第10話 猫にマタタビ・文鳥にニボシ

 松・竹・梅は文鳥ですが、実は目の色を変えて飛びつく食物があります!


 それが煮干しでして。


 ペット用の煮干しの袋を持つと、松と竹の、のほほんとした雰囲気が一変します。


 まるで獲物を狙う猛禽もうきんの様に、私の手の動きをロックオン!


 開封されるまで手に乗り、パッケージを噛んだり引っ張ったり、家族の腕と私の手を行ったり来たり。


 まだか、まだか、とれております。


 開封された袋から煮干しを取り出した瞬間、手に飛び乗って煮干しを奪おうと必死に首を伸ばしてくるんですよ……


 頭と内臓を取り除き、背中を押すと煮干しがきれいな二枚おろし状に割れ、背骨も取り除き、小さくちぎって与えますが、煮干し獲物を前に、ザワつく三羽。



 もう待てん! 三枚おろし状態の煮干しを無理やり奪って飛んでいきます。



 自分の体の三分の一程の大きい煮干しをくわえて、冷静さを失った文鳥たちの動きはいつもと違いまして。


 普段の一・五倍速の速さで動き回り、どこで食べようかと、おのおので探し回ります。


 カゴの上に乗り、脚で煮干しを押さえてかじる梅。

 煮干しを咥えたまま飛び回る松と竹。



 狂乱の宴が始まりました!!



 松は煮干しを咥えてカゴの上から私の肩、家族の腕と場所を変え、首を振り、せわしなく羽ばたき移動して。



 竹が落とした煮干しを背身せみ腹身はらみに割ると、手から背身をかすめ取り。


 くちばしで煮干しを器用に左右に動かす姿は、ハーモニカを吹く姿に似ていて、笑いを誘います。



 落ちていた煮干しを小さくちぎってお皿の上に乗せると、竹が近寄り、煮干しを咥えられるだけ咥え始め……


 くちばしいっぱいに咥えても、まだ欲しいのか、首を振り、新たに咥えようと必死な竹。


 小魚を複数咥えたカワセミみたいと思う私。



 松と竹の尋常じゃない行動に、私たちは動かずにどこにいるか確認しつつ……



 宴が終わるまでは正座して、足が痺れても我慢です! 辛くても我慢! 文鳥たちの弾けっぷりを見ていたいから。

 




 竹は咥えた煮干しがふやけ、出汁を味わっている様子。


 松も出汁を味わうタイプで、出涸らしを食べるか、捨てるかは気分次第かな。




 一方、梅はと申しますと、家族の腕の上で大人しく食べております。


 松と竹の行動など眼中になく、マイペースで味わう梅。


 普段はやんちゃな梅が大人しい一面を見せてくれましたね。


 今回の宴は松と竹、梅のテンションの差が大きかったなぁ……


 文鳥たちが落ち着きを取り戻したら、宴は終了し、散らかった煮干しを片付ける私なのでした。

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