第9話 訓練開始

 源賢也の訓練


「それじゃあ前衛の人は一人ずつこの檻の中に入ってもらう。それぞれ檻にはゴブリン、オーク、オーガと強さの違う魔物が入っている。倒す魔物が強い程レベルが上がるのは早いけど自分の実力に見合わない魔物を倒そうとすると返り討ちにされて最悪の場合死んでしまう。だからまず僕がそれぞれのスキルを確認するからステータスの詳細を教えて貰うよ。職業、スキル以外にも筋力、魔力とかもね」


「了解っす。まず俺のステータスは…」


「うん、だいたい把握できたよ。それじゃあまずゴブリン討伐でのレベル上げは白石君、中島君、岡部さん、御手洗さん。次にオーク討伐によるレベル上げを行うのは峯岸君と倉本君ね。そしてオーガと戦いレベルを上げて行くのが大石君と君嶋さんの2人だよ」


「それじゃあ早速始めようか。順番は君たちが決めていいよ。まずはオーガグループから」


「じゃあ俺がいくぜ!」


「了解、大石君だね。君嶋さんも次にやるから準備しておいて。オークグループとゴブリングループの人達も順番を決めておいてね」


「身体超過!」


「成る程彼のスキルは自身の身体能力を上げることが出来るのか」


『グォォォォォォォ』

オーガが腕を振るい太賀へと殴りかかるがその拳を素早く回避、


ドゴォォォォン

オーガが殴り着けたその地面には大きなひび割れが出来ていた。


「こりゃやべぇな幾ら防御力100と言っても当たればただじゃ済まなそうだ。どたまかち割ってやる」


そう言うと太賀はオーガへ殴りかかる 


「悪手だね」


「グフォォ!!」


オーガが飛び上がった太賀の腹を捉え、殴り飛ばす。そして血を吐き出しながら大石が吹き飛ぶ。


「大石!!」


「やっぱりまだオーガは早かったかな…このままやるわけには…ん?」


「な、何だコレ?」


太賀の殴られボロボロに傷付いた体が瞬時に治っていく。


「体が…治った?そんなの…ありえな…彼のスキルの能力は身体能力を上げるものじゃないのか?…いや『身体超過』とはそう言う意味なのか…」


人間としての常識から全てが外れる、それこそが『身体超過』の真髄!


「よくわかんねぇけどよぉ…治るんだっら…」


そうしてまた太賀は飛びかかる。


「駄目だ大石君!殴られても君は治るかも知れないがさっきと同じ結果にしかならない!」


またしても大石はオーガに殴られる、が


「捕まえたぜぇ」


血をダラダラ流しながら太賀を殴ったオーガの腕を掴むとそのままオーガを自分へと引き、


「頭かち割れろや!ゴラァ!」


太賀の拳がオーガを捉え殴られた顔は…陥没した。そしてオーガは断末魔を上げる暇もなく息絶えた。


「うおっしゃー!どぉよ源さん!」


「うん、見事だったよ。でもね?」


「え?」


「大石君、君最初のオーガの攻撃避けられてたよね?わざわざ正面から飛び上がらずに後ろに回って殴る、それくらいなら出来たでしょ。なのにわざわざ正面から、しかも1回目はともかく2回目もわざわざ正面に。幾ら再生能力があってもあんな風に殴られなくても勝てたんじゃないかな?」


「うっ」


「次はもう少し頭を使って戦うように」


「は、はい」


折角勝ったというのにその戦法が酷すぎて賢也に叱られてしょんぼりしてしまう太賀だった。


「あ、あの!」


「どうしたの?君嶋さん」


「私あんな大きな魔物倒せると思えないんですけど…」


「大丈夫だと思うよ?だって君嶋さんのステータスってさ」


【君嶋薫】

職業  武術家

レベル 1

スキル 発勁、絶対切断

筋力  70

魔力  60

防御力 70

敏捷性 100

知力  80

技術  300


「君嶋さんって日本で武術なにかやってたでしょ」


「はい、合気道と剣道を…」


「だからだと思うよ。普通スキルって1人につき1つなんだよ。武道を2つやってたって言ってたけど、それだけだとこんなスキル2つ何てならない筈なんだ。だけど技術300ってことはどちらも達人級なんでしょ?」


