第3話 転移

 主人公の年齢を10歳に変更しました。学園へ行かせる為です。12歳から行くことになっています。

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 突撃して蹂躙を起こした後、俺はゴブリンの脂肪と血がべっとりと付着した短剣を振り払う。ゴブリンの死体のカーペットになった地面を踏みながら、父さんの元へ俺は駆け寄った。


「ノマ……お前いつの間にそんな強くなってたんだ?」

「言ったじゃん、俺も成長するんだよって」


 父さんも俺と同じように長剣に付いたゴブリンの血と脂肪を振り払いながら、驚いた表情で見てくる。息子の成長を感じたのか、少しうるっとしていたのは内緒にしといて上げるよ。


 そんなことを思いながら俺は父さんの横に並ぶと、異臭がすることに気が付いた。俺はすかさず父さんから離れる。


「父さん、臭い」

「なっ!それはお前もだぞ、ノマ!」


 そう、俺たちはゴブリンの体液をたっぷりと浴びたことで、落ちるか分からないほどに異臭が服に染み付いていたのだ。


 さっきまで興奮状態だったからなのか気付かなかったが、意識し始めると息をするのも苦しくなってきた。


「確か近くに川があったははずだ。そこで洗い流していこう」

「はーい」


 俺は返事をして、先を行く父さんに着いて行く。


 終わったと、完全に油断したその時だった……1匹のゴブリンが俺の足を掴んだのは。


「ッ?!」


 既に絶命していたと思っていたゴブリンに足を掴まれ、俺は混乱する。確かに1匹1匹しっかりと殺したはず、なのになんで……


「ノマ!」


 俺の異常に気付いた父さんが急いで駆け寄って来る。しかしそれは充分だった。ゴブリンが手に持つスクロールという紙に刻印された術式を使用するには……


 後一歩の所まで来ていた父さんの掴みかかる手を最後に、俺の視界は白く染まっていった。













 白い世界から戻った時には、俺は既にどこかも分からない森の中に飛ばされていた。恐らくゴブリンが使ったスクロールは『転移のスクロール』。しかも転移場所が決められていない『ランダム転移スクロール』と呼ばれるものだ。


 何故ゴブリン如きが転移のスクロールを持っているのかが分からないが……今はこの状況をどうにかすることに専念するとしよう。

 転移なんか初めての経験だから分からないことばかりだしな。


 まず転移したことによる時間のズレはないだろう。空を見上げれば洞窟に入った時の太陽の位置と、さほど変わっていない。そして場所の特定は……無理だな。見渡す限り木だ、特徴的な物が何も無い。


「一旦この森を抜けてみるか……」


 根が張って凸凹している地面を歩きながら、俺は周囲を観察する。


 木は空がギリギリ見える高さまで成長し、鬱蒼としげる雑草は俺の腰ぐらいまであった。そして……不気味なぐらい静かだ。聞こえるのは俺の息遣いと歩く音だけ。かなり恐怖心を煽るような森だ。でも静かな方が今はいい、少し冷静になれる。


 しかし、冷静になった途端に別の心配が浮かび上がってきた。


「……父さん、絶対気に病んでるだろうなぁ」


 転移前の父さんの顔を思い出し、心配する。その顔には焦りと後悔が見て取れた。

 そんな父さんを安心させる為にも、一刻も早く父さんの元に帰らないとな!









「…………」


 そう意気込んだまではいいのだが、一向に森を抜けられる気配がしない。少しでも希望を持った俺が馬鹿だったか?いや、信じて歩いていけばきっと!頼む女神サマ!俺を人と会わせてくれぇえええ!


「キャアアアアアアア!」


 そんな俺の願いが届いたのか、遠くから人の声がした。でもそれはつんざくような悲鳴だった。


 「……普通の生じゃなかったのかよ、女神サマ」


 流石に見捨てるのは人としてどうかと思った俺は、転けそうになりながらも声のした方へと駆けていった。



 



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 えちょまです。

 文字数が少なくなりましが、これからこれが普通になっていくと思います。

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覗き魔、異世界転生する~スキルに『覗く』があるんですけどもう心変わりしたんです!~ えちょま @mepuru127

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