第11話 委員長
初日の訓練が終わりクラス一同は風呂に入り
1日の疲れを癒していた。
「は〜、マジ生き返るわ〜」
「そうですね~、心が洗われます〜」
「あ〜、霧島さん顔ゆるゆるです〜」
「ホントだ〜、委員長さん珍しいですね〜」
女子風呂では全員初めての訓練で疲れ切って
おり、あの委員長でさえ
普段の気丈さもどこ吹く風といった様子だった
「今日は疲れましたね〜、でもまだまだですよ~。今日は午後しか訓練してないですから〜」
「そだね〜、これからも続くのか〜」
「そちらの訓練ど〜でしたか〜?」
「も〜ね〜、ハッさん容赦無さすぎだった〜」
「そ〜ですね〜、ハットリさんスキル使わないであのレベルは化け物すぎます〜」
ハットリの訓練を受けた者は振り返る…
動けば罠に嵌まり、動かなければハットリの
攻撃を喰らう。
動けば死、動かなくても死の『魔の森』を…
「そ、それは大変でしたね」
「というかどうしてそのような訓練に?」
「それがあーしが提案しちゃったんだよね〜」
「相良さんがですか?」
「そ〜なんだよ〜、なんかハッさんのモチベが低かったからお互い楽しめるかもしれない
かくれんぼ型の訓練てーあんしたらさ〜」
「罠に嵌まったりハットリさんから攻撃されたらと酷かったです…」
「そーそー、でも何とかして捕まえたいね〜」
「でも私のマッピングにも移りませんし…」
「今日はそもそも姿すら見えなかったしね〜」
「ほ〜んとやる気はないのにつよつよとか」
「余裕こいて『いつか俺を殺してみろ!』
なんて言ってましたね」
「「「◯殺◯室?」」」
「ま〜それを元に考えたんだけどさ〜」
「後から後悔しましたね」
「ほ、ほかの方々もそんな命を削るような訓練だったのですか?私達はそこまでのものではありませんでしたが…」
「いやそこまでじゃないよー。うちら前衛組も魔物との戦闘訓練はあったけど危なくなったら直ぐに源さんが入ってくれたし」
「そうなのですね、よかったです」
「まー、とあるバカが自業自得の大怪我してた
けどねー」
「とあるバカ、ですか?」
「そー、大石のやつオーガっていうちょー強い魔物相手に正面から行ってぶっ飛ばされてた。しかも2回」
「は〜?2回?アイツ学習能力0すぎ」
「ちょっと待ってください。今のお話ですと
大石君は2度魔物に殴られたのですよね?」
「そだよー」
「でも彼は合流した際怪我1つありませんで したよ?」
「あーそれはね、アイツのスキルって
『身体超過』ってやつだったじゃん?うちらは身体能力上げるスキルだと思ってたんだけど
なんか再生能力もあったんだよねー」
「さ、再生ですか」
「うん、うちらも見たけどやばかったよー。
怪我して血、ちょー出てるのになんか笑ってるし、怪我治ってくしで」
「なんかアイツホントに化け物じみてるじゃん怪我治るんだったら無敵っしょ」
「あー、でもなんか治りはするけど一応怪我
したら痛くはあるらしいよー。ならなんで2回も殴られたんだって思ったけど」
「バカだからでしょ」
「それに君嶋さんの方が凄かったしね」
「私はそんな大したものでは…」
「謙遜しすぎだって。元々君嶋さんって剣道と合気道凄かったじゃん?それにスキルが相まって大石なんかよりちょー強いんだから」
「凄いですね。では私達後衛組や支援組は前衛のサポートの為にしっかり訓練しなければなりませんね」
「うんっ、足引っ張りたく無いし、君嶋さんにおんぶでだっこって訳にはいかないもんね!」
「そろそろ上がりましょうか。今日は私達の為にご馳走を用意して下さるとのことでしたし」
「そだね!宴楽しみっしょ!!」
そうして別れていた男子とも合流し、宴が行われると言われていた中央広場へと向かった。
そこには…
「これって…」
「マジか…」
「嘘っしょ…」
巨大なイノシシの丸焼きがあった。
「おっ、来たみたいだね。今日の主役は君達だもう直ぐに宴も始まるから楽しんでね」
「あ、あの…源さん…?」
「どうしたの?」
「あのイノシシはもしかして…」
「ああ、そうだよ。昨日君達がここに来る前
最初に襲われてたイノシシ」
「やっぱり…ですか…」
「えっと…もしかしてイノシシ苦手だった?」
「いえいえ!そんなことありません!
