第5話 芸は身を助ける? ヒナのアピール大作戦

 商品名『育ての親』に餌を作り、ご飯タイムです。スポイトに餌を詰めてヒナの口へ向けると、ヒナ特有の鳴き声と共に口を開け、スポイトに食いつく。


 いい感じと、スポイトに餌を詰めてヒナの口元へ。すると首を回し、頭を横向きにしてスポイトに食いつこうとし、思わず手を引っ込める初心者の私。



「危なー!! 危ないって、この子。びっくりしたーもう」



 食べようとしてスポイトが遠のいたヒナはきょとんとしており、私だけが狼狽えました。


 気を取り直してもう一度、スポイトに餌を詰めて口元に近づけると、今度は上手く食べてくれて。


 もう一口食べようねと、口元に近づけるとヒナはいらないと横を向いて知らん顔。


 少食のヒナのために、何度も餌を作る忙しい日々が始まりました。


 ヒナは松と名付けました。








 松が自ら餌を食べる様になり、餌を買いにお店に行き、小鳥のコーナーに直行。松と一緒にいた子がいました。


 私たちに気づいた子は、連れてってとアピールを始め、何を思ったのか、ケージの天井に掴まり、首を左右に振ります。


 インコが同じ動作をするのを見たことがあったけど、文鳥がインコと同じ動作をするなんて!


 健気な姿に、胸を打たれました。



(腰痛とか弱音は吐けん!! 一羽も二羽も育てるのは一緒だ、この子をお迎えしなかったら私は一生後悔する!)



 そう感じ、家族と車に戻り話し合います。


 家族はあの日、私が二羽とも連れて行くと思っていたらしく、一羽だけを選んだので、二羽とも連れていけばと、言えなかったと教えてくれました。


 松と過ごしていても、お店に残した子がずっと気になっていて。



「あの子、家の子にしてもいい?」

「あの子も連れて帰りたかったから、いいよ」



 家族の後押しもあり、松と一緒だった子も、家にお迎えする事に。


 家にやって来た幼鳥は竹と名付け、踏みつけ合っていた松と再会を果たしました。

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