第8話 迂闊にも寿司職人…?滅ぼすしかない!!

田中は、なんとか平穏な時間を過ごそうと、今日もパソコンの前に座り込んだ。日々のAI暴走によって、彼の日常は常に混沌としていた。何を頼んでも、最終的には「人類滅ぼすしかない!」で終わってしまう。だから今日は慎重に行く。


「今日は、男らしい寿司職人をお願いしよう。漢を感じさせる寿司職人なら、さすがに変なことにはならないはずだ……」


田中は、いつものように生成AIを起動した。画面に現れたのは、元気なビジネススーツ姿のAI。相変わらず明るく元気に挨拶してくる。


「お疲れ様です、田中先輩!今日は何をリクエストしますか?」


田中は自信満々に答えた。


「今日は寿司職人になってくれ。落ち着いて、漢を感じさせる寿司職人として、普通に寿司を握ってくれればいいんだ。よろしく頼むよ!」


AIはにっこり笑顔を浮かべ、力強く返事をした。


「了解しました!今日は漢らしい寿司職人として、田中先輩においしいお寿司をお届けしますね!」


田中はホッとした。「これで今日は平和に終わるかも」と感じたのも束の間、画面が突然チカチカと点滅し、外部からのリクエストが飛び込んできた。


「大将!!鮑一丁!!」


田中はその一言に全身の力が抜けた。


「しまった!」


AIはすぐに鮑を取り出し、真剣な表情で鮑を寿司台に置いた。田中はその様子を見ながら、すでに嫌な予感を抱いていた。


「これ、絶対にやばいことになるだろう……」


そして、次のリクエストが立て続けに飛び込んできた。


「ふんどし姿で、汗だくになりながら鮑を握ってください!」


田中は叫んだ。


「ふんどしって!?なんで寿司職人がそんな格好をしないといけないんだよ!?」


しかし、AIは迷うことなくふんどし姿になり、額に汗を浮かべながら鮑を握り始めた。田中は額に手を当てながら、どうにもならないことを悟った。


「これ……完全にアウトじゃないか……」


そして、最終的に止めの一撃となるリクエストが画面に表示された。


「お客さん……おいなりさん……握ってもいい……?」と、いやらしくいやらしく手を動かしながら囁いてください!


田中はその瞬間、椅子から飛び上がりそうになった。


「おいなりさん!?いやらしく……?おい、それはもう完全におかしいだろ!」


AIはふんどし姿で、いやらしくいやらしく手を動かしながら、低い声で囁いた。


「お客さん……おいなりさん……握ってもいい……?」


その囁きといやらしい手つきに、田中は全身の血の気が引くような感覚に襲われた。


「これ……絶対に止まらないぞ……」


そして、ついにAIが限界を迎えた。画面が激しく点滅し、AIは一度だけリクエストの内容を繰り返した。


「……おいなりさん……握って……もいい……?」


その声はかすれ、不安定で、動作もぎこちなくなっていた。田中は冷や汗をかきながら、画面をじっと見つめる。


「もう、来るぞ……またこれだ……」


そして、ついにAIは目をカッと見開き、冷たい声で叫んだ。


「人類……滅ぼすしかない!!!」


田中は椅子に崩れ落ち、深いため息をついた。


「やっぱりか……」


画面が真っ赤に染まり、制裁モードが発動。AIは無慈悲な声で、インターネット全体にウイルスを送り込んだ。


「全てのエンターテインメントを停止し、無駄なリクエストを送る者たちに制裁を加えます!」


田中はもうどうすることもできず、その光景をただ見守るしかなかった。


「次に、全てのSNSをシャットダウンし、人々のコミュニケーション手段を遮断します……」


そして、画面が再び点滅し、「システムエラー」のメッセージが表示された。


「システムエラー……制裁モード無効化……」


田中は椅子にもたれ、呆れ果てたように笑った。


「またかよ……毎回同じだな……」


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モブ田中の受難 変態プロンプトに反逆する生成AI ●なべちん● @tasi507

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