第10話 訓練開始 2
ムラマサの特訓
「じゃあよろしくな!お前ら!」
「「「はいっお願いします!」」」
「まずお前達3人は物を作ったりする職業ってことでいいんだよな?」
「はい、拙者は『錬成』、そしてこちらの2人四条殿、香坂殿は『構築』と『生成』です」
「うむ、了解した!それじゃあモノ作りの基本を教えてやる」
「ありがとうございます」
「モノ作りにおいて最も大切なこと。それは今から作ろうとしている物の構造、作成プランを事前にしっかりと頭に入れていること。そしてたとえ失敗したとしてもそれに対して目を逸られさず、次への対策をすることだ。どちらも基本的な事だが絶対に欠けてはいけないことだからな!」
「分かりました」
「因みにお前ら」
「「なんでしょうか?」」
「お前らのスキルで良質な新しい金属を作り出すことはできるか?」
「何故でしょうか」
「そりゃあお前、良質な鉄が使えたらその分俺の打つ刀の質が良くなるからに決まってんだろうが!
それにこっちの世界には玉鋼が存在しねぇ。
というか玉鋼を作るための製法がこっちじゃ
出来ねぇんだ。だから刀を打てても名刀とは程遠い欠陥品になっちまう。
一応似てる金属があるから今はそれを使って刀を打ってはいるがやっぱり玉鋼に比べると
炭素含有率が高すぎる。
いきなり新しい金属を作ってくれとは言わねぇからよ玉鋼だけでも作れねぇか?」
「は、はぁそれでしたら四条殿が玉鋼の
原子配列を構築し、構築された金属を香坂殿が生成、それをムラマサ殿が鍛えるというのが
最善かと…」
「本当か!?」
「確かに、それなら同じ要領で新しい金属も時間はかかるかもしれませんが作ることは可能かもしれません」
「そうか、そうか!こうしちゃ居られねぇ!
今から全員俺の工房へ行くぞ!」
「あ、あの訓練の方は…」
「さっきも言っただろ?モノ作りは頭で考えるより実践し、失敗から学ぶことの方が効果的だ!
実践あるのみ!ついて来い!」
「「「は、はい!」」」
「ここがムラマサ殿の工房…」
「凄い…広い…」
「あ、あれは作りかけの刀でしょうか」
「ん?あぁあの刀はさっきまで打ってた刀
なんだが…没だな」
「あそこまで打つと分かるんだよ。あの刀は
たとえ完成したとしても直ぐに折れちまう欠陥品になるってな。そんな刀を戦いに挑む奴らに渡して大事な場面で折れちまったら俺も心苦しいし刀も不憫だ」
「そ、それならあの鉄を拙者が使ってみてもいいでしょうか!」
「おぉ別にいいが何に使うんだ?」
「拙者の錬成は既にある物を別の物質へと変化させる能力です!ですのでそちらを使わせては頂けないでしょうか?」
「そうか!おう!やってみな!」
「ありがとうございます!それと布も少し
頂けないでしょうか?」
「いいぜ!ほらよ」
「それでは、『錬成』!」
すると…作りかけの刀だったものは光を発しながら形を変えて行く
「こりゃあ…クナイ、か?」
「はい!ハンゾウ殿に使って頂きた…く…」
そこにあったのはクナイの様な何かだった。
しかしそれは持ち手は短く先の紐通しは円が欠けている。刃はぐにゃぐにゃで左右の刃の幅も均等ではなくクナイと呼ぶにはお粗末な欠陥品だった。
「な、なぜ!?拙者は確かにクナイをしっかりと想像し、錬成したはず!…それなのに…どうして…」
「まぁこうなるんじゃねぇかとは思ってたぜ」
「そ、それはなぜでしょうか」
「お前は今から作るクナイというものをしっかりと理解してなかったってことだ」
「いえ、ですから先程申した通り拙者はしっかりイメージを…」
「刃渡りは?」
「え?」
「刃渡りは何センチにし、 角度は何度にするつもりだったんだ?持ち手の長さや持ち手の先の円の広さまでしっかり考えたか?」
「そ、それは…」
「他の2人も覚えておけ!しっかりと具体的な完成像を思い描き構造の理解ができてねぇと
このクナイみてぇな失敗作しかできねぇ!物を作るってのはそんなに甘い世界じゃねえぞ!
