第4章 実戦

 ♢

 「では、1人ずつやっていきますわ。最初は———てんどう君。前に出てきてくださいまし」



 名前を呼ばれると、てんどうは「はい!」という元気な返事とともに、教壇の方へ歩っていく。


 ついに始まった、俺たち召繋師リンカー見習い初の実戦形式授業。


 この〈せいれいがくえん〉の授業は、大きく分けて2種類。

一つは通常の一般科目、そしてもう一つは召繋師リンカー専門授業。中でも、午後の授業は、全て実戦科目で統一とういつのカリキュラムとなっている。

 

 とはいっても、すぐに実戦開始———というわけにはいかない。先程の先生の話にもあったように、俺たちの力は非常に危険なものだ。何も考えずに、おいそれと使っていいものではない。


 だからこそ、俺たちはこの一ヶ月間ひたすら座学で学んできた。今日はその集大成———自身の成果せいかを見せる場ということで、教室内には張り詰めた空気が漂っているのだ。



 

「———それでは、てんどう君。まずは自身のデバイスを起動させてくださいませ」


 「はい!」



 またもや元気の良い返事をしたてんどうは、自身のデバイスを取り出し、慣れた手つきで操作を始める。


 

 では、そもそもデバイスとはなんなのかについてを話そう。

 

 デバイスとは———俺たち召繋師リンカーをサポートするために作られた特殊な端末たんまつのことだ。

 主な機能としては、確認されている〈異世界よりの来訪者〉の情報じょうほう閲覧えつらんや、ニュース系の情報じょうほう取得しゅとく出現しゅつげん予測よそくアラートの受信なんかも、このデバイスでできてしまう。他にはSNSのチャットやインターネット検索機能けんさくきのう等々などなど召繋師リンカーにとって必要な機能からその他までを、一気に詰め込んだような代物しろものだ。


 そして他にも2つ、このデバイスを語るには欠かせない機能が存在する。



 「......よし!先生、準備OKだぜ!!!」


 「ええ。それでは———始めてくださいまし」


 「おう!!」



 と、そんな掛け声とともに、てんどうはデバイスを天高くかかげる。



 「いくぜ—————リンク•アライズ!!!」



 てんどうがそう宣言した刹那せつな、彼の元に魔法陣まほうじんのような紋章もんしょうが現れ、光り輝いていく。



 「出番だ———

〈ネオ•ワイヴァーン〉!!!!!!!」



 次の瞬間———


 魔法陣まほうじんがより強い輝きを放ち、周囲をまばゆい光が包み込んでいく。



 「———ッ!!やった———のか?」



 魔法陣まほうじんがあったちょうど中央。そこに、一つの小さな影があるのが分かる。



 結晶けっしょうのような、機械のような質感の青白い体。小柄な体格の半分以上の大きさを持つ、2枚の翼。ギラリと光る赤色の瞳。


 そこにいたのは本当に小型の、〈ハイ•ワイヴァーン〉を数倍小さくしたような翼竜がたたずんでいた。



 〈ネオ•ワイヴァーン〉———てんどうの契約サーバントが、今ここに召喚されたのだ。



 「〜〜〜〜〜〜いっっよっっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!やった!!!俺にもできたぜ!!!!!」



 自身の成功をの当たりにし、その場で飛び跳ねて喜ぶてんどう。それに釣られ、教室内もどこか安堵あんどしたかのような空気が流れていく。



 ———そう。これこそがデバイスの最重要機能の一つ、サーバント召喚の補助だ。


 俺たちは召繋師リンカー見習いは、未熟みじゅくゆえ力が安定しない。サーバントを呼び出そうとしても何も起きない、もしくは力がその場で暴走ということもある。例を挙げると、てんどうの無駄に眩しいあの光。あれも力が安定しないのが原因だ。

 

 だからこその補助機能。俺たちは、一人前になるまでデバイスの力を常に借りなくてはいけない。故に、この機能は最重要機能になってくるのだ。

 




