第8話 スキル
「それじゃあ次にステータスについてだね」
「ステータスというのはあの私達の情報が記されているものですよね?」
「うん、その一番上にあるレベルというのは今の自分の強さの基準みたいなものだよ。レベルが上がるに連れて下にある魔力や筋力などのステータスが上がっていくんだ。そして上がる数値は職業、スキルごとにそれぞれ違うんだ」
「そうなんですか?」
「うん、例えば今のステータスで魔力に特化している人はレベルが上がると魔力の数値は他の人の何倍も上がるけど他の数値はほとんど上がらない、逆に今どの数値も均一に近い人はそれぞれ一定のペースで上がっていくけどどれかが一気に上がるということはない、という感じかな」
「じゃあ俺は筋力がどんどん上がるのか、他は上がんないけど」
「あーしは全部均等に上がるんだ」
「そうなるね、でもレベルだけで数値が変わるわけじゃないんだ。日頃の鍛錬も数値に表れる特に知力と技術はレベルとはほとんど関係ないそれこそ元の世界で培ったものでもあるからね」
「なるほどねーだから雅ちゃんの知力は100で大石は20なんだー」
「うっ」
「なるほど、そういうことですか。でもそれなら相良さん70ってことは本当はかなり頭良かったんですね」
「まーねー。あーしはそこのバカと違ってサボってただけで勉強はできなくないし」
「その、ステータスがレベルによって変動するというのはわかったのですがそのレベルはどうしたら上がるのでしょうか?」
「そうだね、レベルは魔物を倒すことによって変わるんだ。そして最初にレベルを上げる難易度は上がる。例えば魔物一体倒せばレベル1から2に上げることができるけどレベル10から11に上げる為には魔物を10体倒さなきゃいけない、みたいな感じだね。まぁ実際はもっと倒さないとレベルは上がらないけどね」
「なるほど…1ついいでしょうか?」
「どうしたの?」
「源さん達に助けられる前、大きなイノシシと戦ったのですが大石君の攻撃が全然効かなかっただけじゃなく吹き飛ばされて地面を転がったのに無傷だったんです。何度考えても理由が分からなくて…」
「ああ、それはね、あのイノシシにもスキルがあったんだよ。」
「えっ?スキルって人間だけにあるんじゃないのですか?」
「レアケースだけどね、普通の森ではその縄張りのボスや長く生きた魔物がスキル持ちになるものなんだよ」
「でもそのイノシシもチーターのような魔物に倒されていましたがあの魔物もスキルを持っていたんですか?」
「そうだね、確認したけどどちらの魔物もスキル持ちだったよ」
「でもレアケースなんですよね?そんなに出てくるものなんですか?」
「いいや、普通の森ではこんな風にスキル持ちの魔物はポンポン出てこない。でも君達の入った森は『魔の森』と呼ばれる特殊な森。さっきも言ったように魔界と人間界の間に位置する危険な森。そこに生息している魔物は全てスキル持ち。だから死者も多いしそこへ放り出された異世界人は弱い者から死んでいく。そして強者のみが生き残る、正に異世界人の選別所さ…」
「そしてこの未開地も『魔の森』ほどではないけど危険な地、魔物はあそこ程強くはないが濃い霧の奥から魔物達は襲ってくる。だから今から取り敢えずレベルを上げてもらう」
「でもこの集落の外は濃い霧で覆われているんですよね」
「うん、でもこの集落にも何人かこの霧の中問題なく進める人が何人かいる。その人達がモンスターを生け捕りにしてくれているから一定のレベルまでその生け捕りにされたモンスターを倒してレベルを上げようか」
「あ、ありがとうございます!」
「この檻の中にいるのが捕獲したモンスターのゴブリンだよ。レベルの低い者はゴブリンを倒しレベルを上げて行くんだけど流石に今回は人数が多いから攻撃系のスキルの人からレベルを上げて行こうと思うけど一度全員のステータスを確認してもいいな?」
「はい、お願いします」
「うん、攻撃に使えるスキルの人はざっと20人、そのうち前衛が8人、後衛が6人、そして敵の攻撃を防ぐ防御特化の人は4人、そして味方の力を底上げするサポーターが2人ってところかな」
「成る程同じ攻撃系スキルでも色々と種類があるんですね」
「うん、訓練の仕方は前衛はひたすら魔物を倒してレベルを上げる、後衛は魔力操作の練度を上げる、防御系は魔物からの攻撃に押されないよう盾を持ってひたすら耐えて防御力を上げる、支援系の人は実際に人に支援魔法をかけて見るって感じかな。僕は前衛を見るから他の子は貴理子ちゃんと一輝に見てもらうからね」
「前衛以外もレベルを上げなくてもいいんですか?」
「いや、レベルは今後上げてもらうけど前衛と違って他の職業の人は技術も大切になるからね。そちらを先に鍛えていこう」
「分かりました、残りの10人はどうすればいいでしょうか?」
「実は僕は攻撃系職業の人間だからそこまで詳しくアドバイスできる自信がないんだよね…だからその道のスペシャリストの方々にお願いしたよ」
