第7話 異世界人達

時間は少し遡り賢也達が雅達の見張りを殺した数時間後…


「ふー今回こそ朕の忠実な兵士を作らないといけないでおじゃる」


「その通りでございますね。前回の奴らは不敬にも逃げ出しましたから。そのせいで我々が他国に遅れを取ってしまうというのに」


「ホントでおじゃる。折角召喚してやったのにその恩を仇で返してきたでおじゃる」


「持って帰ってこれさえすれば薬の投与で立派な道具にできたというのに突如行方不明となってしまうとは思いませんでした」


「陛下!至急お耳に入れなければならないことが!!」


「ん?なんでおじゃるか?」


「それが…No30〜35の定期連絡が突如途絶え、確認したところ全員遺体で発見されました!」


「馬鹿な!?あ奴らは召喚されたばかりの勇者だぞ!監視の人間に気づけたとしても殺すなど不可能の筈だ!」


「はい、宰相閣下の言う通りだと思うのですが遺体を調べたところ3人が撲殺、残りの3人は後ろから心臓を一突きされており、更にそばにはスピードタイガーの死骸も発見され、そちらは一刀両断されていました」


「つまり異世界人を幇助した者がいるということでおじゃるな」


「それに殺し方が3つあるので3人いるかと思われます」


「今3人と言ったか?」


「は、はい」


「この世界において異世界人共の地位は低い。にも関わらず助け更に3人組となると…」


「前回行方不明になった勇者の3人の可能性が高いでおじゃるな」


「一体今まで何処に隠れていたのやら…おい!昨晩奴らの体に埋め込んだ追跡用魔道具は何処にある?」


「そ、それが前回同様圏外に出たのか作用しなくなりまして…」


「前回は森の奥深くまで行っていたでおじゃるから反応がなくなったでおじゃるがそれでも急速に動いている兆候はあったでおじゃるよる。にも関わらず何故今回は森に入ってすぐのところでおじゃる。一体何故」


「…確か行方不明になった3人の勇者の1人に一度行った場所へいつでも移動することのできる『転移』というスキルを持った女がいた気がするのですが…」


「それでおじゃる!あの娘手元に置けば使い勝手も良くて顔も良いでおじゃるから逃げ出した時は腹がたったのを覚えているでおじゃる」


「おい!取り敢えず前回同様全員に指名手配をかけろ!ただし生け捕りのみとしろ」


「はっ!」


「これで見つかるとは思えませんがやらないよりはマシでしょう。追跡用水晶にも常に目を光らせていなさい」


「お前は何処にいると思うでおじゃるか?」


「はい、魔界も自然界も異世界人が暮らすには肩身が狭いですし森は住むには危険すぎます。そうなると恐らくですが未開地にいるかと」


「面倒でおじゃるな、あそこは魔力の波長も狂うでおじゃる。だからから追跡も出来ないでおじゃる」


「しかし、奴らだけでは未開地を進むことは出来ないと思います。必ず協力者がいるのでしょう」


「そうでおじゃるな、では協力者と疑わしい者は全員処刑するでおじゃる」


「えぇ、それと魔界と自然界にも連絡を取り怪しい人物がいないかを聞いておきましょう」


「それは任せるでおじゃる。疑わしき者の処刑が終わり次第次の勇者召喚の準備にかかるでおじゃる」


魔界


「魔王様、人間界より先程通信が入りました」


「ん?人間界から?」


「はい、曰く異世界より勇者召喚をしたのですが森に入った後『転移』というスキルを用いて急に通信が途絶えたようです」


「あ奴らもよくやるものだ。異世界人などの力に頼って戦争などせずに自らを高めるという思考にはならないのか?」


「その点魔王様は圧倒的武力とその知力によって荒れていたこの魔界を統治し、我々を導いていらっしゃいますからね」


「話が逸れてしまったな。それで人間界は私達にどうしろと?」


「なんでも異世界人達は未開地に姿を眩ませている可能性が高い、との事で恐らく協力者がいると思われ何か心当たりのある人物はいないか、と」


「知るかそんなもの、そもそも俺は異世界人のことは嫌いだし、わざわざあんなもの召喚するぐらいなら最後まで自分で責任持ってちゃんと監視くらいしとけっての」


「ではそのように伝えておきます」


「ああ、頼んだぞ。ん?、いやちょっと待てよ?」


「どうかされましたか?」


「いや、ふと俺の幼馴染の事を思い出してな」


「というと…魔王様の魔界統治に大きな貢献したにも関わらず魔王様と意見の違いから魔界から出奔し、今もなお行方不明と言われているあの方ですか?」


「あぁ、俺があいつと揉めた理由は公言はしていないが、まさに異世界人の扱いについてだったからな。恐らく死んでいるとは思うが…」


「その方が生きていた場合異世界人の事を匿っている可能性が高いというわけですか?」


「そうだ、それに奴は結界術にも長けていた。霧が濃く、ただでさえ迷う可能性の高い未開地でやつが隠遁の結界を張っていた場合見つけ出すのは不可能だろう」


「ではその可能性について人間界に伝えても宜しいでしょうか」


「ああ、そうしてくれ」


「かしこまりました」


「お前は今何をしているんだ?オーウェン…」


魔王はかつての親友、そして敵となり別れた男の名前を少し淋しげに呟いた。


自然界


「大精霊様、只今人族の国から通信があったのですが」


「なんじゃ?今は長老会議の最中じゃ。くだらん用なら摘み出すぞ?」


「なんでも召喚された勇者が逃げ出したから何か知らないか、と」


「……摘み出せ」


「はっ」


話すら聞かれていなかった


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