 「よくできましたわ、てんどう君。お見事です♪......ただ、少し力のコントロールにあらさがありますわね。次は、もう少し落ち着いてできるとなお良しですわ」


 「ありがとうございます、先生!!———よかったな〜〈ネオ•ワイヴァーン〉〜〜」



 てんどう頬擦ほおずりをされ、気持ちよさそうに目を細める〈ネオ•ワイヴァーン〉。

 こうして見ると他の動物たちと変わらない、まるで本当の生き物であるかのような仕草だ。



 というのも実はこの〈ネオ•ワイヴァーン〉、人の手によって造られた人造サーバントなのである。


 元々は、実験のためにワイヴァーン種の遺伝子いでんしを材料に造られた人工生命体らしいが、今では召繋師リンカー見習いでも使役しえきしやすいようにと、様々な改良がほどこされている量産型とのことだ。


 入学時に支給しきゅうされるデバイスには必ず登録されており、リンク•アライズすればすぐにでも呼び出せる状態となっている。初心者でも扱いやすいがゆえに、大体の召繋師リンカー見習いは、最初に彼らと契約をするのだ。

 

 では、彼らは普段どこにいるのか?


 ———そう。デバイスの中である。



 『〜〜〜〜〜♪♪♪』



 彼らは普段デバイスの中で待機状態となっており、それを召繋師リンカーがリンク•アライズすることで呼び出せる。

 当然だ。〈ネオ•ワイヴァーン〉のような小型のサーバントはともかく、人間の数倍のサイズのサーバントを四六時中しろくじちゅう歩かせるわけにもいかないだろう。だからこそ、この機能はプロの召繋師リンカーが使用するデバイスにだって重宝ちょうほうされる。


 

 ———これこそが、もう一つのデバイス最重要機能、サーバントの格納かくのうだ。



 「......とまぁ、こんな感じに、これから皆様にはサーバントの召喚をやって頂きますわ。多少コントロールが荒くなっても構いません。まずは召喚することを目標としてもらいますわ♪」



 俺たちにとっては初めて、また召繋師リンカーにとっては初歩中の初歩。


 まさに、これからの道を左右する重要な局面に、俺たち見習い召繋師リンカーはぶつかるのであった。


 

 

 



 















 ♢


 「はい。これにて、第1回実戦形式授業を終了致しますわ。皆様、お疲れ様でした♪」



 そんな、イリーナ先生の締めの挨拶とともに、俺たちの間に弛緩しかんした空気が流れる。


 人生初の実戦形式授業。緊張の連続ではあったが、その後は特に何事もなく、なんとか無事に終了することができた。


 ......まぁ、俺は名前すら呼ばれず見学だったわけだから、緊張も何もなかったのだが。



 「ふふっ、皆様、非常に良い出来でしたわ。無事全員成功できて何よりです。

 ......まぁ、もしこんな初歩的なこともできないなんてことことがあったとしたら、退学も視野に入れてもらうところでしたが———そうならならくて良かったですわ♪」



 「「「「............」」」」



 サラッととんでもないことを言ってのけるイリーナ先生。上品な笑顔で冗談っぽく言ってはいるが、内容が全くシャレになっていない。


 普段優しくて好評のあるイリーナ先生だが、たまにこういうブラックな発言が飛び出したりすることもあったりする。......まぁ、そんなところも男子からの人気を集める要因なのだろうが。



 「せんせー、ひなぴがまだやってませーん。名前呼ばれなくて、泣いちゃってまーす」


 「ちょっ......!?れん!?」



 そんな中声を挙げたのはくだんの金髪ギャル生徒、あいざわ れんだった(さっき先生がそう呼んでいた)。

 じゃらじゃらと、腕につけたアクセサリーを鳴らしながら(ちなみに校則違反である)、鏡美かがみの右手を強引に伸ばさせている。

 


 「確かにひなぴにとってはかもだけど、だからってやらせないのは違うっしょ。それにお手本見た方が、他のみんなも参考になるんじゃない?」


 「いや......私、そんな大層たいそうなことは———」


 「ふむ........確かに、それもそうですわね。彼女はやるまでもないと思ってましたが———分かりましたわ。鏡美かがみさん、前に出てきてくださいまし」


 「えっ!?」


 