「おうおう、お前達が今回の勇者召喚被害者か。俺はムラマサ!見ての通りドワーフに転生した元刀鍛冶だ!」
「あ、あのムラマサってあの妖刀村正のムラマサですか!?」
「ん?嬢ちゃん俺を知ってるのかい?」
「は、はい私歴史が好きで!…普段皆には歴女とか言われてますけど…」
「なんだ真田、お前あれ嫌だったのか?」
「大石君…いやそういう訳ではないんですけど…」
「…私なんて歴史にちょっと詳しいだけなのに歴女なんて恐れ多いんじゃないかと…」
「ん?」
「だって私なんてお金を理由にお城巡りとか色んなとこに行くことなんてまだまだできてないのにそんなのおこがましいじゃないですか」
「え、そういうこと?」
「そうですよ!本物の歴女っていうのは!ペラペラペラペラ……」
「オーケー真田ちゃん落ち着いて」
「も、申し訳ありません、話を遮ってしまって…」
「いいってことよ!嬢ちゃんは正しいぜ!先人達に学び、自分を高める!それが大切なことだからな!」
「そ、そうですよね!」
「えーと、次に行っても大丈夫かい?」
「あっ、はいすみません…」
「大丈夫だよ、好きなものがあるのはいいことだし。じゃあ次の方は…」
「儂ですな、名はトウゴウという。日本にいた時は軍を率いて戦っておった。今世ではエルフという生き物になっている。大人数での戦術をお主らに教えよう」
「真田ちゃん知ってる?」
「は、はい。旧日本海軍を率いてロシア軍を退けた方です」
「そんな凄い人なんだー」
「最後は私ですね。私はハットリ。人狼へと転生した元忍者だ。気配感知や罠の設置などを教えよう」
「あ、これは知ってる。有名な忍者でしょ」
「は、はい。そうなんですがどうしてこんなに偉人ばかり…」
「あぁ、何でか分からないけど転生した人って偉人の人多いんだよね…時代はバラバラだけど…」
「そ、それではクロイワさんもそうなのでしょうか?」
「ああ、クロイワさんは違うよ、普通に肺がんで亡くなった方。まぁでもこの人達癖強すぎてあの人以外の言う事ろくに聞かないんだけどね僕も今日お願いするのに苦労したよ。クロイワさんに頼んだら一発だったけど…」
遠い目をして賢也が呟くと…
「いやだって新しい刀打ってたしよ…」
「儂は新しい戦術の開発を…」
「集落の子供達とかくれんぼを…」
「いや、ムラマサさんとトウゴウさんはともかくハットリさんは遊んでただけじゃないですか!」
「な、何を言う!私は子供達に気配察知の訓練をつけるために本気で…」
「あなたが本気で隠れたら誰も見つけられる筈ないでしょう!!何遊びで本気出してるんですか!あなたの場合結局呼んでも出てこないし見つけられないから頼む以前に見つけるのもクロイワさんのお手を借りたんですからね!」
「お、お主が未熟だっただけだ!」
「まったく…まぁもういいです…皆さんお願いしますね」
「わかってるってやることはしっかりやるよ。イワさんに自慢したいしな!」
「それじゃあ非戦闘職の人はこっちね、あと
ハットリさんは暗殺技術もあるから教わりたい人は戦闘、非戦闘関係なく聞いていいよ」
「私だけ仕事多くないかい!?」
「それじゃあお願いします。ちなみに暗殺技術は貴理子ちゃんも転移からの暗殺で強くなったから参考にするといい。特に相良さんは幻術からの暗殺っていいんじゃないかな」
「ありがとうございます、試してみます。じゃあハットリさんよろしくです〜」
「う、うむ」
「では拙者の職業は【創造者】スキルは錬成
ですのでムラマサさんお願いします。」
「だいたい分かれたかな。後は霧島さんだけど…」
「そもそもスキルの天使の祝福っていうのがよくわからなくて…松本君が言うには回復系らしいのですが…」
「そ、そうですね。拙者の予想が正しければ聖女というのは回復役というのがセオリーです。恐らく傷や病を治すスキルだと愚考致します」
「わかったよ。その方向性で考えていこう。なら前衛組が魔物との戦闘で怪我をした際に試してみてくれるかな?」
「分かりました!」
「それまではトウゴウさんのところにいて欲しいんだ」
「それは何故でしょうか?」
「理由は簡単だよ。君はクラスのまとめ役だろう?ならクラスメイトへの指示が1番通りやすい筈だ。その為に戦術をまとめてその場に応じた指示を出せるようにして欲しい」
「そういうことなのですね。分かりました。一緒に頑張りましょう!真田さん!」
「は、はひっ頑張ります」
「そういえば真田さんの職業って【司書】でしたね。どのようなスキルかわかりましたか?」
「はい、スキルは『図書室』というもので、
一度見聞きしたものを脳内で本として本棚に
整理し、いつでもそれをいつでも検索できるというスキルでした」
「成る程、ですからトウゴウさんの所で学ぶことに決めたのですね」
「はい、こんな私でも役に立てるのではないかと思いまして…」
「それじゃあ、それぞれ訓練を始めようか!」
「「「はい!」」」
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