第11話 松・竹・梅の帰宅風景

 文鳥のいる部屋は、常に扉を開けっ放しにしております。不思議な事に、文鳥たちは部屋の外へは飛んでいきません。


 まるで、入り口に見えない結界でもあるかの様に、部屋の中で遊びます。



 カゴの上から家族の腕に降りて、右腕から肩を経由し左腕に移動したり。

 

 床に降りて散歩中に胡座あぐらをかく家族の膝下を低い姿勢でのぞく竹。


 私のてのひらに乗って撫で撫でされ、液体になる松や、家族の指振り指導のもと、ジャンプする梅。




 思い思いに放鳥を満喫してカゴに帰ります。帰る順番も決まっており、竹・梅・松を帰すのですが……




 竹は素直な子で、脚元に指を出すと躊躇ためらいもなく乗り、お気に入りのブランコまで連れて行くと、ブランコに飛び乗り、揺らして満足そう。





 梅は脚元に指を出すと素直に乗り、扉に設置されたT字とまり木に止まって帰るんですが……


 扉に手をかけると、カゴの近くに置いてある通院用のキャリーケースの上に飛び降り、ドヤ顔で胸を張っております。


 帰ると見せかけて、フェイントをかけてくるんですよ。


 梅は素直に帰る日と、帰らない日がある、気まぐれな面があります。


 キャリーケースまで梅を迎えに行き、指に乗せ、T字とまり木に止まらせて、扉を閉めて帰りました。






 松の脚元に指を出すと『あら、脚の指のお手入れを忘れていたわ』とばかりに脚の指をカミカミして知らん顔。


 それでも指を出すと、ハードルを飛び越える様に指を飛び越え立ち止まります。

 

 しつこく指を出し、お腹に当たると指を甘噛みしてごまかし、姿勢を変えて高いホッピング(脚を揃えてジャンプして移動する)でカゴの上を奥へと移動するんですよ。



 単に帰りたくないのか、これも遊びととらえているのか……


 何となく、小バカにされている様に感じるのは気のせいですかね?


 え!? 気のせいじゃない? やっぱりくせ者は成鳥になってもくせ者なんですね……




 横並びに置いてある竹のカゴの上に移動したり、指を出そうとすると、向きを変えてホッピング。

 松に翻弄ほんろうされる私。やっと満足したのか、指に乗りカゴに入れようする直前に、ひらりとカゴの上に乗り、胸を張る松。



(だーかーらーもぉー!!!! 帰らんのかい!!)



 心の中で叫びましたよ。


 私をおちょくり倒して満足気にカゴに帰る松。


 コレ、毎日の日課になっております……

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