 ザワザワと、教室内に再びざわめきが起きる。

 

 鏡美かがみ 雛子ひなこが実戦を行う。それは、俺たちクラスメイトにとってただ事ではない。現に教室内は、どこか期待に満ちた高揚感こうようかんでいっぱいだ。

 


 かたや、なかば強引に名前を呼ばれてしまい、「ふぇぇ............」と意気消沈いきしょうちんした様子で席を立つ鏡美かがみ


 不憫ふびんなことに、自己主張が強くない彼女はいつも勝手に話が進んでしまうふしがある。その原因は大体約1名の仕業しわざなんだが......まぁ、あいざわ れんも悪気があってやっているようには見えないし、彼女も彼女なりの考えがあるのだろう。


 俺に対しては当たり強いけど。



 「うぅ............皆見てる。やっぱり緊張するよぉ........」



 対する鏡美かがみはというと、元から小柄な身体からだをさらに小さく縮め、ビクビクとその場で震えていた。


 果たして、こんな状態で召喚なんてできるのだろうか。なんだか心配になってくる。



 「ひなぴ〜ふぁいと〜。大丈夫、大丈夫。いつも通りやればどうにかなるから〜」



 じゃらじゃらとアクセサリーを鳴らしながら、気の抜けたようなエールを送るあいざわ

 前言撤回ぜんげんてっかい。ただ単に面白がってやってるだけだわ、これ。



 「———大丈夫ですわ、鏡美かがみさん。落ち着いて、呼吸を整えて。周りにいる方々は敵ではありませんわ。いつも通り、ただただ自分のパートナーに会いたい。自分の想いだけに、意識を集中してくださいまし」


 「......!」



 イリーナ先生の言葉を受けた鏡美かがみ身体からだから、少しずつ震えがなくなっていく。


 さすがは〈せいれいがくえん〉の教員だ。的確な言葉とアドバイスで、あっという間に鏡美かがみの緊張と不安を消してしまった。どっかの金髪ギャルの適当エールとは訳が違う。



 「そうだ......私は、〈サウンド•フォックス〉に会いたい。いつも通り、集中すれば大丈夫......」



 鏡美かがみはその場で大きく深呼吸すると、手早くデバイスを取り出し、バッと右手を前に出す。



 「———リンク•アライズ。お願い、来て。

〈サウンド•フォックス〉!!」



 彼女が大きく声を上げると、その場に1つの綺麗な魔法陣が現れる。


 そして魔法陣はあわく輝くと、次の瞬間———

 

 

 「ガウッ!!」



 あるじの呼び声に応じ、俊敏しゅんびんな動きで現れる黒いキツネのような生物。


 〈サウンド•フォックス〉


 鏡美かがみ 雛子ひなこの契約サーバントが、今ここに顕現けんげんした。



 「急に呼び出してごめんね、〈サウンド•フォックス〉。今朝の疲れも残っているのに」


 「ガウ」



 問題ない、と言わんばかりに、尻尾を振りながら綺麗におすわりのポーズを取る〈サウンド•フォックス〉。

 あの様子を見る限り、ケガの方は大丈夫そうだ。おそらく、五月雨さみだれ先生にでもてもらったのだろう。ずっと心配だったが、元気そうで何よりだ。



 「はえ〜、やっぱすげぇな鏡美かがみのやつ。あんなにあっさり召喚するとはな。さすが、中等部組は違うぜ」


 「ああ」



 感心するてんどうに、俺は軽く相槌あいづちを打つ。



 中等部組とは。その名の通り、召繋師リンカー育成機関の中等部を卒業した生徒たちのことである。

 と言っても、この〈せいれいがくえん〉に中等部は存在しない。あくまで、他の召繋師リンカー育成専門の中学校のことをしている。

 無論、今朝の戦いや先程の実戦を見れば分かるように、俺たちより長く学んでいる分、実力に関しては数段先すうだんさきを行っている。まさに、経験者エリート集団と言える生徒たちだ。