「一応剣道は全日本で優勝してます、合気は試合形式のものはないので出てませんが…」


「成る程…それならオーガ一体を相手するよりオークを1体ずつ順番に倒して2つのスキルをそれぞれ試したほうがいいかもね」


「分かりました」


「じゃあまず一体出すよ」 


『ブォォォォ』

オークは殴りかかるも薫はオークの横へ周り込み流してからそのまま後ろへ回りオークの首当たりに触れたと思えば…オークは倒れた…そして倒れたオークの背中へ向かって…


「発勁!」


ドシィィィィン


「す、すげえ」


「え、えっとそれじゃあ次は剣術だね。ここにマサムネさんが打った日本刀があるからこれを使って。次のオークも出していいかな?」


「あ、その前にいいですか?」


「なんだい?」


「その、想像してたより弱かったので次はオーガでお願いします」


「わ、わかったよ。じゃあ出すよ」


オーガは出されるなり薫へ殴りかかるも、


「あれは…居合いかい?」


「でもリーチを考えるとオーガの腕が先に君嶋にあたっちまう!避けろ!君嶋!」


「…絶対切断」


薫が刀を振り抜いたと思ったその刹那、

ずれた…オーガの体が否、空間そのものが…


「え?」


『グオ?』

オーガは理解出来ないとばかりに崩れ落ちた


「く、空間を…切ったのかい…?」


「はい、私の流派君嶋流には居合いもありましたし絶対切断ってなんでも切れるのなら空間そのものも切れるんじゃないかな、と」


「よ、よくそんなの思いついたね」


「俺、お前とはやりたくねぇわ…」


「どうして?大石君幾らでも再生するなら何度切られても大丈夫でしょ?」


「いや、死なねぇかもしんねぇけど痛いんだからな!あれ!ずっとサンドバッグ状態になるってわかってんのにやりたくねぇよ!」


「痛いならなんでさっき2発も食らったのよ」


「「「「それはそう」」」」


「に、にしてもなんで君嶋さんは最初自信なさげだったんだい?そんなに強いのに…」


「未知との遭遇だったので」


「あ、そう…」


「じゃ、じゃあ気を取り直して他の皆もやっていこうか」


不知火貴理子の訓練


「それじゃー訓練始めるよー」


「「「はーい」」」


「元気があっていーねー!ここに集まってるのは後衛の子と支援魔物の子ってことでいいんだよね〜!」


「「「そうでーす!」」」


「じゃあ皆のスキル確認するね〜。教えて〜」

そう言われ貴理子は全員の職業とスキルを確認した。


「うん!やっぱり後衛職の人は大体【魔術師】みたいだね!…でも柊沢君だけ…プッ」


「プ?」


「…駄目堪えられない…」


「えーと?」


「あは!あはははははっ!」


「ど、どうしたでござるか?」


「いやwだってw君だけ後衛職の中で職業違ってしかもww名前がw【悪徳子息】ってwww」


「し、失礼な!確かにイメージは悪いでござるがスキルの『極める者』は努力次第で全属性の魔法を扱える才能を秘めているというものですぞ!」


「いやw、分かってはいるんだけどwな、名前がw悪徳子息ってwwもうちょっとまともな名前あったでしょww」


「確かにww」


「そう言われるとww」


「悪いとは思うけどww」


「ウケるww」


「じ、自分だって職業見た瞬間これはどうかと思ったでござる!」


「いい加減笑うのやめろでござるーー!!」


「「「あははははははっ!!」」」


敦の嘆きの叫び声と貴理子を始めとする後衛職全員の笑い声が森に木霊した。


「ふー、笑った笑った。さ、訓練始めるよー」


「結局笑いが収まるまで10分くらいかかったでござる」


「でも確かに柊沢の職業もウケるけどさ、支援職の2人の職業も謎だよね〜」


「そうね、普通スキルって1人1つなんだけど

2人共同じ職業で同じスキルしかもステータスの数値まで一緒なんて…」


「なんか心当たりないの?田中兄弟」


「ふっ愚問だね」

「そうだね、なぜなら…」


「「僕達双子は何時でも何処でも一緒

なんだから!!」」


(((あー)))