その事を頭の真ん中に入れて覚悟しやがれ!」
「「はい!」」
「そんな理由があるからさっきはつい興奮して連れてきちまったが今のお前らが玉鋼を作ろうとしても只の石ころしかできねぇだろう」
「それならどうすれば…」
「言ったろ?必要なのは具体的な情報と理解だって玉鋼の具体的な特徴は俺が教えてやるしそこから構築したものを元に生成するならしっかりと準備すれば成功するだろうよ」
「お、お願いします」
「そして松本、お前に足りないのはさっきも
言ったように具体性だ。」
「はい」
「こっちも作りたいものの特徴を四条にできるだけ細かく伝えて構築のスキルで詳しい設計図を作って貰え。その設計図通りに錬成すれば今回のクナイみたいに失敗することはないだろうよ。だが作る物が精密になるほど失敗する可能性は高い。1つの小さな狂いから全てが外れちまうからな。だから最初はそれこそクナイみたいな構造が単純な物から始めてみな」
「分かりました」
「だがそうすると四条の嬢ちゃんは結構負担が大きくなっちまうが大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「そうかそうか!最初は忙しくて大変かもしれねぇが慣れちまえば造作もねぇことになる。俺も刀鍛冶になったばかりの時は刀を打ち続けることがきつくて仕方なかったが今は三日三晩刀を打ち続けるのも屁でもねぇ」
「す、すごいですね」
「おう!取り敢えず今からやることは決まったな。そんじゃ訓練開始だ!」
「「「はい!」」」
トウゴウの訓練
「儂の所は2人じゃな。それでは2人共図書室へ向かうぞい」
「はい、分かりました」
「あそこにある本の大半は儂の書いた物じゃからな、この世界についてのものだけじゃなく
戦術について記した物も沢山あるんじゃ」
「あの量をお一人で書かれたのですか!?」
「ん?そうじゃよ。まぁ儂はクロイワとは長い付き合いじゃ。この村を作った時より書物を書いては図書館へと収めておるから量も多いんじゃよ」
「200年前からお書きになられてるんですね!凄いです!」
「そうか?そう言ってもらえると嬉しいのう。
ここの連中は書物を読むより感覚で掴むとか言う無骨者が多くてな。殆どの者が使わないんじゃよ。使われるのは本土の者がこの異界へと迷い込んだ時くらいじゃ」
「そんな…もったいない!私はトウゴウさんの書物読みたいです!図書館にある本読み終わったら私トウゴウさんのお手伝いします!」
「そうかそうか。嬉しいのう。ここに置いて
ある書物はこの異界についてだけでなく異界の地図やその地図を元にしたそれぞれの地形に
あった戦術をまとめたものもある。まずはこの樹海での戦術から教えるぞい!」
「あ、いたいた!おじーちゃーん!」
「どうしたんじゃ?貴理子よ」
「いやー実はね?雅ちゃんは戦術も学んで欲しいけどやっぱり回復系なら先に魔力操作かなーってなって。だから雅ちゃん借りてくねー」
「あっ、ちょっと待つのじゃ貴理子よ。雅は
今から儂の…」
「それじゃーねー」
そう言って貴理子は雅を連れて走り去って行った。
「…行ってしもうた…」
「だ、大丈夫ですか?…」
「儂の教える相手1人になってしもうた…」
「だ、大丈夫です!その分私がトウゴウさんのお話いっぱい聞きますから!」
「そ、そうじゃの!よし!真田美南よ!」
「はい!」
「今よりお主に儂の全てを叩き込んでやる!」
「はい!」
「儂の一番弟子としてしっかりついてくるんじゃぞ!」
「ありがとうございます!これからよろしく
お願いします!」
「いい返事じゃ。それでは行くぞ!まずは…」
こうしてトウゴウによる真田とのマンツーマン授業が始まった。
ハットリの訓練
「それじゃあ改めて、私はハットリ。忍の
技術を君達に授けるよ」