 ただ、全校生徒の人数の割合を考えると、その数は非常に少ない。というのも、中等部に所属したとしても、素質がなければ切り捨てられ、逆に才能がある場合は直接本部の養成機関へとスカウトされるからだ。1番多いのは圧倒的に前者だが、スカウトも受けず、そのまま卒業していく生徒というのも一定数存在している。



 まさに、鏡美かがみ 雛子ひなこはその中の1人である。

 召繋師リンカーを目指す道を再び選び、この学園へとやってきたのだ。

 


 「あーあ。俺も鏡美かがみみたいに、早く自分のサーバントが欲しいぜ〜」



 壇上だんじょう鏡美かがみと〈サウンド•フォックス〉に視線をやりながら、そんなことをつぶやてんどう


 ちなみに、彼女の〈サウンド•フォックス〉も、実は人造サーバントらしい。中等部で支給されたサーバントらしく、噂によると、中等部を卒業する際に、正式な契約をわしたのだとか。

 しかし、その性能は量産型の〈ネオ•ワイヴァーン〉とは比べ物にならない。扱いは難しいが、その分頼りになる相棒とのことだ。

 


 「お見事です。さすがですわ、鏡美かがみさん。急なお願いでしたのに、本当にありがとうございますわ」


 「......い、いえ。私も、色々勉強になりましたし......その、こちらこそありがとうございました」

 

 「あら、そうですの?ふふふ———なら良かったですわ。

 ———皆様、いかがでしたか?ご自身の参考になりましたか?いつか皆様もこれぐらいできるように、頑張って精進しょうじんしてくださいまし」



 そんなイリーナ先生の今度こその締めの挨拶と同時、授業の終わりを告げるチャイムが響くのであった。


























 

 ♢


 「は〜い。皆様、今日も一日お疲れ様ですわ♪帰りのホームルームを始めましてよ。———と、その前に、こちらの紙を後ろに回していただきますわ」



 時は過ぎ、帰りのホームルーム前。


 実戦形式授業の興奮が冷めやらぬ中、壇上のイリーナ先生はそう言うと、1番前の席に座る生徒に、数枚の紙の束を手渡す。


 それを受け取った生徒は、後ろの席、また後ろの席へと次々に回っていく。よく普通の学校とかでも行われるアレである。



 「ほい、かなで


 「おう、ありがと」



 前の席に座るてんどうから用紙を貰い軽く礼を言った後、俺はその内容へと目を通す。


 書いてある議題ぎだいは———進路希望調査について。



 「後ろの席まで回りましたか?もうすでに目を通していらっしゃる方もいるとは思いますが、そちらは進路希望調査の用紙になっておりますわ」



 進路希望調査。言葉の通りならば、将来どんな道に進みたいかの希望調査である。これも学校では恒例こうれいと言える、ありふれたものの一つだろう。


 ただ、なぜこのタイミングで?というのが、俺を含む大半の生徒の疑問であった。



 「少し早いと思われるかもしれませんが、1年間を過ごす上で、目標を定めておくというのは大事なことですわ。本部直属の養成所、召繋師リンカー部門高専、本部職員......他にも、たくさんの選択肢が存在しておりますわ。この学園には資料もたくさん置いてあるので、目を通しておくことをすすめますわ。......それと、学園には召繋師リンカー以外の進路でも、様々なサポートが充実しております。どんなことでも遠慮なく、気軽に相談してくださいまし」



 イリーナ先生はまるでこちらの心の中をのぞいてるかのように、疑問に対する補足を入れる。


 生徒のことを心から考えているような、たおやかな微笑ほほえみを浮かべて話をするイリーナ先生だったが、俺の受けた印象は全くの逆だった。




 それは、端的に言えば作為的さくいてきな何か。


 ......これは、学園側の選別せんべつだ。


 あくまで推測だが、まず初歩的な実戦形式授業を行い、適性の低い生徒を割り出す。それでもって、自分の進む道に疑問を持たせ、あれよこれよと教員が召繋師リンカーの道から遠ざける。こうすることによって、才能のない者は切り捨て、才能ある者には力を入れる。そのための選別の一環いっかん、おそらくそれこそが、この件に対する学園側の魂胆こんたんなのだろう。



