赤き兵

「侍?何の用じゃ?久しぶりの運動の最中じゃぞぉ?」

「言ったはずじゃぞ。誰であれわしが生きておる間はここでは好き勝手させんとな。」

そういうと持っていた十字槍をどこかに消してしまった。

龍我は気づいた。

まさか、じいちゃん!?


「これで、貴様とわしは体ひとつ。正々堂々決着といこうか。」

「ほう…。これはこれはご丁寧に。負けても文句はなしじゃぞ?死人にくちなしじゃからのぉ。」

「ふん…!若造が…!」


互いに間合いを取り構えをとる。そして2人の手が音速を超え触れ合ったその瞬間。

衝撃波が起こり龍我は吹き飛ばされ気絶してしまった。

そんなんことには気も止めず2人の老兵は打ち合いを続ける。

侍が下から左縦拳を腹部に撃ち放つが、老人はそれを左手でギリギリ止めた。

しかし、侍は一枚上手で一度動きを止めた縦拳に回転をかけそのまま腹を貫いた。

だが、それでも老人は動きを止めず侍の顔面に膝を入れた。

攻撃の反動で互いに吹っ飛び合う。


「ふん、。腹に穴が空いて、立っているとはな。貴様、第一世代か」

「かっかっか!当たりじゃよぉ。この程度ではまだ死なぬなぁ。

任務の邪魔じゃよぉ?お前も、ハズレの孫も。」

「意志なき生ける屍め。ワシの孫は弱き者ではない。未熟な少年の身でありながら誰かの苦しみに共感し涙を流すことのできる優しく強き者だ!」

「貴様こそ、任を与えられなければ何もできぬ!意志の弱き者ではないのか!」

「…。やはり口喧嘩は…苦手じゃのお!!」


そういうと同時に吐血をしながら隠し持っていた短刀で喉を掻っ切ろうとした!

だが、

「甘い!!」

侍の喉に届くより先にその短刀は一瞬で奪われ元の持ち主の首を刎ねた。

ゴトッと首は転がり死に顔を見る隙も与えず消えてしまった。


「当然、失敗時の処置は施されているか。」


そう呟くと気絶した龍我の元に向かい、家に連れて帰り眠らせた。

侍の姿を解き人間に戻った源三郎は考えていた。

全てをわすれさせよう…。ワシの存在ごとな。それしか方法はあるまい。

そう決意した源三郎は龍我の額に手を当て謎の方法で記憶を抜き取り、

龍我の父親に事情を伝え、2度とこの場所へ踏み入れさせないようにした。

「さらばじゃ…。我が孫よ」

去る車にそう呟いた源三郎の拳と目には兵としての覚悟と寂しさが握られていた。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Schneidーシュナイド たろまる @suikawoyokose

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画