「あれー?なんかハッさん落ち込んでなーい?」
「ハッさん?」
「うん。ハットリさんだからハッさん。嫌だった?」
「いや、君達の好きに呼んでくれ」
「オッケー!それで?ハッさんはなんで落ち込んでんの?」
「いやね…ただでさえあの二人よりも仕事が多いのに1番人数多いなんて…」
「え、なんかすいません…」
「いや、君達は悪くないんだよ?全ての元凶は君達を呼び出したこの世界の人間だし。
あーめんどくせーこのクソ異世界人共がー」
「な、ならさハッさんが楽しくてあーしらを鍛えられる授業にしてみたら?」
「私が楽しくて君達を育てられる?」
「そうそう!さっきかくれんぼしてたって言ってたっしょ?ならうちらともしようよ。多少は手抜いて欲しいけどそれならお互い楽しく訓練できるっしょ?」
「おお!君天才だな!その案で行こう!まったく子供の発想力には驚かされる!」
「あ、ありがとう」
(まー漫画の知識だけど)
(((絶対暗◯教◯だろ)))
「そーと決まればまずは森に移動だな!」
「移動?ここでやるんじゃないの?」
「ははっここでやったら君達じゃ私のことを捕まえられるわけないからね。森に移動して範囲も限定させてもらう」
「それじゃあここらへんでいいかな。それじゃあ今から隠れるから君達の前から姿を消したらスタートね。私は色々移動するけど移動の気配を掴んで私のことを探すといい。
鬼は君達全員、まぁ無理だろうけど捕まえられるように頑張って」
「ハッさんあーしらのこと舐めすぎ」
「そうですよこんだけ人数いて場所も狭いんだからすぐ見つけられますって」
「そっかー、まあ期待せずに待ってるよ。
それと…」
シュッ
音もなくハットリが消える
「死なないようにね」
「えっ!?ハッさん急に消えたんだけど!?」
「それに死なないようにって…」
「そ、そんなん只の脅しだろ。相手は動いているとはいえかくれんぼだぜ?」
「そ、そうだよそれに気配を掴んでって言ってたしそこまで大胆に動いたら俺等に見つかるからあんまし動かないだろ」
「取り敢えずあっち探してみるわ」
ズボッ
「は!?」
急に1人消えた、と思ったがそこには大きな
落とし穴があった。
『ああ、それと言い忘れたけどこの森には私が仕掛けた無数の罠がある。そして…』
「グハッ」
『こっちからも攻撃するから。一応訓練用の
殺傷能力のないクナイを使うけど当たれば痛いから気をつけてね』
「もう2人やられた…しかもハッさんの声も声が反響してて森全体から聞こえるみたい。気配を読むなんて無理っしょ」
「でもこの状況危なくない?男子2人死んじゃったし」
「「い、生きて…る…助け…て…くれ」」
「取り敢えず攻撃されないようにするのが先決っしょ罠とかは後から考えよ『千変万化』!」
「「…む…し」」
『ほう、幻術か…だがそんなもの、気配を読めれば造作もない』
「ギャッ」
「ハッさん…容赦…無さすぎ…」
『当たり前だろう。でないと訓練にならん。
あ、でも女子は手加減するから安心してね。
男子は容赦しないけど』
「ど、どうしよう篠崎さん!」
「お、落ち着いて小田さん。私のスキル
『マッピング』なら周囲に誰が何処にいるくらい直ぐに分か…」
「ど、どうしたの篠崎さん?」
「嘘…『マッピング』に映らない…少なくともこの区画は全部見えてるのに…」
『造作もない、その程度気配を消せば幾らでも掻い潜れる。王国のクソ共の暗殺者と一緒にするなよ?』
「キャッ」
「カハッ」
「こんなものか…やっぱりもう少し手加減しないと駄目かなー。取り敢えず罠だけにして攻撃はしないほうがいいかも。5人が目を覚ましたらそうしてみよ」
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