い、いえ。私も、色々勉強になりましたし......その、こちらこそありがとうございました」
「あら、そうですの?ふふふ———なら良かったですわ。
———皆様、いかがでしたか?ご自身の参考になりましたか?いつか皆様もこれぐらいできるように、頑張って
そんなイリーナ先生の今度こその締めの挨拶と同時、授業の終わりを告げるチャイムが響くのであった。
♢
「は〜い。皆様、今日も一日お疲れ様ですわ♪帰りのホームルームを始めましてよ。———と、その前に、こちらの紙を後ろに回していただきますわ」
時は過ぎ、帰りのホームルーム前。
実戦形式授業の興奮が冷めやらぬ中、壇上のイリーナ先生はそう言うと、1番前の席に座る生徒に、数枚の紙の束を手渡す。
それを受け取った生徒は、後ろの席、また後ろの席へと次々に回っていく。よく普通の学校とかでも行われるアレである。
「ほい、
「おう、ありがと」
前の席に座る
書いてある
「後ろの席まで回りましたか?もうすでに目を通していらっしゃる方もいるとは思いますが、そちらは進路希望調査の用紙になっておりますわ」
進路希望調査。言葉の通りならば、将来どんな道に進みたいかの希望調査である。これも学校では
ただ、なぜこのタイミングで?というのが、俺を含む大半の生徒の疑問であった。
「少し早いと思われるかもしれませんが、1年間を過ごす上で、目標を定めておくというのは大事なことですわ。本部直属の養成所、
イリーナ先生はまるでこちらの心の中を
生徒のことを心から考えているような、
それは、端的に言えば
......これは、学園側の
あくまで推測だが、まず初歩的な実戦形式授業を行い、適性の低い生徒を割り出す。それでもって、自分の進む道に疑問を持たせ、あれよこれよと教員が
(この学園......やっぱ相当入り組んでるな。のうのうとしてたら、確実に切り捨てられる)
幸いうちのクラスに脱落者はいない。全員サーバントの召喚に成功しているため、この時点で誰かが切り捨てられるというのは考えにくい。
———そう、ただ1人俺を除いて。
「............」
俺は、未だにうんともすんとも言わない自分のデバイスに視線を落とす。
イリーナ先生の言葉が俺も含めているのか、あるいははなから関与するつもりもないのか、その真意は分からない。
......ただ事実、あれ以降、このデバイスは俺に反応を示していない。このクラスで唯一、サーバントの召喚を俺は行えていない状況だ。
———実を言うと、ついこないだまで俺にも契約サーバントがいた。しかも、学園から支給された量産型などではない、れっきとした〈異世界よりの来訪者〉だ。
自分で言うのもなんだが、俺には才能があった。当然相棒のおかげでもあるが、実際初歩的な実戦や座学なんかは簡単にマスターしてしまった。入学して数日で、あっという間に俺は学年一位の座を手にし、経験者である中等部組ですら簡単に追い抜いてしまった。当時は、本部直属の養成機関に転入、なんて噂まで立っていたくらいだ。
まさに
だが、そんなある日。
この学園の訓練場、皆の注目が集まる中、俺は相棒から本気の平手打ちを喰らった。
『......君は、今の君は、力に
『力に
『———さようなら、
———それが、彼との最後の会話だった。
最初は悪くないと思っていた。彼が少し
きっと明日には忘れて全部元通り、そんな風に自分自身に言い聞かせていた。
だけど、それは違うとすぐに分かった。
『リンク•アライズ———!!リンク•アライズ—————!!!!リンク..........アライズ!!!!!
........なんでだよ———なんで何も起こらない!!!
———俺に従え。黙って、俺に従ってればいいんだよ————!!!!!!!!!!』
何度呼び出しても、何度リンク•アライズしても、彼が現れることはなかった。
否、彼だけではない。デバイスに登録されているはずの〈ネオ•ワイヴァーン〉ですら、俺の呼びかけには応じなかった。何度リンク•アライズしようとも、何も起きることはなかった。
今思えば当然だ。
本来、
それを
やがてデバイスすら反応しなくなり、段々と周囲の人間たちも離れていった。散々見下していた周りの生徒には逆に見下されるようになり、友人と呼べる存在も今では
たった1日を皮切りに、没落した元天才。学園一の落ちこぼれのレッテルを貼られ、周囲には常に『無能』と
それこそが俺、
「———提出期限は3日後。急な話で申し訳ありませんが、じっくりと考えてくださいまし。よく考え、出した答えをワタクシにお聞かせ願えると嬉しいですわ♪」
......と、いかんいかん。今はそんなことを考えている場合ではない。
進路希望調査に、サーバント、デバイス。問題はまだまだ山積みにも関わらず、それが期限付きというさらに嫌な状況。
今後のことを早急に考える必要がありそうだ。
サーバント×リンクス WATA=あめ @W-T-A-M
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