「やっぱり異世界だろうがなんだろうが俺等の絆は変わらないな!清!」


「そうだね潔!何処にいても何も変わりはしないんだ!」


「まぁ、よくわかんないけどよかったわね」


「因みに、潔君と清君」


「「なぁに?」」


「君達の職業【共演者】のスキルなんだけど

『支援魔法』っていうのは分かるんだけどもう一つの方の『リンク』ってどんなのか分かる?」


「あぁ」


「それはねー」


「「お互いの思い合う気持ちの大きさが大きければ大きい程お互いの魔力が相手の分だけ

上乗せされるんだ!!」」


「えっとつまり、今の魔力は2人共100だから

最大で200になるってこと?」


「「そういうこと!」」


「「それに片方が怪我をしたり攻撃を受けたりしてもそれぞれ2分の1の怪我をするんだ!」」


「ってことは片方が即死する様な怪我をしても2人に分配されるからどちらも大怪我はするけれど死にはしないってこと?」


「「そだよー」」


「凄いでござるな。その場に聖女の霧島殿が

いれば絶対に死なないでござる」


「そだね~でも支援職の人間が絶対に死なないっていうのは大きいよ〜。だって死なないなら常に支援魔法をかけ続けてくれるんだもん」


「じゃあ!改めて今度こそ訓練しよっか!

今日の訓練は後衛職の子も支援職の子も一緒ね。あっ今トウゴウさんのとこにいる雅ちゃんもやったほうがいい気がするな〜。ちょっと

待ってて〜、けんちゃんに聞いてくるから〜」


「はいっ、連れて来ました!雅ちゃんでーす

けんちゃんに聞いたら失念してたって、

それで雅ちゃんには出来たらでいいけど

基本的な魔力操作と回復魔法を使えるようになるのとトウゴウさんのとこでの戦術をどっちも学んで欲しいって言ってたんだけど雅ちゃん

できそう?」


「大丈夫ですよ。私容量が良いことだけが取り柄ですから」


(((やっぱり委員長はいい子だな〜)))


「じゃあ今から私が皆の背中に手を当ててそこから皆の魔力の器に向かって魔力を流すからそこから自分の魔力を感じてみて」


そう言うと貴理子は順番に生徒の背に手を当てて魔力を流し込んでいく。すると…


「なんか胸のあたりが温かくなってるような」


「これが魔力?」


「なんか掴めて来たかも」


「よーし、皆魔力の感覚は掴めたみたいだね。それじゃーそれを体から流して行こう!」


「こう、ですか?」


「そうそう前園ちゃんいい感じ!元々ここまでは出来てた感じ?」


「はい、何となくですが…」


「いいね〜才能あるよ!他の皆も大体出来てるみたいだね!それじゃあ次に属性魔法について教えるよ!基本的に1人につき2つの属性魔法を扱えるんだ。1つ目は無属性魔法、今出してる魔力をそのまま体外に放出して相手にぶつけるという簡単な物。これは魔術師以外の人も魔力を持っている人は使える」


「つまり、魔術師ではない私や不知火さんは

無属性魔法のみが使えるということですね」


「そう言うこと〜。そしてもう一つが5大属性のうちの一つ。これは魔術師しか扱えない。使える属性はスキルに書いてある属性によって変わる。」


「5大属性とはどのような属性があるのでござるか?」


「5大属性は赤魔法、青魔法、緑魔法、白魔法黒魔法に分けられている。でも今回はいきなりそこまでやれとは言わないから無属性魔法からやっていこうか。特にござる君は全属性が使えるかもだけどその分他の人よりも努力が必要だしね」


「ご、ござる君?まぁ努力については大丈夫でござる。元々その覚悟はしてたでござるからな。それに逆を言えば努力次第で何処までも強く成れるということでござりますから」


「その意気だよ!じゃあ皆頑張ってね!」


長谷一輝の訓練


「よし!水嶋!神崎!お前たちは仲間に来る攻撃を受け、守るという大切な役目だ!」

「「はいっ!!」」


「つまりお前たちは耐久力ともう一つ大切な物がある!何かわかるか!」

「「わかりません!!」」


「それは!根性だ!」

「「分かりました!!」」


「そして、お前達の耐久力と根性を同時に鍛えられる訓練がある!」

「「ありがとうございます!!」」


「では始めるぞ!この盾を持て!」

「「はい!!」」


「今からお前達を殴る!安心しろ!スキルは使わない!耐えろ!」

「「はい!!ってはい?」」


「行くぞ!!」

「「ちょっちょっと待って!!」」


「ドラぁぁぁ!!」

「「ギャァァァァァァ!!」」


「立てぇ!次行くぞぉ!」

「「ギャァァァァァァ!!」」


「まだまだぁ!」

「「ギャァァァァァァ!!」」

















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