その…少し驚いてしまいまして…私達を襲ったイノシシが今は目の前で丸焼きにされている
ことに…」
「まあ確かにそうかもね。
でも大丈夫、味は僕が保証するよ!何度か食べたことがあるけど凄い美味しいから」
「では、ありがたく御相伴に預からせていただきます」
「じゃあ行こうか、とりあえず宴が始まったら自己紹介お願いね」
「昨日我々に新しい仲間ができた!彼らは
異世界人の身勝手によりこちらの世界へと連れてこられた。しかし、賢也達の尽力もあり
誰一人欠けることなくこの村で保護することが出来た!」
「「「「うぉぉぉぉ!!!」」」」
「賢也よくやった!」
「お前ら大変だったなぁ」
「全員無事でなによりだ!」
「新しい仲間!歓迎するわ!」
「これからは安心してここで暮らせよ!」
あちこちから賢也達を称賛する声と雅達を歓迎する声が聞こえてくる。
「新しい仲間に!乾杯!!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
雅の目から自然と涙が溢れ出してきた。
「お、おい委員長どうしたんだよ!?」
「雅ちゃん!?」
「グスッ、申し訳ありません…この世界に急に連れて来られて…何もかも分からなくて…それでも皆を守らなきゃって…誰にも欠けてほしくないから…でも…やっぱり…怖くて…」
「委員長…」
「雅ちゃん…」
「大丈夫だよ、霧島さん」
「源…さん…?」
「もう君達を傷つける人は、少なくともここ
には1人もいない。これからは君も含めた全員を僕達が守る。だからもう気を張らなくていい君も1人の子供になっていいんだよ」
「そうだぜ!委員長!」
「…大石君?」
「委員長…今まで委員長の気持ちに気付けなくてすまねぇ。だがよ、今まで俺達が死なずにいられたのは源さん達だけじゃねえ、委員長が
俺達をまとめてくれたからだ!だから今度は…
俺達が委員長を支える!」
「そうだよ雅ちゃん!私達を傷つける人はもういない!だから…もう1人で背負い込まずに…
私達に相談して!」
「「「これからはみんなで委員長を守る」」」
「…相良さん…みんな…」
「賢也とお友達の言う通りだね」
「…クロイワさん…」
「君は優秀で責任感の強い良いリーダーだ。
だからこそみんな君に着いて来たのだろう。
だが、もう少し周りに頼ることを覚えなさい。
でないといつか君の方が潰れてしまう。それは君の友達が1番望んでいない事だと思うよ」
「「「「「委員長」」」」」
クロイワの言葉とクラスメイトからの真剣な
眼差しを見て、雅はようやく年相応の少女の様に泣いた。
「落ち着いたかい?」
「…すみません、ありがとう御座いました。
皆さんもありがとうございます。これからは
もっと皆さんに頼ろうと思います…」
「おう!任せろ!」
「それじゃあ、順番に村のみんなに自己紹介をしてくれるかい?」
「はいっ、はじめまして!霧島雅です!
よろしくお願いします!」
こうして霧島雅は今まで被っていた仮面を脱ぎ捨て、誰もが憧れる優等生から只の1人の少女として新たな一歩を踏み出した。
全員の自己紹介が終わり本格的に宴が始まった
「おお!お前大石って言ってたな!いい筋肉
してんじゃねぇか!」
「お!おっさんやっぱり分かるか?」
「おう!お前の筋肉からはいいもんが伝わってくる。今度俺が普段使ってるジムに来な!」
「そんなもんもあんのか!今度いくぜ!」
「よし、そうと決まりゃあ…」
「「かんぱーい!!」」
「あなた、君嶋薫さんね?」
「はい、そうですが。あなたは?」
「私は中村恵子。賢也よりもずいぶん前の召喚でこちらの世界に来たのだけれど、あなた
もしかして楓の娘?」
「母を知ってるんですか!?」
「ええ、昔剣道の大会でよく試合したの。
懐かしいわ…あの子は元気?」
「はい…少なくとも私がこの世界に来る3日前までは…」
「ごめんなさいね…辛いことを考えさせてしまって。」
「いえ…」
「この世界では、あの子に代わって…ううん、親友に代わって貴方を守るわ」
「ありがとう…ございます…」
恵子は微笑み、薫の頭を優しく撫でる
「お礼なんていいのよ。貴方は私の親友の宝
なんだから…当然よ」
「きゃーその口紅かわいいー」
「でっしょー、この口紅はねー、紅花っていう花を元にした作られていた江戸時代の口紅と
同じ作り方で作られた口紅なんだー」
「へ〜!貴理子さんすご〜い!」
「ううん、本当に凄いのはこの方、紅姫さん
だよ」
「わっちは元花魁でありんして、花魁にとって
化粧道具は命に等しいものでありんす。
クロイワはんの膨大な知識量を借り、ムラマサはんに作って頂いた品でありんす」
「紅姫さん…その常に綺麗でいる姿勢…
尊敬します!」
「ふふっ、それは嬉しいことを言ってくだはる良ければ時間が空いた時に貴理子と一緒に
わっちの部屋へいらっしゃい」
「はいっ、ありがとうございます!」
「愛ちゃんも女の子だね〜。紅姫姉さんに
そっこー弟子入りして、私みたい」
「あの!あたしもお話し聞きたいです!」
「わたしも…」
「私も…」
「美への探究心は女の性でありんす。全員に
わっちの知識と技術を授けるでありんすよ」
「「「ありがとうございます!姉さん!」」」
「ふふっ」
「どうしたんだい?霧島さん」
「いえ、楽しいなって」
「私…日本にいた頃は…家でも学校でも優等生な自分を演じていたんです。それが求められていたし、私もそれが正しい事だと思っていた
から…」
「…でも今日クロイワさんの言葉で目が覚めました。私はもう優等生じゃなくてもいいんだって…」
「…そして、優等生の仮面を脱ぎ捨てたら…
私を支えるって言ってくれるクラスメイトと
初めてちゃんと向き合えた気がする…私は1人じゃないんだなって、今更気付きました」
「クロイワさん、ありがとうございます」
「なに、子供を導くのは大人の仕事だからね
当然だよ」
「クロイワさん!私も行ってきます!」
「うん、行っておいで」
「みんなー、これからの私達の未来に!」
「乾杯!!」
「「「「かんぱーい!!!」」」」
クラスで召喚されたが召喚した国があまりにも酷かったので逃げ出した 楽園 @3to4K
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