 (この学園......やっぱ相当入り組んでるな。のうのうとしてたら、確実に切り捨てられる)



 幸いうちのクラスに脱落者はいない。全員サーバントの召喚に成功しているため、この時点で誰かが切り捨てられるというのは考えにくい。


 


 ———そう、ただ1人俺を除いて。



 「............」



 俺は、未だにうんともすんとも言わない自分のデバイスに視線を落とす。

 イリーナ先生の言葉が俺も含めているのか、あるいははなから関与するつもりもないのか、その真意は分からない。


 ......ただ事実、、このデバイスは俺に反応を示していない。このクラスで唯一、サーバントの召喚を俺は行えていない状況だ。





 ———実を言うと、ついこないだまで俺にも契約サーバントがいた。しかも、学園から支給された量産型などではない、れっきとした〈異世界よりの来訪者〉だ。

 

 自分で言うのもなんだが、俺には才能があった。当然相棒のおかげでもあるが、実際初歩的な実戦や座学なんかは簡単にマスターしてしまった。入学して数日で、あっという間に俺は学年一位の座を手にし、経験者である中等部組ですら簡単に追い抜いてしまった。当時は、本部直属の養成機関に転入、なんて噂まで立っていたくらいだ。

 

 まさに神童しんどう。学園中が俺のことをたたえ、中には次期じき召繋師リンカーなんて呼んでいるような人間だっていた。




 だが、そんなある日。


 この学園の訓練場、皆の注目が集まる中、俺は相棒から本気の平手打ちを喰らった。



 『......君は、今の君は、力におぼれてしまっている』


 『力におごる気持ちは分かる。......だけどその力は、困っている誰かに手を差し伸べるために使うものだ。決して自分自身のためだけに———ましてや、誰かを傷つけるためのものではないっ........!!」


 『———さようなら、かなで。君との日々......本当に楽しかったよ』



 ———それが、との最後の会話だった。


 最初は悪くないと思っていた。が少し愚直ぐちょくすぎるだけであり、俺は何も間違っていない。

 きっと明日には忘れて全部元通り、そんな風に自分自身に言い聞かせていた。



 だけど、それは違うとすぐに分かった。



 『リンク•アライズ———!!リンク•アライズ—————!!!!リンク..........アライズ!!!!!

 ........なんでだよ———なんで何も起こらない!!!

 ———俺に従え。黙って、俺に従ってればいいんだよ————!!!!!!!!!!』



 何度呼び出しても、何度リンク•アライズしても、が現れることはなかった。

 否、だけではない。デバイスに登録されているはずの〈ネオ•ワイヴァーン〉ですら、俺の呼びかけには応じなかった。何度リンク•アライズしようとも、何も起きることはなかった。


 今思えば当然だ。

 

 本来、召繋師リンカーとは、彼らとの絆を力とする者たちだ。彼らとは共に歩むパートナーであり、決して自分の手足や道具ではない。


 それをき違え、おごったばかりに、俺は全てを失った。彼らがこたえてくれなくなったのはそれが理由だ。


 やがてデバイスすら反応しなくなり、段々と周囲の人間たちも離れていった。散々見下していた周りの生徒には逆に見下されるようになり、友人と呼べる存在も今ではてんどうただ1人。


 たった1日を皮切りに、没落した元天才。学園一の落ちこぼれのレッテルを貼られ、周囲には常に『無能』とさげすまれる毎日。


 それこそが俺、 かなでの生きる世界なのだ。



 「———提出期限は3日後。急な話で申し訳ありませんが、じっくりと考えてくださいまし。よく考え、出した答えをワタクシにお聞かせ願えると嬉しいですわ♪」



  ......と、いかんいかん。今はそんなことを考えている場合ではない。

 進路希望調査に、サーバント、デバイス。問題はまだまだ山積みにも関わらず、それが期限付きというさらに嫌な状況。


 


 今後のことを早急に考える必要がありそうだ。

 

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